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2005-08-31

Googleによるダークファイバ購入

Business 2.0という雑誌にFree Wi-Fi? Get Ready for GoogleNetという記事があり、その中で、Googleが全米でダークファイバを購入するとともに、東海岸で都市の間の高速離専用回線を購入していることが紹介されいる。以下引用するように、前例のない規模での購入だそうだ。

Such large-scale purchases are unprecedented for an Internet company,

そして、On The Mediaというラジオ番組の8月26日放送分で筆者がインタビューを受けていて、番組のウェブページでは「A Superhighway of One's Own 」という題名が付いている。

ダークファイバとは通信会社が敷設した光ファイバそのもののことで、光ファイバが通す信号であれば何でも通すことができる。たとえばYahoo!BBのネットワークはダークファイバで構築されている。アメリカではダークファイバはインターネットバブルの時代に大量に敷設されて、バブル崩壊後安くなっている。

その記事ならびにインタビューの中では以下のように使い道を推察している。

  • 自前で大規模なネットワークを作ってインターネット接続業者(ISP)に支払っているお金を節約するのではないか。
  • 無料の公衆無線LANサービスを提供し、そこで更なる広告収入を得るのではないか。

後者についてはGoogleはベンチャー企業であるFeevaがサンフランシスコのユニオンスクエアの公衆無線LANサービスを構築するのを援助しているそうである。ただし、Googleはダークファイバをどのように利用していくかについて明確な方向は示していない。

いまどきダークファイバを一般企業が買うことは珍しくない。しかし、全米でダークファイバを買っていて、東海岸の都市の間の回線も買っているのだから、何かしら計画はあるのだろう。上記の推察はあまり的を射ているとは言えないと思うが。

追記

On Pointというラジオ番組の8月30日の放送の前半はGoogleを取り上げていて、その中でもダークファイバのことは何度か言及されていた。On The MediaもOn Pointも一般向けラジオ番組なので少なくともIT系の人にはもはやGoogleのダークファイバ購入は常識の部類に入るのかも知れない。

Economics of the Long Tail

IT Conversationsで配信されている表題の講演を聞いた。表題のリンク先で講演のMP3ファイルが入手できる。講演者はロングテール論の提唱者Chris Andersonである。

興味深いと思ったのはExciteの創始者が講演のあとで発言していて、Googleの成功の理由を広告におけるニッチマーケット、つまりロングテールを金銭化することに成功したことで、Exciteにはそれができなくて検索ビジネスから撤退したと分析していることだった。

2005-08-28

A New Kind of Science

IT Conversationsで配信されている表題の講演を聞いた。スティーブン・ウルフラム(Stephen Wolfram)という科学者による同名の著書に関しての講演で、深遠な内容だった。2003年2月におこなわれた講演で、たまたま先週IT Conversationsの「Pick of the Week」になっていたので聞いたのである。十分に理解するには以下の用語・概念を聞きかじりでもいいので知っている必要があり、やや敷居が高いが、がんばって聞く価値がある講演だと思う。

  • セルラーオートマトン
  • チューリングマシン
  • ラムダ計算のチャーチ・ロッサ性

講演の概要は以下の通り。

ウルフラムはまず、幾つかのセルラーオートマトンが、至極単純であるにもかかわらず非常に複雑な挙動を示すことに注目した。その挙動は数学的にランダムであり、実際に実行してみる以外に将来を予測できないことが分かった。

そして自然界に目を向けると、ある種の貝*1に見られる複雑な模様がセルラーオートマトンによるパターンと同じであることが分かった。つまり、貝殻が形作られる過程で色素細胞の生成がセルラーオートマトン的におこなわれたのである。貝には種類によって単純な模様のものもあれば複雑な模様のものもある。それらはいずれもセルラーオートマトンの挙動に対応付けすることができる。

ウルフラムは更に自然界のすべてのものごとは計算(computation)と見なすことができるのではないかと考えた。そして彼は宇宙全体をネットワークと見なす。Sun MicrosystemsのスローガンNetwork is the ComputerをもじってNetwork is the Universeと言ってもいい。

もちろん宇宙はセルラーオートマトンのように升目で区切られた白黒ではない。しかし物質は連続的かというとそうではなく、中間子やクォークといった微細なレベルでは離散的である。

また、セルラーオートマトンではすべてのセルの変化が同時に起こるが、宇宙ではそんなことはない。それについて彼は変化は1箇所で起こり、それがネットワークを通じて伝わると考える。そうすると、様々な過去や様々な未来が考えられることになるように思えるが、現象=計算にチャーチ・ロッサ性があれば一定の結果が得られる。

宇宙をこのようなネットワークと考えると相対性理論が導出される。

一般に計算には理論的に単純化の限界がある。あるセルラーオートマトンのnステップ先の状態を知るにはnステップ実行するしかない。複雑な自然現象も実は単純な計算から構成されるのかも知れないが、その計算が単純であったとしてもたぶん実際に実行するしか将来の状態を知ることができない。シミュレーションは便方ではなく必然であるのではないか。

*1:講演ではmollusk shellと言っている。

2005-08-16

Gary Cornell - Apress

IT Conversationsで配信されている表題のインタビューを聞いた。Cornell氏はApress(エイプレス)というコンピュータ関係の書籍の出版社のCEOである。もともとは数理科学(number theory)を大学で教えていて、全米科学財団(National Science Foundation)のプログラムディレクターを務め、1998年に出版社を興したという経歴の持ち主である。最近C#の入門書を執筆したとのことで、まさにproducing managerと言える人であろう。

Apressでは編集委員も編集者も科学技術分野の人で、扱う本の内容を理解できる人ばかりなのだそうだ。そして、新しい本を出版するための条件の1つは、編集委員の最低限一人がその本を読みたいと思うことだそうだ。

その他印象に残ったのは以下の点である。

  • インターネットバブルの崩壊でコンピュータ書籍の売り上げは1/4に落ちた。
  • インドで大量の技術者が生み出されており、また、経済成長も続いているので、技術書の売り上げも伸びていくだろう。
  • 従来は需要が高かったAPI参照マニュアルのような本はインターネット検索が充実した今となっては需要が減っただろう。
  • しかし、たとえばスレッドプログラミングについての解説のようなまとまった説明を紙の本で読みたいという需要はなくならない。
  • 音楽を聞く人にとってMP3ファイルで何ら問題はないが、本のデジタルデータは本の代わりにはならない。1000ページの本をコンピュータ上で読みたいと思うだろうか。
  • Javaの停滞の原因は宗教色が強すぎることだ。また、SWTをやめてSwingに移行したのは大いなる無駄だ。
  • C#はECMAで規格化され、Monoが登場するに至り、Javaに比べてよりオープンソースになろうとしている。
  • Java 5.0と.NET 2.0でJavaとC#はかなり近づいたがまだC#には値型(value type)などJavaにはない利点がある。
  • Eclipseは素晴らしい。21世紀のEmacsだ。しかし広範に使われるアプリケーションプラットフォームだとは思わない。

Apressの本で日本語に翻訳された本は今のところないよだ。

2005-08-08

Fighting Outbreaks and Bioterrorism

IT Conversationsで表題の解説を聞いた。Biotechnationというラジオ番組からである。西ナイルウイルスをはじめとする新しい病原体の現状と、それに対処することを目指して構築されつつあるSYRISという医療情報システムについてのインタビューである。インタビューを受けていたのは「Microbe: Are We Ready For The Next Plague?」という本の筆者のAlan ZelicoffとMichael Bellomoだ。表題のリンク先でMP3ファイルがダウンロードできる。内容は以下の通りである。私の専門外なので不正確な点があるかも知れない。ご指摘いただければ幸いである。

  • 年間10億人が飛行機に乗る現在では、あらゆる病原体があらゆる場所にあると言ってよい。30年前なら米国内で発生するとは到底考えられなかったような感染症の発生が現在では見られる。
  • 過去15年間に米国内で発生した新種の伝染病はすべて動物原性感染症(zoonotic desease)である。
    • それらの病原体は人間を本来の宿主とはしていないこともあって感染した人を死に至らしめる確率が高い。*1
    • 人間に感染者が出る前に動物に目立った感染が起こって、獣医や動物園の関係者が全米疾病管理センター(CDC)に報告していたが無視されてきた。
    • 西ナイルウイルスは慢性の神経症状を起こすことがあることが分かってきた。急性症状が解消したあと、あるいは感染後急性症状が現れなくても、後になってパーキンソン病や小児麻痺のような慢性の神経症状を引き起こすことがあり、その場合、治療法がない。
    • 生物兵器として使われるのは、天然痘を除いて動物原性感染症の病原体である。
  • 米国の伝染病の報告体制は19世紀的で、基本的に文書が組織階層を上って下りてくるしくみであり、マサシューセッツ州での公衆衛生係官への聞き取り調査によると近くで発生した髄膜炎*2の流行を係官が知るのには発生から1週間かかるとのことである。
    • これでは本来救えるはずの発症前の伝染病感染者や生物兵器に攻撃された人を助けられない。
    • 医師や獣医は忙しくて特異な病気を公衆衛生機関に報告している余裕がない。
    • 検査機関は公衆衛生機関に報告をするが、検査費用がかかるため医師や獣医はめったに検査機関を使わない。
    • また現在の報告体制は病気を特定してから報告することになっており、特異な病気や新たな病気を報告することは難しい。
  • そういった状況を大きく変えるためにSyndrome Reporting Information System (SYRIS。症状報告情報システム)を構築している。syndromeは複数の症状(symptom)から構成される。
    • SYRISは名前が示す通り症状を報告するしくみであり、報告者は病気を特定する必要はない。
    • SYRISには獣医と医師両方が参加する。新しい伝染病がまず動物で起こっているから。
    • SYRISは獣医や医師は日々の診断に役立つようにもできている。
    • SYRISにより生物テロによる死者を大きく減らすことができる。生物テロでは免疫不全の人あるいは大量に病原体を摂取した人が、少数だがテロ発生後1日2日のうちに発症するする。それを把握できれば、迅速なワクチン投与により大多数の人の命を救うことができる。
    • テキサス州西部での同様のシステムでは非常にいい成績を収めている。
  • DNAワクチンにより、新たなウイルスにも迅速に対応できる時代になった。
    • 従来のワクチンではウイルスを沢山作って、それをもとにワクチンを作っていた。
    • DNAワクチンとは、ウイルスからDNAを取り出してある程度ばらばらにした上でDNA自体を複製して作る。ウイルスを大量に作るよりDNAを複製するほうがずっと容易である。
    • 肝炎ワクチンとして既に使われている。

2005-09-11追記

医学の研究者である友人に聞いたところ、DNAワクチンについては「研究はされているけど実用になるのかなあ」と言っていた。

*1:本来の宿主を殺してしまっては多くの宿主に感染することができず広がれない。

*2:meningitis。私は日本で髄膜炎が流行したという話を聞いたことはないのだが、番組中では幼稚園から大学の寮に至るまで学校で流行することがしばしばあると言っていた。

2005-08-03

Andrew Morton

IT Conversationsで表題の講演を聞いた。Linuxカーネルの開発でLinus Torvaldsに次ぐ地位にあるAndrew Mortonの講演である。表題のリンク先でMP3ファイルがダウンロードできる。

印象に残っているのは以下の点である。

  • Linuxカーネルはモジュール化が進んでいて、多数の個人グループが半ば独立に開発を進めている。
  • Linuxのカーネルプログラマのかなりの部分はRedHadやSUSEといったLinuxディストリビューションの会社や、その他自らの製品にLinuxを使っている会社に雇われている。
  • 以前はカーネル開発コミュニティは安定版カーネルのリリースもしていたが、現在それはRedHatやSUSEといった会社がおこなうことにして、LinusやAndrewはそれはしていない。以前はリリース用にブランチを作っていたのだが、今はやっていない。RedHatやSUSEは、ある時点の開発版カーネルを元に入念なテストをはじめとするリリースエンジニアリングをおこなってリリースする。
  • オープンソースのプロジェクトの多くは少人数のグループで進められている。Linuxカーネルのように多くのプログラマが関わっているプロジェクトは稀である。他にはKDEやGnomeがある。KDEやGnomeもLinuxカーネルと同様モジュール化されていて、複数のグループが半ば独立に作業を進めている。

Tim O'Reillyがオープンソースについて語る際に、モジュール化アーキテクチャの利点を強調していたのと符合する。O'Reilly氏はモジュール化アーキテクチャがオープンソースソフトウェアの信頼性の高さや柔軟性、進歩の速さの理由であるとしている。

モジュール化は大規模な開発では必ず必要なのだが、オープンソースだとそうしないと大規模な開発は絶対にできないのでそうなるということでであろう。それとちゃんとしたアーキテクチャを設計できる人材に恵まれているということもあるかも知れない。

その他若干気になったこととして、オープンソースへの貢献はほとんど北米とヨーロッパ、オーストラリアからで、日本からはないことはないが非常に少なく、中国・韓国からはまったくないと言っていた。

2005-08-02

ブライスのパラドックス

IT ConversationsNetworks - The Science-Spanning Disciplinesと題する講演を聞いた。講演は表題が示すとおり広い範囲に渡っていたのだが、交通における(Braess' Paradox)が紹介されていて、それが興味深かった。講演で使われたスライドがここで見られ、その44・45ページが、そのパラドックスの説明図である。パラドックスの内容を説明しておこう。

地点1から地点4に至るのに地点2を通る経路と地点3を通る経路があるとする。

 /2\
1   4
 \3/

そして地点2から地点3に至る新たな経路が加わったとする。

 /2\
1 | 4
 \3/

交通量は同じでも場合によっては新たな経路の導入により平均所要時間が増えることがあるというのがパラドックスの中身である。

これは理論だけではなく実際に起こっているそうだ。ドイツのシュツットガルトで市の真ん中に道路を作ったら交通事情が悪化して、その道路を廃止したと言う。また、ニューヨークで42番街をデモのために閉鎖しても特に混雑は発生しなかったと言う。

更に同じ現象はインターネットの通信量についても観測されているそうだ。

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