Hatena::ブログ(Diary)

himaginaryの日記

2013-01-01

世界を良くするためにできる最も重要な一つのこと

|

新年明けましておめでとうございます。


表題の件についてシャシ・タルールが書いたProject SyndicateをMostly Economicsが紹介している。その設問(What is the single most important thing that can be done to improve the world?)への答えは次の2語で表わされるという:「educate girls」。即ち、女性を教育すること、とのことである。


これについてタルールは以下のように説明している。

It really is that simple. No action has been proven to do more for the human race than the education of female children. Scholarly studies and research projects have established what common sense might already have told us: if you educate a boy, you educate a person; but if you educate a girl, you educate a family and benefit an entire community.

(拙訳)

実際、話はそれほど簡単なのだ。女子を教育すること以上に人類にとって役立つことが証明された行為は存在しない。学界の調査や研究プロジェクトは、既に常識化していたであろうことを教えてくれた。即ち、男子を教育するならば、一人の個人を教育することになるが、女子を教育するならば、家族を教育することになり、共同体全体の利益となる。


タルールはこの主張を支持する実証結果として、以下を列挙している。

  • 母親の就学年数が上昇すると、子供の健康と教育、および大人の生産性に測定可能な影響を与える。教育を受けた母親の子供は、教育を受けた父親と無学の母親の子供よりも一貫して成績が良い。
  • 6年以上の教育を受けた女性は、子供に予防接種を受けさせたり、水を沸騰させることから手を洗うことに至る衛生的な習慣の重要性を認識する際に、医者からのアドバイスをより受け入れる。世界保健機関の研究によると、アフリカでは、5年の教育を受けた母親の子供が5歳以上まで生き延びる確率は40%高い。
  • 女性の教育のメリットは乳幼児以外にも及ぶ。
    • ザンビアでの研究によると、教育の無い女性の間でAIDSが広がる速度は、教育を受けた女性の2倍に達する。
    • 教育を受けた女性は婚期が遅く、年上の男性の虐待を受けにくい。
    • 教育を受けた女性は子供が少なく、出生の間隔も上手に置くため、面倒を良く見られる。ある研究によると、7年の教育を受けた女性は、教育を受けていない女性に比べ、2-3人子供が少ない。
    • 世銀の推計によると、教育期間が4年延びると出生率は1減少する。インドケララ州の出生率(1.7)がビハール州(4以上)より少ないのも教育の差が理由。中等学校に通う女性の数が多いほど、国の一人当たり所得の伸び率は高まる。
  • 女性に重点を置くことには以下のメリットもある。
    • 女性は他の女性から学ぶため、教育を受けていない女性は、教育を受けた女性の成功したやり方を真似る。
    • 女性は家族のために収入を費やす。
    • 教育を受けた女性が農地で働くと、農業生産性向上と栄養失調の減少に直接的につながる。

LoveLove 2013/01/04 12:47 樫野氏のブログのこれを思い出しました。

http://kashino.tumblr.com/post/2824987018/fault-lines
----------------------------------------------------------
その研究の一つに、アフリカ(ケニア)において10代の女の子が性被害にあわないように、妊娠しないように、HIV被害が食い止められるように、するにはどうすればいいのか、という実験をしているんだ。以下の論文に詳細はあるのだけれど。

http://econ-www.mit.edu/files/3158
http://econ-www.mit.edu/files/4286

それによると、宗教的なモラルに訴えるとか、モラルを醸成するとか、セミナーで教育するとかというイメージや倫理を重きにおいた施策は、人々の行動をほどんど変えないんだよ。それらよりも、一番効果的なのは、女の子を学校に行かせること。それも出来るかぎり宿題などの義務的課題を多くして、高校まで(そして大学までと)修業年限を長くして。つまり、学校に行かせることは、すなわち性交機会が減ることであり、そのために自動的に10代女子の産児拡大、HIV被害も、性的被害も同時に解決するのだ。

これでわかるように、学校というのは女子の性交機会を減らす装置として機能するということでもあるんだよね。もちろん、Dufloの研究はいわゆる ”Nudge”をすることで低開発国の人々を救おうという意図があって、先進諸国に適用するのは邪道だ。でも「学校にいく/性交機会が減る -> 子供が生まれにくくなる」という関係は十分にあるのだから、「子供を生まれやすくする -> 女子を学校にいかせない/性交機会を増やす」というのはポリティカルコレクトネスを著しく欠いているが、事実として成立している可能性が高い。人は、温かい家庭や金銭的に豊かになるから子供をたくさん持つわけじゃない。単に若い娘の性交機会が増えると、勝手に子供がたくさんできるのだ。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20130101/most_important_thing_to_improve_the_world