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SUNABA Gallery & 樋口ヒロユキ のブログ

サブカルチャー/美術評論家、
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2016-09-29 公募グループ展の「平等」について

 SUNABAギャラリーでは公募グループ展に出された出品作を、SNSで紹介するということをよくやっていますが、全部を紹介しているわけではありません。何度も紹介する作品もあれば、一度も紹介しない作品もあります。

 不平等じゃないか、というご意見もいただくのですが、実際うちでは平等主義は取っていません。大変申し訳ないのですが、それがうちのスタンスです。ごめんなさい。

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 お金を頂いて出品してもらっているので、全部平等に遇される権利がある、と思う方は当然おられると思います。が、しかし、うちはそうではありません。自分の好きなもの、売れたもの、お客様が注目したものは複数回にわたって紹介することもありますが、一度も紹介されないこともあります。明らかに待遇には差があります。

 DM制作や広報の段階から、こうした差はついています。グループ展では招待作家制という制度を設けていて、招待作家となった人だけが広報用のDMに使われます。ほかの方は小さなバナーだけ、それもネット上のご紹介のみという扱いです。

 私がこのギャラリーでの仕事のなかで最優先の目標にしているのは、来て下さる、買ってくださるお客様に、できるだけ良いもの、優れたものをお届けすることです。その次に重要な目標は、若いこれからの皆さんにチャレンジの場を設けることです。順番は逆ではありません。お客様が最優先、その次が作家です。

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 アートは矛盾したものです。誰にでも自分を表現したいという熱意や希望はあり、それはある程度まで叶えられるべきだ、と私は思っています。その意味でアートは一義的には「遊び」です。「売れさえすれば良い」とか「売れない作家は要らない」といった、冷酷な気持ちは持っていません。世の中はおカネだけではありませんし、一生懸命な人の気持ちにはできるだけ答えたい。ただ、限界はあります。

 アートは自己表現であると同時に商品であり、経済行為でもあります。実を言うと当ギャラリーは、作品そのものの実売による収入が、売り上げの半分以上を占めています。グループ展の参加費やレンタル料は、売り上げの半分以下なのです。言い方を変えると、きちんと売れる作家をプッシュしていかないと、うちは潰れてしまうのです。

 売れないもの、人気のないもの、クオリティーの低いものをプッシュしていたら、お客様から審美眼を疑われることになり、人気のある作家の足まで引っ張ってしまう。同じようにお金をいただいていても、推せないものは推せないのです。申し訳ないのですが、ここは納得していただきたい。ごめんね。

 レンタルでお借りになった場合も同様です。実際に展示を見て私が納得できない水準のものだった場合、最後まで一度もSNSで言及することなく会期を終える場合も稀にあります(非常にごく稀なケースですが)。もちろん納得がいけばどんどん推しますし、SNSでの推しが奏功して、レンタルであったにもかかわらず、かなりまとまった金額を売り上げた作家もいます。要は作品次第ということです。

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 ちょっと待て、それでは全然売れてない作家もたまにプッシュしているが、あれはどういうことだ、と仰る方もおられるかもしれません。はい、その通りです。全然お金になっていない作家、注目度の低い作家も、うちではプッシュすることがありますし、本当に気に入ったものは購入することもあります。

 どこのギャラリーでもそうですが、オーナーは気に入った作品を買い上げることがあります。短期的に見ればお金が出て行く話ですから「損」なのですが、私を含む多くのギャラリーオーナーは、採算度外視で作品を買うことがあります(もちろん、やむなくのちに手放すこともあるのですが)。

 なぜそんなことをするかといえば、それこそがアートアートである理由です。アート経済行為であると同時に、理屈では割り切れない「気持ちのかたまり」のようなものです。それは作者自身の自己表現であるだけでなく、鑑賞者の気持ちをも含み込んだ、不思議な「気持ちのかたまり」になることがあります。作品を買う人は、いわば一種の自己表現、自分の気持ちを代弁してくれるものとして、その作品を買うのです。

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 売れもしないのにSNS上でプッシュする作品は、私自身の気持ちを代弁してくれる作品、私が惚れ込んだ作品です。場合によっては購入することもありますが、残念ながら会期の売り上げが低かったりして、見送るケースも多々あります(現在のところ、このパターンが多いのは悲しい限りですが)。

 アートは矛盾したものです。それをどう扱うかには、決まった正解のようなものはありません。展覧会に出品して売り買いするのは現在ではメジャーな方法になっていますが、誰にも見せずにひっそりと制作して死後に知られる、という方法もありますし、無償で誰かに贈与したり、パブリックな場所に寄贈したり、ネット上に公開するという方法もあります。要は好きな方法を選べばいいのです。

 自分で言うのもなんですが、SUNABAギャラリーはわりと魅力的なギャラリーだと思います。ですが、その一方で限界や矛盾、不足している部分もたくさんあります。どんな人でも百点満点でないのと同じように、ギャラリーも一長一短、いろんな個性や癖があります。当ギャラリーもその一つ。無矛盾、正義のギャラリーではありません。

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 そうしたことをご理解していただいた上で、ご出品されるならそれもよし。他のギャラリーが良いと仰るなら、それも仕方のないことかと思います。以上長くなりましたが、当ギャラリーのスタンスと広報についてでした。今後とも宜しくお願いします。