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himaginaryの日記

2010-07-26

ソロー「DSGEなんか嫌いだ」

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Economist’s ViewThe Baseline ScenarioEconlogマンキューブログ*1で取り上げられて話題になっているが、ロバート・ソロー議会証言でDSGEをくさしたとのこと。


その議会証言のDSGE批判箇所から、最初と最後の部分をピックアップしてみる。

Economic theory is always and inevitably too simple; that can not be helped. But it is all the more important to keep pointing out foolishness wherever it appears. Especially when it comes to matters as important as macroeconomics, a mainstream economist like me insists that every proposition must pass the smell test: does this really make sense? I do not think that the currently popular DSGE models pass the smell test. They take it for granted that the whole economy can be thought about as if it were a single, consistent person or dynasty carrying out a rationally designed, long-term plan, occasionally disturbed by unexpected shocks, but adapting to them in a rational, consistent way. I do not think that this picture passes the smell test. The protagonists of this idea make a claim to respectability by asserting that it is founded on what we know about microeconomic behavior, but I think that this claim is generally phony. The advocates no doubt believe what they say, but they seem to have stopped sniffing or to have lost their sense of smell altogether.

(拙訳)

経済理論は、常に必然的に、あまりにも単純化し過ぎたものとなります。それは避けられません。しかしより重要なことは、馬鹿げた結果が出て来た場合はそれを必ず指摘することです。特にマクロ経済学のような重要なテーマにおいては、私のような主流派経済学者は、すべての命題が嗅覚テストをパスすることにこだわります。それが本当に道理にかなっているかどうかチェックするわけです。現在人気のDGSEモデルが、その嗅覚テストにパスするとは私には思えません。それらのモデルでは、経済全体を単一の首尾一貫した人間もしくは王朝であるかのように扱うことを、当然視しています。その人間もしくは王朝は、合理的に設計された長期の計画を遂行し、その遂行が時折りの予期しないショックで擾乱されても、それに合理的かつ一貫したやり方で適応するのです。こうした描写が嗅覚テストにパスするとは私には思えません。このモデルの主唱者は、ミクロ経済学的な行動について我々が知っていることに基礎付けられていることを以って、このモデルは立派なモデルである、と主張します、しかし私に言わせれば、その主張は大体においてまやかしです。そう主張する人たちが自分の言っていることを信じているのは確かです。しかし彼らは嗅ぐことをやめてしまったか、あるいは嗅覚を完全に失ってしまったのです。


The point I am making is that the DSGE model has nothing useful to say about anti-recession policy because it has built into its essentially implausible assumptions the “conclusion” that there is nothing for macroeconomic policy to do. I think we have just seen how untrue this is for an economy attached to a highly-leveraged, weakly-regulated financial system. But I think it was just as visibly false in earlier recessions (and in episodes of inflationary overheating) that followed quite different patterns. There are other traditions with better ways to do macroeconomics.

One can find other, more narrowly statistical, reasons for believing that the DSGE approach is not a good way to understand macroeconomic behavior, but this is not the time to go into them. An interesting question remains as to why the macroeconomics profession led itself down this particular garden path. Perhaps we can come to that later.

(拙訳)

私の言わんとしていることの要点は、DGSEモデルは不況対策について何ら有益なことが言えない、ということです。というのは、DSGEモデルでは、マクロ経済政策のすべきことは何も無いという「結論」が、本質的に現実離れした前提に予め組み込まれているからです。高いレバレッジが掛けられた規制の緩い金融システムを持つ経済について、そのことがいかに当てはまらないかについては、つい最近皆さんも目にしたことと思います。しかし、今回とはまったく異なる経路を辿った以前の不況(ならびにインフレの過熱)についても、そのことはやはり明確に間違っていた、と私は思います。マクロ経済学には、他のもっとまともな昔ながらの手法があるのです。

また、統計学の専門的な見地から見ても、マクロ経済学的な挙動を理解する上でDSGEの手法はよろしくない、と信ずべき理由があります。しかし今回はそこに深入りするのはやめておきましょう。残る興味深い問題は、マクロ経済学者たちがなぜこの特定の隘路に進んでいったか、という点です。その点についてはいずれまた論じる機会がありましょう。


ちなみに日本人学者のツイッターでは、こうしたソローの認識への批判的な見解も見られる(cf. ここここここ)。

*1:マンキューはさらにソローが使った一次近似(first approximation)という用語について余談のようなエントリを上げており、WSJブログがそれへの応答エントリを上げている。

通行人通行人 2010/07/27 12:42 ソローさんに激しく同意

通行人通行人 2010/07/28 13:31 http://www.wordspy.com/words/smelltest.asp
によると"When accountants hire private detectives," Business Week, June 30, 1975
が最早期の用例のようですね。>smell test
おもしろい
サイエンス/仮説検定だと前提が重要なんでしょうが、かなり”官能的”な判断に立ち入る感じ