「赤鉛筆のアウトサイダー 小幡正雄展」

 兵庫県ゆかりのアウトサイダー・アート/アールブリュット作家、小幡正雄さんの展覧会が、ただいま兵庫県立美術館で開催中です。小幡さんは赤鉛筆で段ボールに描くのが特徴の作家。作品の多くは「結婚」をテーマにしていますが、女性だけを描く場合でも二人をセットで描くことが多く、二人がセットであることが小幡さんの中で大きなテーマになっていたことがわかります。



 小幡さんは知的障害者のための施設「ひふみ園」にいらしたので、自由に手に入る素材は段ボールしかありませんでした。段ボールに描いているのはそのためで、拾ってきた段ボールに小幡さんは果てしなく絵を描き続けていました。ときには部屋の中が薄暗くなるほど段ボールが積み上がっていたそうで、たまった作品は小幡さんの健康を案じた施設の方が、定期的に棄てざるを得なかったそうです。



 小幡さんは段ボールの両面に絵を描くのが特徴で、裏面、つまり製品名などの入った面には、しばしば乗り物を描いていました。下の作品にも豪快に製品名が真ん中に記されています。



 そんな小幡さんの作品を「発見」したのは、ひふみ園で絵画教室の指導にあたっていた、美術作家の東山嘉事さんでした。その後、小幡さんの作品は、兵庫県立美術館アウトサイダーアート研究に携わる服部正さんや、やはりアウトサイダーアートのキュレーションに携わる、はたよしこさんの知るところとなり、フランス、ローザンヌのアールブリュットコレクションにも収まることになりました。


 兵庫県立では現在、小幡さんの展示とともに、小幡さんの「第一発見者」である東山嘉事さんの作品を含むコレクション展が開かれています。この機会に是非いずれもご覧ください。

「赤鉛筆のアウトサイダー 小幡正雄展」
兵庫県立美術館、2013年2月24日(日)まで
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/j_1211/index.html


 それと関連してもう一つ。アールブリュットという概念をもともと提唱した画家である、ジャン・デュビュッフェについての評伝が出ています。一筋縄ではいかない矛盾だらけのデュビュッフェの人物像が描かれていて、非常に面白い本です。きちんとした感想を書き出すと長くなりそうなので、機会があればまた後日。読みやすいですが中身はぎっしり詰まっています。

末永照和 『評伝ジャン・デュビュッフェ アール・ブリュットの探求者』
青土社 (2012/10/22)
http://www.amazon.co.jp/dp/4791766407