プリンストンの双璧クルーガーとクルーグマンのうち、どちらがワシントンに行くかが問題だ

という記事を先月末にWapoが掲載している(原題は「Of Princeton pair of Krueger and Krugman, it matters which is going to Washington」;The Big Picture経由)。


実際にはクルーガーがCEA委員長に指名されたわけだが、記事では両者を対比させ、二人の違いを強調した構成になっている。ただし、ややクルーグマンに悪意のある書き方にも見える。
以下は記事の簡単なまとめ。

  • 学内のインサイド・ジョブ上映会で、クルーグマンは、ウォール街やその共犯関係にあった経済学者を指弾した映画の見解に同調し、怒りを表明したが、クルーガーはそれほどでもなかった、と経済学部長のジーン・グロスマンは回想した。
  • 彼をCEA委員長に指名したオバマも、徹底的な変革を訴えて大統領に就任したものの、今は「それほどでもない」アプローチになっている。
  • マクロのクルーグマン対ミクロのクルーガーという違いは、かつては学術論上の些細な違いにように思われたが、今日では重要な意味を持つ。
  • クルーガー指名の持つ意味についてアラン・ブラインダー曰く:「現実問題として、大規模なマクロ経済政策ないし刺激策の時期はもはや終わったが、雇用について何か緊急に手を打つべきという事態は終わっていない。クルーガーは、小規模もしくは非常に小規模もしくは中規模の政策によって手を打とう、という考え方を代表している。」
  • クルーグマンとクルーガーは、共にプリンストンの教授であり、中道左派で、経済学界において天才の名をほしいままにしているという共通点はあるが、気質や学内での存在感や考え方には大きな違いがある。
  • クルーガーは50歳で、ハンサムであり、有能なワシントンのインサイダーである。また、サマーズやガイトナージーン・スパーリングやアラン・ブラインダーの現在ないし過去のテニス仲間である。一方、クルーグマンホビットに少し似た58歳であり、ブラインダーは笑いながら「彼がテニスをするとは思えないね」と言った。
  • クルーグマンは、総合的な理論、総支出、金利、財政金融政策といった大局から考える。クルーガーは実証で名声を築いており、規制や他の経済メカニズムによっていかに雇用を増やせるか、という面に重点を置いている。
  • ブラインダーに言わせれば、両者の意見が食い違うのは経済問題全体の1/4程度である。しかしその1/4が、まさにオバマの雇用計画、ひいては彼の大統領職を左右する重要な部分である。
  • クルーガーを支持するプリンストンの同僚であり、最近までCEA委員だった労働経済学の専門家セシリア・ラウズに言わせれば、「理想世界でなすべき政策」について書くコラムニストよりはクルーガーの方が「より現実的な」選択だった。
  • 2009年4月には「オバマと経済:初期の通知表」と題された大学のシンポジウムが開催されたが、ブッシュ時代のCBO局長だったダグラス・ホルツイーキン(Douglas Holtz-Eakin)によれば、財務省の経済政策担当次官補に指名されたばかりのクルーガーが政権の考え方に「驚くほど沿った」話に終始したのに対し、クルーグマンは「自分以外皆間違い」という態度を取っていた。
  • クルーガーの今後の課題は、少しクルーグマン的になって、マクロ経済問題に取り組むこと、とグロスマン学部長は言う。またクルーグマンは、クルーガーが政権内で自分の考えを押し通す能力に懸念を表明した。