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SUNABA Gallery & 樋口ヒロユキ のブログ

サブカルチャー/美術評論家、
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2012-06-05

笹川治子さん個展「case.A」

20:19

 Yoshimi Artsで開催中の、笹川治子さんの個展「case.A」が面白いです。笹川さんはテクノロジーをテーマに作る作家ですが、メディアアート的なものとは逆に「いかにもテクノロジー」なイメージを、ローテクでハリボテ然とした手つきで作ってみせるところに特徴があります。結果的に今回の展示は、かつてのオウムの毒ガスプラント施設を彷彿とさせるものになっています。


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 83年生まれの笹川さんはオウム事件当時12歳で、あの事件のことはさほど意識していなかったでしょうし、まさか会期中にオウムの逃亡犯が逮捕されるなどとは、夢にも思っていなかったでしょう。アーティストの直観というのは馬鹿にできないもので、こういう共振現象が起こるんですね。具体的な例は差し控えますが、私は幾度かこういう例を見てきています。作った本人が恐ろしくなって、その後作品を引っ込めてしまった例もある。今回の笹川さんの展示も、そうした直観のなせる業なんじゃないかと思います。


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 実際に彼女が意識していたのは、オウムよりむしろ3・11以降の原発の状況などだと思うのですが、この展示は原発にもオウムの施設にも見える。二重性を帯びたハリボテのテクノロジーのイメージです。もっといえば、恐ろしいことに原発オウムの共通点さえもが透けて見える。私たちはオウム事件をリアルタイムで見ていたとき、そのあまりにお粗末な施設を見てバカにしていた。ところが事件から約15年を経たのち、国家の根幹をなすエネルギーインフラが、オウムサティアン並みのショボさしかなく、あっけなく爆発するのを目の当たりにした。その途方もない無力感が、ここには重なって示されています。


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 もう一つ彼女の今回の展示で気になるのは、複製と広告のイメージが現れていることです。この展覧会「case.A」はYoshimi Artsにて9月1日(土)−9月17日(月・祝)に開催予定の笹川治子さんの個展「case.D」と対になる予定ですが、次の「case.D」の展示がセットになることで「広告」というテーマはよりクリアなものになることでしょう。「case.A」と「case.D」、つまり「AD」。アドバタイジング、広告です。


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 この間、テレビや新聞といった大手メディアが、いかに電力会社の広告出稿によってがんじがらめにされているか、私たちはいやというほど見てきました。幸か不幸か、アートはそうした広告的支配とはいまのところ縁がない。笹川さんの二つの展示は、その弱み=強みを活かした問題提起になることでしょう。いろんな意味で目が離せない作家だと思います。


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笹川治子個展「case.A」

Yoshimi Arts、17日(日) まで、会期中無休

http://bit.ly/JSdlEH


今後のスケジュール

「case.D」

Yoshimi Arts、9月1日(土)−9月17日(月・祝)


「笹川治子ソロ展示(タイトル未定)」

ホテルグランヴィア大阪「ART OSAKA」Yoshimi Arts「PLUS」ブース(客室)

7月7日(土)−7月8日(日)

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