日銀の大規模円売り介入 主な目的は、円高阻止ではない(!?)

政府・日銀が4日に踏み切った、円売り・ドル買いの単独介入について、
介入金額が4兆5000億円規模であったことが、日銀が営業日ごとに公
表している 「当座預金増減と金融調節」 からの推計で分かったという。


せっかくの巨額介入でも、結果的に思ったほどの効果はなかった。
ユーロ圏の財政不安が先月半ばから増してきており、NY株式市場も大幅
下落。
そして予想通り、商品相場もここへきて下落傾向にある。
7月の米国失業率も9.1%と、前月と比べて0.1ptばかり改善したとい
うが、この程度でドル高要因にはならないだろう。


VIX恐怖指数も昨日から一気に上昇。
3月11日に起こった東日本大震災後の指数を超え、30ポイントをあっさ
り超えてしまった。
今では2003年3月のイラク侵攻時の値に迫っている。


とにかく米国のデフォルト懸念が消えたというのに、なぜ4日のNY株式市
場が500ドルを超える暴落までになったのか?
海外、主にPIIGS諸国をはじめとしたユーロ圏危機が、過去何度か起こっ
ても、これほどまでの株価下落にはつながらなかった。
何となく違和感が残る。
マスコミ各社はこういったデリケートなことは報道しないから、自分自身で
理由を探っていくしかない。


基本的な部分ではあるが、米国の財政赤字削減策が与野党で合意でき
ても、現時点ではまだ施行されていないからだろう。
からしばらくの間は弾切れ状態が続くことになり、今まで通り株や商品
相場へ注入していた資金が、今はほぼ止まっているからだといえる。
ということは、もはやQE3などの実施は難しくなるということだ。
施行後、再び実施しても少額。
そもそも量的緩和なぞしてしまったら、財政再建合意の意味は無い。


さてこの時期の日銀による円売り介入理由であるが、単独で行われたこ
とは今さらいうまでもない。
通貨を安くして輸出を伸ばしたいというのは、米国もドイツも同じ。
経常収支黒字の常連国である、ベルギーやオランダ、スウェーデンでも同
じ考えだろう。
だから日本の要求通り、円安にしたいなどとは思っていない。


日銀の介入は5日になっても継続的に実施されという。
ここに大きな理由が隠されている。
つまり円高阻止よりも、米国の短期国債償還日と重なっている点である。
7月31日のブログで書いた通りだが、米国現地時間4日に多額の償還が
やってくることから、それを見据えて、日本時間4日に介入したのではない
だろうか?


この日の償還相手は、主に中国や日本といった国に違いない。
一部、中東諸国やブラジル、台湾、香港といった国や地域もある。
英国は毎年6月にほぼ全額売却しているから、英国に対しては償還されて
いないだろう。
まだ公表されていないが、英国の財政事情の逼迫から、今年も例外なく売
り払っていると思われる。
今年は去年とくらべて、対外返済額が約2倍に膨らむらしい。


今回の思い切った介入で、日銀や財務省は、
円高阻止のため、これからも強いメッセージを取っていく ”
などというが、本当のところは償還当日に債権の目減りを極力防ぐための
緊急措置だった可能性が否定できないのだ。
つまり米側としては一種の資金流出にあたるので、4日に株価が暴落した
というのも納得できること。
これを無事乗り切った翌日は、普通であればそのリバウンド効果で、株価
は反転するというのも予想範囲内。


さて同様に11日も国債償還がやってくる。
日本当局による再度の円売り介入、米株価の下落という、同様のケースに
なる可能性が高いのだ。
とくに株取引やFXをしている人は、注意されたし。



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