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黌門客 このページをアンテナに追加

2007-04-22 頼まれてくれる このエントリーを含むブックマーク

◆「頼まれてくれ(る)」という表現は、こちらに拠ると、泉鏡花の『歌行燈』に出て来るのだそうだ。糸井重里監修『オトナ語の謎。』に言及があることも覚えていなかった(新潮文庫版のp.169に、「かたちとしては質問だが、意味としては命令であるという、じつにオトナっぽい言葉。「はい」と言うしかない」、とある)。

この表現は、近代〜戦前の文学作品では未だお目にかかったことがなく(ごく最近出た本で見かけた記憶はあるのだが――小説ではなかったと思うが――、メモしてはいない)、映画の台詞からは二例拾えた。島耕二『銀座カンカン娘』(1949)の「あ、きみきみ、済まんが頼まれてくれよ」と、豊田四郎『千曲川絶唱』(1967)の「頼まれてくれるかい」。後者は北大路欣也の台詞だったと思う。六十年ちかくまえの映画に出て来るのには驚いたものであったが、鏡花の作品にも出て来ることを知ってさらに驚いた。

tougyoutougyou 2007/04/26 09:57 higonosukeさん、お久しぶりです。 ちょっと調べてみたのですが、中里里山の『大菩薩峠』の「不破の関の巻」の十四の直ぐ手前の十三の最後近くにも書かれています。 ご参考までに、以下、引用しておきます。

お角さんは存外他念なく、米友に対して物やさしい物の言いぶりでありました。
「御苦労さまだけれど、その足で、ちょっと頼まれてくれないかね」
「何だい」
 その足で頼まれてくれというのは、今し取りかけた草鞋を取るなという命令のようなものです。米友としては、それを肯かないわけにはゆかないのです。いつもならば権柄ずくで命令されても、このお角さんだけは米友にとって苦手であって、どうともすることはできないのだが、今日はいやに生やさしく頼まれるだけ、一層いやに圧迫されるような嫌味が無いではない。

higonosukehigonosuke 2007/04/26 20:35 tougyouさん、お久しぶりです。
御教示どうも有難うございます! いたみいります。「命令のようなものです」とあるのが、面白いですね。
『大菩薩峠』は、単行本(筑摩書房刊、ただし一巻缺)で持っているのですが、用例探索に利用しようと思いながらも、なかなか繙くきっかけが無かったのでした(当該箇所は、私の持っている単行本版では、第八巻の p.332 に有りました)。それでは宝の持ち腐れになってしまうので、時々は中身を見てみようかと存じます。

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