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himaginaryの日記

2018-09-11

マイナス金利は銀行に大して悪影響を及ぼさない

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「Why Have Negative Nominal Interest Rates Had Such a Small Effect on Bank Performance? Cross Country Evidence」というNBER論文上がっているungated版)。著者はJose A. Lopez(SF連銀)、Andrew K. Rose(UCバークレー)Mark M. Spiegel(SF連銀)。

以下はその要旨。

We examine the effect of negative nominal interest rates on bank profitability and behavior using a cross-country panel of over 5,100 banks in 27 countries. Our data set includes annual observations for Japanese and European banks between 2010 and 2016, which covers all advanced economies that have experienced negative nominal rates, including currency union members as well as both fixed and floating exchange rates countries. When we compare negative nominal interest rates with low positive rates, banks experience losses in interest income that are almost exactly offset by savings on deposit expenses and gains in non-interest income, including capital gains on securities and fees. We find heterogeneous effects of negative rates: banks from regimes with floating exchange rates, small banks, and banks with low deposit ratios drive most of our results. Low-deposit banks have enjoyed particularly striking gains in non-interest income, likely from capital gains on securities. There have only been modest differences between high and low deposit-ratio banks’ changes in interest expenses; high deposit banks do not seem disproportionately vulnerable to negative rates. Banks also responded to negative rates by increasing lending activity, and raising the share of deposit funding. Overall, our results indicate surprisingly benign implications of negative rates for commercial banks thus far.

(拙訳)

我々は、27ヶ国の5,100行以上の銀行の国際パネルデータを用い、マイナスの名目金利が銀行の収益性と行動に与えた影響を調べた。我々のデータセットは、日欧の銀行の2010年から2016年の年次データを収録しているが、これはマイナスの名目金利を経験した先進国経済をすべてカバーしている。その中には、通貨同盟の参加国もあれば、固定相場制の国も変動相場制の国も含まれている。マイナスの名目金利を低いプラスの金利と比較した場合、銀行は金利収入の損失を経験するが、それはほぼ正確に預金費用の節減と非金利収入の利得で相殺される。ここで非金利収入とは、証券キャピタルゲインや手数料などである。我々はマイナス金利の影響は一様ではないことを見い出した。変動相場制の国の銀行、小さな銀行、および、預金比率が低い銀行によって我々の結果は主にもたらされている。預金の少ない銀行は特に、おそらくは証券キャピタルゲインである非金利収入の著しい利得を享受した。預金比率の高い銀行と低い銀行の金利費用の変化の差は小幅にとどまった。即ち、預金の多い銀行が特にマイナス金利の悪影響を受けやすい、という傾向は見られなかった。銀行はまた、融資活動を増やし、預金調達の割合を引き上げることによってマイナス金利に対応した。全般的に、我々の結果は、これまでのところ商業銀行へのマイナス金利の影響は驚くほど良性である、ということを示している。

日本のマイナス金利政策が始まったのは2016年1月なので*1、巷間取り沙汰されているマイナス金利政策の日本の銀行への悪影響は、2016年までのサンプルを対象としたこの論文では分析結果にあまり影響していないように思われる。

*1:ただしungated版の表A1ではなぜか2016Q4となっている。

sakesake 2018/09/12 18:36 全体的に見て影響はないけど、小さな銀行はダメージを受けて、大銀行は利得を得ているというは、
なんともはやという感じですね。
そのへんは日本の場合、マイナス金利の影響は中小銀行の方がより大きいという言説とは整合的ですが。
+圏金利と-圏金利の影響が対象的だとすると、マイナス金利からの脱却は、大銀行よりも小規模銀行により多く利得をもたらすってことなのかなあ。なんかそんなこともない気がするけど。

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