青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

『IZU YOUNG FES'14』in伊豆狩野川さくら公園


今年で3年目になるこのイベント。ウルトラミラクル楽しかった!!!初開催であった『IZU YOUNG FES2012』も本当に楽しくて、今年は「楽しいに違いないぞ」とかなりハードルが高めに設定されていたのに、それをゆうに飛び超えてきました。山の”緑”と川と広がる空の”青”という牧歌的なロケーションに、手作り感溢れるフラットなステージがちょこんとある画面が最高。芝生にシートを敷いて寝そべって聞いたり、ステージ前で踊ったり。サッカーやフリスビーに興じる家族連れとか犬の散歩の途中のおばさんとかも一緒になって音楽を聞く感じもいいのだ。お客さんの雰囲気も素晴らしい。目当てのバンドにだけ盛り上がるという事もないし、閉じた内輪感もない。気負いなく音を楽しんでいる感じだ。そして、飯が旨い。ヤングの高梨さんのお兄さんが伊豆で経営している「ラーメンろたす」が出張してラーメンを販売。お店の定番という「煮干しラーメン」と伊豆味噌を使ったスープにヤングコーンが添えられた「IZU YOUNG 麺」の2杯。

噂には聞いていたけども、これが本当に旨いラーメンでして、あまりに美味しいので思わず2杯共食べてしまった。

手作りのゴミ箱とかからも、主催者の生活する事への慈しみみたいのが感じられて、しかもそれがことさら主張されてない所が凄くいい。と、まぁ『IZU YOUNG FES』の魅力は無数にあるのだけど、何より主催の高梨さんが出演バンドの演奏を1番前で楽しそうに観ているのが好きだ。イベント主催者なのに”政治”とか”交友関係”とかに捉われている素振りを見せない。実際は色々大変なのだろうけど、「このバンドが好きだ!」って愛情と「お客さんを楽しませたい!」って情熱だけをこちらに見せてくれる高梨さんを本当にリスペクトしております。

出演:ヤング/ayU tokiO/がちゃがちゃ虫/白い汽笛/SEBASTIAN X/HAPPLE/フジロッ久(仮)

そして、素晴らしい出演者。今年度のラインナップはあまりに個人的なツボを突かれている。もし、私が自由にバンド呼んでフェスやっていいよ、と言われたとしても、そのままこのメンバーでOKかも。OPアクトのがちゃがちゃ虫には会場入りが間に合わず、観られませんでした。HAPPLEの演奏から私の『IZU YOUNG FES'14』はスタート。ビートミュージックを日本語ポップスに変換している今のHAPPLEのモードはとんでもない。抜け感のいい演奏とメロディはシンプルなようで複雑。しかし、パッと聞きのラブリーでファニーな印象、その間口の広さも彼らの魅力だ。新曲も全部よくて、2013年の傑作『ドラマは続く』に続くアルバムにも期待しか持っていません。続いて、ayU tokiO。『恋する団地』のあの複雑かつ甘美な最高のレコードの再現性の高さに感動しっ放し。バンドの演奏もアユ氏の歌も格段にレベルアップしている。メロディとリズムの複雑なアンサンブルがライブでも解像度が高く表現されている。ayU tokiOの音楽も、そのポップスとしての完成度が多いに魅力なのだけど、その口当たりのよさから過小評価されているような気がしないでもない。Webで「ありきたりな下北沢系」とか書かれているのを見かけて「耳腐ってるのかよ!」とハラワタ煮えくり返った。演奏や楽曲の優雅さとアユ氏のパンク、ハードコアなまりのパフォーマンスのギャップがまた最高。バイオリンとフルートとか従えておきながら、フロンマンがよれよれのTシャツ姿でメロコアジャンプしているのだ。ギター、オルガン、ベースのスリーピースバンド”白い汽笛”の演奏もまた素晴らしかった。popoを彷彿とさせるたゆたう凪のような演奏(ギターの音色のセンスが抜群)に、初期のフィッシュマンズのような歌心がのっている。ずっと聞き続けても苦にならなそうなライフミュージック。「いい曲だな」と聞き惚れていた楽曲のタイトルが「カステラ」と知り、完全にノックアウト。


ラーメンタイムを挟んでフジロッ久(仮)の登場。鍵盤の森川さんが脱退した後、メンバーが2人加入した新体制のフジロッ久(仮)を観るのはこれまた初めて。リハーサルの段階から、今まで以上に念入りに音づくりをしているのが見受けられて、バンドのアティテュードの進化が窺えた。フジロッ久(仮)のライブを観ると、そのバンドの観客を巻き込んだフィジカル面での大暴れに目を奪われがちだったのだけど、もう、彼らはただ無茶苦茶やるパンクバンドではない。そういった要素を切り捨てる事なく、しっかりと音楽を鳴らす事に挑戦している。しかし、フロントマン藤原亮は本当に凄いパフォーマーだ。走り回り、ころげ回りながらも、歌の響きが消える事がない。そして、もう1人フロントマン高橋元希もまた凄い。彼の放つリリックが自分に深く突き刺さってくる事にいつも驚く。その言葉は洗練されているわけでもなく、フロウも実にあか抜けない。だけども、圧倒的に響く。これが言霊というものなのだろうか。とにかく稀有な才能の持ち主である事は確かなのだ。散々聞いてきた「バンドをやろうぜ」にこの日もまた新鮮な気持ちで少し泣いた。「あそぼう」「シュプレヒコール」と「はたらくおっさん」に負けないアンセムも量産中。藤原亮のメロディーメイカー&リリシストとしての才能もまだまだ評価が足りない気がしている。とにかく、今のフジロッ久(仮)はやばいです。続いてSEBASTIAN X。4年ぶりくらいに観ました。クラムボンのmitoプロデュース10月にメジャーデビューが決定しているバンドがこのローカルでフリーなフェスに出演している事実だけでもグッときてしまいますね。堂々たるステージング。永原真夏さんのMCの時の感じがドリカムの吉田美和さんにソックリ。声の震わしとかまで似ていて、ここは至上最強の移動遊園地かよ!って思いました。


夕暮れに差しかかった頃合いにトリのヤングが登場。一斉に観客が集まって、「ありがとう」と「お疲れ様」の入り混じった祝福のフィーリングがステージ前に溢れる。そんで、鳴らされた「ももいろダンス」に本当に心の底からグッときてしまって、開始数秒で涙が出てしまった。

今年聞いた音楽で1番感動したし、誇張でも何でもなく素直に「魔法みたいだな」と思った。トリのヤングが出てくる前から「あー終わっちゃうなぁ」と胸が苦しくなり出していて、多分それは会場にいる人のだいたいがそうで、そういうムードをしょい込むとバンドはああいう演奏ができてしまうのか。その後のヤングの演奏と楽曲は終始、青春ロードムビーのエンドロールみたいだった。楽しくて切ない肯定のファンファーレ。ああいう音楽を聞きたくてポップミュージックを聞いているんだ!って思った。また来年も絶対にあの場所で会いたい!『IZU YOUNG FES'14』に心からの感謝を込めて。