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himaginaryの日記

2012-06-20

貿易による格差を失業給付で補填する時

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について研究した論文をEconomic Logic紹介している


以下はその要旨。

Trade liberalization is no Pareto-improvement - there are winners (high-skilled) and losers (low-skilled). To compensate the losers the government is assumed to introduce unemployment benefits (UB). These benefits are financed by either a wage tax, a payroll tax, or a profit tax. Using a Melitz-type model of international trade with unionized labor markets and heterogeneous workers we show that: (i) there is a threshold level of UB where all trade gains are destroyed, (ii) this threshold differs between different kind of taxes, (iii) there is a clearcut ranking in terms of welfare for the chosen funding of the UB: 1. wage tax, 2. profit tax, 3. Payroll tax.

(拙訳)

貿易の自由化はパレート改善的では無く、勝者(高技能労働者)と敗者(低技能労働者)をもたらす。敗者を補償するため、政府失業給付を導入するものとする。その給付は、賃金税、給与税、収益税のいずれかで賄われるものとする。組織化された労働市場と不均一な労働者という条件下での国際貿易というメリッツ型モデルを用いて、我々は以下のことを示した:(i)それを超えると貿易からの利得がすべて失われる失業給付の閾値が存在する、(ii)この閾値税金の種類によって変わる、(iii)失業給付を賄う方法の選択については、厚生という観点から明らかに優劣の序列が存在する。即ち、1.賃金税、2.収益税、3.給与税、の順番である。



[6/23追記]

3つの税金の区別が分からないというはてぶコメントを幾つか頂いたので、それについてもう少し丁寧に説明した文章を導入部から追加で引用しておく。

The contribution of this paper is to investigate the impact of three different financing forms of the UB: (i) a wage tax paid by employees, (ii) a payroll tax paid by firms and (iii) a profit tax paid exclusively by exporters. The structure of the funding ensures that these taxes do not incriminate all workers and firms identically but harm on average the winners of trade.

(拙訳)

論文の貢献は、失業給付を賄う3つの相異なる財政手段の影響を調べたことにある:(i)被雇用者によって支払われる賃金税、(ii)企業によって支払われる給与税、(iii)輸出業者のみが支払う収益税。これらの税金がすべての労働者と企業に等しく負担をもたらすのではなく、平均的に貿易の勝者に負担をもたらすということは、課税構造により担保されている。

ぴっちゃん改めぴっちゃまぴっちゃん改めぴっちゃま 2012/06/21 15:15 雇用量には有効需要水準の増加関数(他の経済条件一定が前提)となりえる物と、そうでなくむしろ有効需要水準が落ちると増加する傾向にあるものの2種類があるとジョーン・ロビンソンは力説しています。
雇用市場の二重性ですね。後者は今時の言葉で言うdisguised unemploymentに相当します。
発表される雇用統計ではこの点が明確ではありません。
統計が取りにくいからです。
後者の市場を何らかの形で制限してしまい、前者の市場であぶれた人に失業給付を行なうのも確かに一つのやり方ではあります。
他方、失業給付の代わりに、経済条件を変えて前者の市場から後者の市場への流入を促し、かつ後者の市場に呼応する産業(金融・不動産を除くサービス業)の生産性を高めてしまえば、その分は失業給付総額もその分の国民負担も少なくて済むわけです。
そんな便利な経済はこの世のどこにあるのかと言ったら、もともとそれって戦後の日本にあったんですね。
また後者の市場が小さいのはドイツなど、後者の市場は大きいが関連する産業の生産性が低いのはアメリカなどです。
最近の日本も所謂構造改革や拙速な自由貿易化のおかげで後者の労働市場に関連する産業の生産性が落ちてアメリカみたいになっちゃってきていますが。
そして上の論文の主旨は経済のドイツ・モデル化を好ましいとするということです。

いっぽう、英国の有名な某先生はいま私が書いたこととまったく同じことを踏まえて、(昔の)日本に学ぶところがあるとその論文の中で言っていますが。

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