わがコメントつきるとも

気がつくとMarcus Nunesとデロングが喧嘩していた。きっかけはNunesのこのエントリ


そこでNunesは、流動性の罠の下では財政刺激策は自らを賄う、という主旨のデロング=サマーズの最近の論文を話の糸口として、サマーズの財務副長官時代の持説だった拡張的緊縮策について論じた。そのサマーズの主張とは、財政赤字削減により金利が低下し、成長が高まる、というものだったが、1997年から2000年に掛けての現実の経済の推移を見ると、確かに財政赤字は縮小したものの、一方で金利は上昇していた。即ち、一見すると財政緊縮策が成長をもたらしたように見えるものの、サマーズのシナリオで要となる金利の動きを見る限り、そのシナリオは実は実現していなかった。
Nunesによれば、実際に起きたのは、金融政策による名目GDPのトレンドからの上振れであり*1、それが経済の推移を決定付けた。即ち、この時に事態の鍵を握っていたのは金融政策であった。そのことは今日も変わらないのであるから、財政政策の議論で時間を無駄にするのはやめて、FRBに適切な金融政策を採らせることに力を傾注しようではないか、というのがNunesの当該エントリでの主張である。


このエントリにデロングがコメントし、Nunesもコメントを返した。ところが、二度目のコメントでデロングがたまちゃんサマーズに謝れ、と居丈高に要求したので、Nunesは、こいつは怪しい、きっと(以前サムナーのところに出没していた)デロングの偽者に違いない、と判断し*2、関連コメントをすべて削除し、かの「デロング」のメールアドレスに、お前が偽者なのはお見通しだ、という主旨のメールを送った。ところが豈図らんや、そのデロングは真っ赤な本物で、Nunesへの反論と併せてそのメールを自ブログで公開した。Nunesはそのデロングのエントリのコメント欄で釈明を何度か試みたが、撥ねられてしまい*3、自ブログで事の経緯を説明したエントリ、およびデロングへの公開書簡エントリを立てた、というのがこれまでの経過となっている。


後者の公開書簡エントリの最後に書かれているように、元のNunesのエントリの一つの趣旨は、大同団結の呼びかけにあった。にも関わらず、それがデロングと彼との間に大きな亀裂を生む結果に終わったのは、不幸なことと言わざるを得ないだろう。まあ、ブロゴスフィアでは時たま起こること、と言ってしまえばそれまでであるが…。

*1:Nunesはそれをグリーンスパンのミスと評しており、後のバブルの原点として位置づけている。

*2:その際サムナーに相談までしている。

*3:のみならず彼を弁護するようなコメントも一旦現われた後削除されたとの由。