2011-04-25
幸せな場所では自殺が多い
経済 |
という主旨の論文がJournal of Economic Behavior & Organizationに受理されたという。書いたのは、英国のウォーリック大学のAndrew J. Oswald、NYのハミルトン大学のStephen Wu、そしてサンフランシスコ連銀のMary C. DalyとDaniel Wilsonという4人の研究者である。論文の原題は「Dark Contrasts: The Paradox of High Rates of Suicide in Happy Places」。
EurekAlertに紹介記事が載っているが(Economist’s View経由)、それによると、今回の研究の特徴は、米国内のデータを用いて分析したことにあるという。以前から、幸福度の高い国で自殺率が高いことは知られており(特にデンマーク)、この研究でも、カナダ、米国、アイスランド、アイルランド、スイスといった国々が幸福度が高いと同時に自殺率も高いことが示されている。しかしながら、国際比較をする場合には文化や自殺に関する報告の違いなどがあるので、この結果も示唆的なものに留まる、と著者たちは見做している。その代わり、文化や制度や言語や宗教が比較的均一な一国内で分析すれば――確かに州ごとの違いはあるが、それは国同士の違いよりは小さい――、より実証科学的な結果が得られる、というのが彼らの考えである。
その考えに基づき、米国について分析を行ったところ、やはり国際比較の場合と同様に結果が得られた、とのことである。即ち、人々の生活に対する満足度が高い州では自殺率も高いという傾向が見られた。例えば、生活満足度1位のユタ州は自殺率では9位である。一方、生活満足度45位のニューヨーク州は、自殺率が全米で最も低い。
この結果は、年齢、性別、人種、教育、所得、婚姻区分、雇用状況といった変数で調整しても変わらない。調整後ではハワイは生活満足度で2位に位置するが、自殺率は5位である。ニュージャージーは、生活満足度でも自殺率でも47位である。
こうした傾向は、人々が周りとの比較で自分の状況を判断することによるのではないか、というのが著者たちの解釈である。苦境にある人は、周りが幸せだと余計惨めに感じてしまう、というわけだ。ちなみに米国ではクリスマス、日本では年末年始に自殺率が高まる、という話があるが、これもそれと同根の話なのかもしれない。
ただ、日本では不景気が自殺の主因という話も良く耳にする。そう考えると、同じ分析を日本で行っても同様の結果が出るとは限らないようにも思われる。その点では、むしろ米疾病対策センターが出した不況期に自殺率が高まるという研究報告(WSJブログ[邦訳]経由)の方が日本の現状に近いのかもしれない。
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このように、不景気が高い自殺率の主因だとする俗説には十分な根拠がありません。
そこでは2つの物事がごちゃまぜに分析されています:
1.ひとつは自殺率が急上昇する要因
2.もうひとつは自殺率の上昇率は大きくないものの自殺率が高止まりする要因
です。
経済の変数の分析ではこのように2つにわけるのに、こと自殺に関してはこの2つをごっちゃにしているとは、いったいどういうことなのか?
自殺率の急上昇の主因が不景気であることは容易に想像できます。
というのも、個人が借金や責任問題で追い詰められたり、人生のキャリアが水泡に帰してしまったり、
などといった状況が拡大するからです。
自殺率が高止まりする主因は、エントリで紹介されたの分析にあるように「人々が周りとの比較で自分の状況を判断することによる」とする
著者たちの解釈に説得力があります。
こうして2つにわけてそれぞれ仮説を立てて研究するべきだと思います。
したがって、日本で自殺率が高止まりしていることについては、家計の所得格差の問題と併せた分析が必要ではないかと思われます。
1:周りが幸せだと自分の不幸が大きく見える(著者たちの解釈)
2:不幸せなところでは無我夢中で生きているから自殺しない(小生の思いつきその1)
3:不幸せなところでは生活水準が下がると一気にどん底まで行くので医療や社会保障が受けられず死に至る人々が多い。死者は多いが自殺として表れない(小生の思いつきその2)
下二つは思いつきですから当てになりませんが、とりあえず「相関と因果は違う」「因果関係はより詳細な調査又は分析で検証しなければならない」ということを思い出しましたのでちょっと書いてみました。コメント欄汚し、すみません。
ではでは。
それなりに時間的余裕があり、悩むことに費やせる時間が多くなると人間ロクなこと考えないですし。
過労死やノイローゼにならない程度に忙しく働いてると自殺する暇も無いんじゃないかと。