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himaginaryの日記

2018-01-12

経済ポピュリズムを擁護する

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ダニ・ロドリックが「In Defense of Economic Populism」というProject Syndicate論説を書いている

Populists’ aversion to institutional restraints extends to the economy, where exercising full control “in the people’s interest” implies that no obstacles should be placed in their way by autonomous regulatory agencies, independent central banks, or global trade rules. But while populism in the political domain is almost always harmful, economic populism can sometimes be justified.

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Independent central banks played a critical role in bringing inflation down in the 1980s and 1990s. But in the current low-inflation environment, their exclusive focus on price stability imparts a deflationary bias to economic policy and is in tension with employment generation and growth.

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In such cases, relaxing the constraints on economic policy and returning policymaking autonomy to elected governments may well be desirable. Exceptional times require the freedom to experiment in economic policy. Franklin D. Roosevelt’s New Deal provides an apt historical example. FDR’s reforms required that he remove the economic shackles imposed by conservative judges and financial interests at home and by the gold standard abroad.

We should constantly be wary of populism that stifles political pluralism and undermines liberal democratic norms. Political populism is a menace to be avoided at all costs. Economic populism, by contrast, is occasionally necessary. Indeed, at such times, it may be the only way to forestall its much more dangerous political cousin.

(拙訳)

ポピュリスト経済においても制度的な制約を忌避する。「人々の利益のために」完全なコントロールを実施するに際しては、自律的な規制機関、独立した中央銀行、もしくは世界的な貿易ルールによっていかなる障害も設けられてはならない、というわけだ。政治分野でのポピュリズムはほぼ常に有害だが、経済ポピュリズムは時に正当なものとなる。

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独立した中央銀行は1980年代と1990年代インフレを引き下げるに当たって極めて重要な役割を果たした。しかし現在の低インフレ環境では、中銀が物価安定に専念することは経済政策デフレバイアスをもたらし、雇用の創出や成長との間に緊張関係を生み出す。

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このような場合、経済政策への制約を緩和し、選挙で選ばれた政府に政策策定の自主性を戻すことが望ましいものとなることがある。非常時には、実験的な経済政策を行う権限が必要となるのだ。フランクリン・D・ルーズベルトニューディールは歴史上の適切な例である。FDRの改革では、保守的な判事や国内の金融業界の利益や海外の金本位制によって課された経済的手枷足枷を取り除くことが必要となった。

政治的な多元主義を封じリベラルな民主的規範を損なうポピュリズムには絶えず警戒する必要がある。政治的ポピュリズムは絶対に避けなければならない脅威なのだ。一方、経済ポピュリズムは時に必要なものとなる。実際のところ、そうした時には、遥かに危険な政治的ポピュリズムを防ぐ唯一の手段となることもある。

経済ポピュリズム正当化される他の例としてロドリックは、政策策定を恒久的にコントロールするために特定の利益層や指導層自身が制約を設けた場合や、EU経済ルールや規制を挙げている。前者については、多国籍企業による厳格な特許ルールや、投資仲裁、および金融機関が自分に有利な規制を導入させたこと(いわゆる「規制の虜」*1)がその最たる例だとしているが、その点ではスティグリッツによるTPP批判に通ずるものがあるように思われる。後者については、EUによるそうしたルール・規制がポピュリスト的なEU懐疑派の政党を台頭させた、としている。

なお、ロドリックは経済における制約が望ましいものとなる場合として時間的不整合を伴う経済政策を挙げており、裁量的な金融政策によって成長を無理に高めて経済危機を招いた中南米諸国や、海外から投資家を招いた後で約束を反故にすることをその例としている。

*1cf. ここ

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