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himaginaryの日記

2012-08-28

竹馬に乗ったナンセンス・再訪

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ここで一連の批判を紹介したラグラム・ラジャンのフォーリン・アフェアーズ論文*1について、同誌の9-10月号でラジャンとメンジー・チン、カール・スミスの間で応酬が交わされているという。Econbrowserでチンがその抜粋を紹介している


以下はチンの批判。

In "The True Lessons of the Recession" (May/June 2012), Raghuram Rajan sketches a structuralist interpretation of the Great Recession's causes and aftermath and draws out the resulting policy implications. Although he gets much right about the causes of the crisis, the reforms he recommends for ending it are misguided. In an environment of insufficient demand, a strategy that relies solely on getting rid of regulations, investing in human capital, and spurring entrepreneurship is doomed to end in sorrow. These types of policies are better thought of as complements to, rather than substitutes for, aggressive tactics aimed at boosting demand.

(拙訳)

「グローバル・リセッションの本当の教訓」(2012年5-6月号)でラグラム・ラジャンは、大不況の原因と結果について構造主義者的な解釈を提示し、そこから得られる政策上の意味合いを示している。危機の原因については大方正しく捉えているものの、それを終結させるために彼が推奨する改革案は誤っている。需要不足という状況下においては、規制撤廃、人的資本への投資起業の促進だけに依拠した政策は失敗に終わらざるを得ない。そうした政策は、需要を喚起するための積極策の代替では無く、むしろ補完と考えるべきなのだ。


以下はチンに対するラジャンの反論の一節。

The scenario he sketches of advances in innovation and productivity being “counterproductive in the short run if they drive prices down” may be theoretically possible, but it is extremely unlikely. More innovation and productivity will raise workers wages in real terms and expand investment, contributing to sustainable growth in demand. To argue that these changes will lead to spiraling debt deflation in today’s world strains credulity.

(拙訳)

技術革新生産性の向上が「物価を下落させるならば短期的には逆効果」という彼(=チン)の描く状況は、理論的にはあり得るものの、実際に起こるとはまず考えられない。技術革新生産性が向上するほど、実質ベースの労働賃金は上昇し、投資は増加し、持続的な需要の成長につながる。今日の世界においてそうした変化がスパイラル的な債務デフレを招くという主張は、容易に信じられるものではない。

このラジャンの見解については、ヴィクセル的な金利が正の世界では間違いなく正しいだろうが、今はそうではないし、この論文などで指摘されているように非中立的な技術進歩は雇用を増加させるとは限らない、という指摘がEconbrowserエントリのコメント欄でなされている。

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