アイスランド経済破綻 EUの加盟からユーロ通貨の導入に至るか

欧州の金融危機が最も早く現れたのは、英国でもギリシャでもなく
アイスランドであった。
人口は30万人を少し超える程度の小国であるが、数年前までは
金融立国として急速に発展し、国全体が富裕層化していた。


大陸以上の高金利を掲げて、英国やドイツ、フランスから莫大な
預金を集め、それをデリバティブで運用し、高い利益を出すことで
還元していたのだ。
インターネットバンキングを手掛けていたので、ユーザーの手間を
大いに省くことも功を奏した。
ところが08年9月に起こったリーマンショックによる世界金融危機
によって、あっという間に国家破綻に陥ってしまった。


翌月10月には政府が非常事態宣言を発令。
アイスランド国内の銀行を全て国有化することになった。
ロシアから40億ユーロの支援を受けるが、こんな程度では危機は
収まらず、同月にはIMFに支援を要請した。
そして同月末にはカウプシング銀行サムライ債780億円が事実
債務不履行となったのだ。


言うまでもなく、通貨クローナは瞬く間に暴落したことで、国民の食
生活も様変わりした。
09年10月には通貨安から、輸入している原材料の価格高騰が起
こり、マクドナルドが完全撤退してしまった。
国内には鉄道はなく、交通手段はもっぱら車と飛行機だけだ。
不幸にも今年5月に火山が大噴火し、その火山灰で航空便の運航
がパタッと止まり、多くの旅行者が足止めを喰らった。


アイスランドはユーロの導入はもちろん、EUにも加盟していない。
ドルやユーロ、円といった通貨を持たない国が、こんな金融政策を
続けてうまくいくはずがない。
中小企業のくせに、幹部が株やFXの投資で利益を出していること
と同じことだ。
案の定、こういうことをやっていた小国は全て潰れてしまった。
IMFに助けを求めてしまったのである。


アイスランド政府は外国人から預かっていた預金を払い戻しせず、
同国首相の拒否権から差し止めていた。
しかしその後は少しずつ返済していくことになったようだ。
マネーゲームで国家破綻に陥ったもの、お金でお金を返すというの
は浅ましいやり方だ。
老後の観光地としては最適だったかもしれないが、これといった
技術や産業を持たない国が、今後数年間で立ち直ることはない。


しかし政治的には決断が早く、独自外交を築いてきたのは確か。
NATOの加盟国ではあるが軍隊は所持しておらず、世界でも稀な
常備軍を持たない国として有名だ。

歴史上、一度も軍隊を保有したことが無い国なのである。
これだけではない。
かつては米国と国防協定を締結して米空軍基地を設置し、冷戦下
の重要な戦略拠点になっていた。
しかし2006年、米軍の完全撤収が両国で合意に至り、段階的に
撤収・閉鎖されることになった。
アジアでいえば、タイやフィリピンと同じ道を歩んだ。
我が国日本も完全撤退ではなかったのだから、普天間ひとつくらい
の返還は実現して欲しかった。
こう思う日本人は、私ひとりだけではないだろう。



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