Reinventing Radio

IT Conversationsで配信されている表題の講演を聞いた。表題のリンク先でMP3ファイルがダウンロードできる。ETech 2005というイベントでおこなわれたものである。イギリスのBBCの人の講演で、内容は彼らが行っているラジオにネットワークを活用する取り組みについてである。私は日本の状況を知らないが、素晴らしい取り組みだと思った。日本のラジオ関係者にも大いに参考になるのではないかと思う。4月に行われた講演なので関係者にはすでに耳に入っていることとは思うが。以下、印象に残った点を紹介しておく。

  • イギリスではラジオの聴取が増えていて、去年テレビを抜いた。(注:たぶん、国民全体のラジオの総聴取時間がテレビの総視聴時間を上回ったということでしょう)。聴取時間は第2次世界対戦後で最高を更新している。
  • 大人の10人中9人が普段からラジオを聴いており、1週間の総聴取時間は10億時間に上る。BBCはその中で主要な位置を占めており、全部で10チャンネルを持っている。内訳は地上波が5チャンネル、衛星など地上波以外が5チャンネルである。
  • BBCラジオのインターネットのライブストリーミングの1週間当たりの総聴取時間は600万時間、オンデマンド・ストリーミングは400万時間になる。
  • 聴取時間が増えている要因としては規制緩和、提供形態の多様化(インターネットや衛星、3G携帯電話など)、ラジオは別のことをしながら聞けることなどが考えられる。
  • 番組へのリクエストや反響は携帯電話のメールで送られてくるものが一番多く、1ヶ月に50万通がBBCに寄せられ、その数字は伸びている。(注:日本の携帯メールより単純で、題名はなし、内容は160文字まで、送り先は多くの場合電話番号で、携帯電話同士にしか送れない)
  • より双方向性の高いラジオ番組の試みとして、携帯メールによるリクエストを10時間に渡って流すことをこれまでに3回やって、好評だった。メールの内容は、アーチスト名、曲名、自分の名前、その曲を誰に贈るか、である。リクエストを受信してまとめるシステムを作り、曖昧マッチングの機能を組み込んだ。綴りの間違いや、「7」か「seven」かといった表記のゆれを吸収するためである。これによって、同じ曲へのリクエストをまとめて、リクエストした人の一覧を読み上げることができるようにした。
  • 別のサービスとして、ラジオを聴いていて気に入った曲があったら携帯メールを送っておき、後でBBCのウェブサイトを開いて自分の電話番号を入れると、自分が印を付けておいた曲の一覧が見られるようにしている。メールにはsummerのように自分の決めた分類の言葉を入れてもよく、そうすると、自分のウェブページで分類ごとの曲の一覧が見える。
  • 聴取者だけでなく、BBCもそのデータを活用している。まず、リアルタイムで流した曲がどれくらい好まれているかが分かる。更に、どんな分類の言葉が付いているかも分かる。更に、分類ごとの曲の順位や、更にアーチストの分類もできる。
  • 別の試みとして、ラジオを聴くことをもっと社会的な営みにするための模索も行っている。家庭でのテレビの視聴やラジオの聴取、友達同士でビデオや映画を見ること、コンサートを聴くこと、スポーツ観戦などメディアの消費は多くの場合社会的営みである。インターネットでのラジオの聴取をもっと社会的営みにすることはできないだろうか。その試みの一つとして、自分が聞いているストリーミングを別の人も聞け、その人が別のストリーミングを選んだら、自分も同じストリーミングを聞くようなインターネットラジオチューナーソフトを試作した。構想としては、自分が気に入った発言や曲が流れた後に、別の人に拍手の音を送れるような機能も考えている。

2005-08-01追記

O'Reilly Radarこのエントリでも取り上げられている。その中でこのPDFファイルが紹介されて、これはたぶん講演の中でも一部が使われたのであろう。

2005-09-03追記

Internet Watchこの記事で、BBCポッドキャストやその他のインターネットの活用について言及されている。