労働市場の帰結としての囚人

先週、欧米の失業率を巡るブライアン・キャプランとジョン・クイギンの賭けを取り上げたが(ここここここ)、クイギンが5月末にその補足とも言うべきエントリ「労働市場の帰結としての囚人(Incarceration as a Labor Market Outcome)」を書いている。


その中で彼は、囚人を(キャプランが言うように)失業者の別の形態として考えているというよりは、労働市場の別の形の悪しき帰結と考えているのだ、と主張している。そして、この考えは左派的でも過激でもなく、労働市場の研究、とりわけ他ならぬシカゴ学派の研究に基づくものだ、と述べている。
彼がそうした研究の例として挙げるのは、一つはグレン・C・ロウリーの研究、もう一つはスティーブン・レヴィットのヤバい経済学 [増補改訂版]で紹介されたスディール・ヴェンカテッシュ(ヤバい社会学の著者)のケーススタディである。そうした研究から彼は、雇用市場から弾き出された人々が犯罪に走るが、最低賃金社会保障の額が小さいとその傾向が強まり、同時に犯罪者の収監率や収監期間も高くなる(∵犯罪の魅力を削ぐために当局がそれらの率・期間を増やす)、という結論を導き出している。従って、労働市場の状態を測るには、失業者だけではなく囚人も見る必要がある、というわけだ。


Economist's ViewのMark Thomaは、このクイギンの主張は良い点を突いている、として紹介している。Thomaは、すべての犯罪が悪い労働市場の結果というわけではないし、何らかのウエイト付けがあって然るべきかもしれないが、単純に失業者と囚人を足し合わせるのも一次近似としては良いのではないか――少なくとも失業率単独よりも良い指標ではないか――とクイギンの考えを評価している。