ドラギ「ドイツ国民に告ぐ」

ドラギECB総裁が南ドイツ新聞のインタビューにかなり率直に答えた記事が、ECBのサイトに転載されているMostly Economics経由)。


その中でインタビュアーが、42%のドイツ人がECB総裁としてのドラギに不信感を抱いている、と辛辣な指摘をしたのに対し、ドラギは、そのことが仕事の妨げになっていることを認め、ブンデスバンクやドイツ人に自分の立場を説明することに積極的な姿勢を見せている。


南欧国債購入計画については、インタビューの冒頭で、ドイツは否定的、南欧も条件が厳しいので肯定的とは言えない、それ以外の世界は称賛してくれた、と各国の反応を要約している。そして、インタビューの中盤で、ドイツの否定的な反応に対し以下のような説得を試みている。

SZ: Your new bond purchasing programme reminds us of Italy in the 1970s, when the central bank helped the state out in its financing, which only increased the problems.

Draghi: That was something completely different. It took place decades ago, when the Italian central bank wasn't independent from the state. In Italy things have changed completely since then. Banca d’Italia has now been independent for decades, and has not financed any government deficit. We have to move away from clichés of the past if we want to address the future!

SZ: The Bundesbank has a different view: Jens Weidmann fears that the ECB’s monetary policy is financing fiscal deficits.

Draghi: No, the Governing Council disagreed with that view. What has been decided is a monetary policy measure. There is a fundamental difference between buying on the primary market, which is forbidden because the money would go to the government, and buying on the secondary market where the money does not go to the government but to bond holders. Article 18 of the Statute states that the ECB may “buy and sell […] marketable instruments” as part of its mandate, if necessary to achieve price stability, of course always respecting the Treaty’s Article 123 on the prohibition of monetary financing.

SZ: Where does the German opposition come from?

Draghi: It comes from the history of the country and the fear of inflation. But it has to be clear that in the case of EFSF/ESM support, the parliaments of the euro area countries will be involved.

SZ: But the parliaments do not decide on the amounts that the ECB is going to risk …

Draghi: No, because monetary policy has to remain independent, and it is a prerequisite for the Governing Council to consider the specific monetary policy measures.


(拙訳)

南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung=SZ)
あなたの新たな債券購入プログラムは、1970年代のイタリアを想起させます。当時中央銀行は政府の財政を手助けしましたが、問題を悪化させるだけに終わりました。
ドラギ
それとは全然別物です。それはイタリア中央銀行が政府から独立していなかった何十年も前の話です。イタリアではその時からすっかり変わりました。イタリア銀行はもう数十年に亘って独立を維持していますし、財政赤字ファイナンスしていません。未来に顔を向けるならば、過去の陳腐な考えから抜け出す必要があります!
SZ
ブンデスバンクはそうは考えていません。イェンス・ヴァイトマンはECBの金融政策が財政赤字ファイナンスしているのではないかと危惧しています。
ドラギ
それは違います。ECB理事会はその見方に与しません。実施が決定されたのは、あくまでも金融政策です。起債市場で購入するのと、流通市場で購入するのは根本的に違います。前者は資金が政府に渡るため禁止されていますが、後者では資金は政府ではなく債権保有者に渡ります。法令の18条は、物価の安定を達成するために必要ならば、ECBがその使命の一環として「市場性商品を…売買」できる、と定めています*1。もちろん、財政ファイナンスを禁じた条約123条を尊重した上での話ですが*2
SZ
なぜドイツは反対しているのでしょう?
ドラギ
国の歴史と、インフレへの恐怖が原因です。しかし、EFSE/ESMによる支援の際には、ユーロ圏の国の議会が関与することになる、という点は否応なしにはっきりしています。
SZ
しかし、それらの議会はECBが取るリスクの量の決定には関与しません…。
ドラギ
その通りです。というのは、金融政策というものは独立性を維持しなくてはならず、ECB理事会が金融政策の各手段について判断を下すことが大前提だからです。

*1:cf. ここ

*2:cf. ここ