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2006-08-30

「利己的な遺伝子」と宗教の共通点

IT Conversationsでミームと「利己的な遺伝子」 との共通点についての講演を聞いた。

「利己的な遺伝子」というのは、1976年に発刊された同名の本で述べられたことがらで、生物は遺伝子が自分のコピーを残すために存在している、という考え方である。講演者は、こういった遺伝子に対する捕らえ方を、より広く、コピーが大量に作られるもの全般に広げ、人間の習慣・嗜好・思想などにも当てはまるのという論を展開している。これらを総じてミームと呼んでいる。人間の思想は多くの人を経て、場合によっては1000年単位で広がり、発展していく。これは遺伝情報と似ている。

講演者は更に宗教に話を進める。もっとも大規模にかつ長期間に渡って人から人へと伝わり、少しずつ変化していっているものとして宗教を挙げているのである。宗教は長期間のうちに、多くの人を経て発展・変化している。長い歴史を持つ宗教の教義・儀式は誰か1人が作り上げたものではない。

宗教に対するこのような見方を私は新鮮に感じた。そして、講演者は、このように宗教の有り方を捉えることを通じて、宗教から脱却することを言外に薦めている。たとえば無神論者が多い北欧や日本では犯罪率も低く、総じて社会がいい状態にあることを挙げている。

講演者はイギリス出身で、ティーンエージャーの子供に神を信じている人を知っているかと聞いたところ、息子はクラスに1人、娘はクラスに2・3人と答えたそうだ。

2006-08-27

男女の脳の違い

KQED Forumというラジオ番組で男女の脳の違い(その回の題名はFemale Brain)についてとりあげていた。ストリーミングとMP3ファイルのダウンロードで聞ける。印象に残ったのは以下の点。

  • 妊娠8週間までは男女の脳に違いはないが、その時点で睾丸ができて男性ホルモンが分泌されはじめ、女性の脳から男性の脳に変化する。
  • もちろん個人差はかなりあり、女性の10%は男性的な脳であり、男性の10%は女性的な脳である。
  • 性生活に関する脳の領域が男性は女性の2倍ある。映像を処理する領域は男性のほうがかなり大きく、性生活に関して男性は視覚的であると言える。
  • 異性の関心を引くための脳の領域は女性のほうがかなり広い。
  • 海馬(短期記憶を司る)は女性のほうが大きい。
  • 男性の脳のほうが数学・科学に優れている、ということはない。社会的・文化的な要因のようである。たとえばアイスランドでは女性のほうが数学・科学の成績が良い。それらは女性の領域と考えられている。

2006-08-20

加工食品は脳を飢餓状態にし肥満をもたらすとの仮説

加工食品には糖分が多く、食物繊維が少ない。100%果汁も含めてそうである。そういった加工食品の作用により脳が飢餓状態(=カロリー不足)と誤認識し、その結果肥満がもたらされるのではないか。そのような肥満に対する新たな仮説を、カリフォルニア大学サンフランシスコ校臨床小児科のロバート・ラスティグ教授が発表した。その論文は「Nature Clinical Practice: Endocrinology and Metabolism」誌の2006年8月号に掲載されている。

同教授はサンフランシスコのラジオ局KQEDのトークショー「Forum」に8月15日に出演し、その仮説の解説をおこなった。その音声はこちらでReal MediaのストリーミングおよびMP3のダウンロードで聞ける。医学用語が多く出て来ていて、その分野の語彙に触れる題材としていいように思った。以下は番組の内容をまとめたものである。

仮説の核心

  • 加工食品や果汁を多く摂ることでインシュリン濃度が上がっている人が多い。
    • 加工食品は糖分(砂糖あるいはコーンシロップとして)を多く含み、糖分はインシュリン分泌を促す。
    • 食物繊維はインシュリン濃度を下げるはたらきがあるが現代では食物繊維の摂取は非常に少ない。研究によれば昔は1日100gから300g摂取していたのだが、今では10g未満である。
    • 果汁(100%ジュース)は大量に飲むべきではない。果物をそのまま食べれば繊維が摂れるし、一度に大量に食べることができない。一方、果汁には繊維は含まれておらず、一度に沢山飲むことができ、大量のカロリーを摂取することになる。オレンジジュースの成分は主にショ糖とビタミンCであり、栄養的に価値はあまりない。
    • 6歳で体重100ポンド(45.4kg)という子供がいた。縦より横のほうが大きい状態である。炭酸飲料は飲んでいなかったが、オレンジジュースを1日に1ガロン(3.8リットル)飲んでいた。
  • インシュリン濃度が高いと脳内が飢餓状態になるのではないか(仮説)
    • 脂肪細胞はレプチンというホルモンを分泌しており、脂肪がどれだけ蓄積されているかを脳に伝えている。
    • 脂肪蓄積が一定以上あれば(=レプチン濃度が一定以上あれば)、通常の新陳代謝がおこなわれる。
    • 脂肪蓄積が一定より下がると(=レプチン濃度が一定より下がると)、飢餓状態と認識し、代謝を抑えて脂肪蓄積をおこなう。これはダイエットで体重を減らしてもすぐにもとに戻ってしまう理由である。
    • レプチン濃度が高くても、そう脳が認識せず、代謝を抑えて脂肪蓄積をおこなってしまう場合がある。レプチンの脳に対する作用が阻害されているとそうなる。
    • インシュリン濃度が高い状態が続くとレプチンの作用が阻害されるのではないかという仮説を立てた。
  • その仮説に対する疑問とそれへの回答
    • そのようなインシュリンの効果にはどんなメリットがあるのか?
      女性の思春期と妊娠中は脂肪蓄積を増やすためにインシュリン濃度が上がる。それらの時期に脂肪蓄積がおこなわれないと種が滅びてしまう。
    • 脳にインシュリンを直接投与すると食欲が抑えられるのではないか?
      それは、インシュリンの短期的効果を見たのであって、長期的効果は見ていない。ホルモンの短期的効果と長期的効果はほとんどの場合異なる。インシュリンがそうであっても不思議はない。たとえば副腎皮質ホルモンを考えてみよう。同ホルモンは感染や交通事故などの身体的ストレスへの対応のために分泌される。長期間同ホルモンにさらされると、うつ状態、潰瘍、体重増加などをもたらす。

糖分中毒

飢餓状態仮説とはすこし違うが、インシュリン濃度が高いと糖分が薬物中毒の薬物のように働くことが紹介されていた。

  • ニコチンやモルヒネは大脳の側坐核に作用し、側坐核はドーパミンに関係している。
  • ドーパミンの量が多いほど、心地よく感じる。
  • 食物摂取は心地よさをもたらす。
  • 動物実験でドーパミンを側坐核に投与すると食物摂取が増える。
  • 健常者であれば、インシュリン濃度が通常通りであり、インシュリンが増えるとドーパミンが減少する。
  • インシュリン濃度が高く、脳がインシュリン耐性を持っていると、インシュリンが増えてもドーパミンが減少しない。
  • その結果、食物摂取の心地よさが持続し、食べ続けることになる。
  • これは薬物中毒と同じメカニズムである。

果糖の害

これも仮説とは直接関係ないが、番組の中では果糖の害について詳しく述べていた。果糖はコーンシロップならびにテーブルシュガーの主要成分で、過剰摂取はいろいろな害をもたらす。コーンシロップは安価なことから様々な加工食品に使われている。また、ショ糖(砂糖)は消化により果糖とブドウ糖に分解された上で腸から吸収されるので、ショ糖を食べても結果的に同様の害があるのだろう。

  • 果糖はアルコールと同様に代謝される。
  • 果糖はインシュリンによる制御を受けることなく、腸から肝臓へ運ばれて代謝される。果糖はまず、アセチル・コエンザイムAになり、それからクレブス回路に入る。
  • アセチル・コエンザイムAが肝臓のクレブス回路で処理し切れない場合、以下のことが起こる。
    • 二量体化してマロニル・コエンザイムAとなる。これは膵臓のβ細胞に対して毒性があり、2型糖尿病の原因ではないかと疑われている。
    • 遊離脂肪酸となる。そして、遊離脂肪酸は:
      • アステローム性動脈硬化を起こす
      • 脂肪細胞に取り込まれて肥満の基となる
      • 肝臓に沈着して非アルコール性脂肪肝炎を起こす。炭酸飲料の飲みすぎで肝硬変を起こし、肝臓移植が必要になった15歳の患者がいた。

単語帳

subservient: 付随する

tantamount: 同等の, 等しい

cornerstone: 土台, 基礎

nucleus accumbens: (大脳の)側坐核(そくざかく)

leptin: レプチン

replete: 豊富な

sympathetic nerve: 交感神経

vagus nerve: 迷走神経。番組中では副交感神経(parasympathetic nerve)の意味で使っているようだ。迷走神経は副交感神経の1つではあるのだが、sympathetic nerveと対にして使うのは変ではないか。

recidivism: 転落,堕落

sickle cell desease: 鎌状赤血球貧血

cortisol: 副腎皮質ホルモン(hydrocortisoneとも呼ばれる)

ostracize: 仲間はずれにする

unbeknownst: (unbenownとも)知られない, 未知の; 気づかれない

sucrose: ショ糖

sloth: ナマケモノ; 怠惰, 無精

fructose: 果糖

athetyl coA: アセチル・コエンザイムA

atherogenic: アテローム性動脈硬化を起こす

substrate: 基質: 酵素の作用で化学反応を起こす物質

non-alcoholic steato hepatitis: 非アルコール性脂肪肝炎

2006-08-18

Amazon.comのシステムは広義のSOAでできている

ウェブサイトACM Queue上のACM Queue CastというポッドキャストAmazon.comのCTOがインタビューを受け、Amazon.comのシステム・アーキテクチャについて語っている。リンク先には音声ファイルと共に、筆記録もあるので勉強にもいいと思う。私は以下の点が印象に残った。

  • アマゾンのシステムは広い意味のService Oriented Architecture (SOA)でできている。SOAと言うと今はXMLを使ったウェブサービスを構成要素することが多いが、そういう狭い意味ではなく、疎結合された多くのサブ・システムによって構成されているという意味である。
  • たとえばDBMSに直接アプリケーションがアクセスすることはなく、データ・サービスのAPIを通じてアクセスする。そのAPIはXMLを使ったウェブサービスの場合もあれば、別の技術に基づいたプロトコルで提供されていることもある。
  • 各サービスを提供する部署は、サービスの開発・拡張・保守をおこない、また運用もおこなう。このため、開発陣には運用・保守に念頭を置いたサービス開発をおこなう動機付けがある。そして、サービスの性能・可用性などすべてに責任を負っている。どんなハードウェア・ソフトウェア技術を使っているかに関わりなく、最終的にサービスを期待通りに提供する責任がある。
  • 大規模なシステムでは常にどこかが異常動作をしており、それを念頭に置いた設計をしなければならない。
  • 大規模システムでは、世間で流通しているソフトウェア部品がそのまま使えることはあまりなく、カスタマイズやエンジニアリングを施さなければならない。

2006-08-17

MIT製のコンピュータ制御の精密工作機械セット「ファブラボ」

マサチューセッツ工科大学(MIT)のビット原子センター(The Center for Bits and Atoms)は、レーザーカッターや精密研磨機などの精密工作機械をセットにし、全体をコンピュータ制御にした「ファブラボ」(Fabrication Laboratory略してFab Lab)を開発している。ファブラボは工業製品のプロトタイプを作るための機材をセットにしたものと言える。ファブラボのセットのコストは2万米ドルほどで、研究の一環として同センターはインドやガーナ、北極圏などに提供しており、Wired Newsに2004年9月10日付けでファブラボの紹介記事が出ている。Wired Newsでは2005年11月にも取り上げており、日本語の記事はここで読める。

IT Conversationでファブラボの講演が配信されている。2005年10月のPOPTech 2005でのものである。講演者のファブラボ主唱者はファブラボを工業インフラが整っていないところに配置して、デジタルデバイドならぬ工業化デバイドを埋めるということをめざす活動をしている。その中で得た知見として、自己表現の手段として、自分だけのためのものをファブラボで作る、という人が場所を問わず見られたことが紹介されていた。そして、講演者はファブラボをミニコンピュータになぞらえている。ミニコンピュータはメインフレームだけの時代に比べてコンピュータをより身近にした。ファブラボにより、従来は個人では不可能だった種類のものづくりが身近にになった。近い将来、個人向けのファブラボができるかも知れないとも講演の中で述べている。

2006-08-13

RSSに関心があるならAtomに注目するべき

RSSと同様に、ブログやニュースサイトの記事の一覧を示すデータ形式として、Atomという形式が使われている。普及度はRSSのほうが高く、Atom 1.0とRSS 2.0では記述能力にそれほど差がないことから、新たにRSS的データを生成するのであればRSS 2.0だけを考えればいいのではないかと思っていた。

しかし、IT ConversationsでAtom As A Case Studyという講演を聞き、私の認識は間違っていたことが分かった。この講演は2006年3月に開催されたETech 2006でおこなわれたものである。以下は同講演の概要である。

  • RSSは仕様の凍結が宣言されている。仕様の明確化はおこなってもよいが、拡張をほどこすのであれば、「RSS」という名前とは別の名前を使わなければならない。
  • RSSには幾つも改善すべき点があるので、RSSではない、新たな標準を策定しようとIETF標準化作業が始まった。Atomによる記事一覧配信(syndication)の標準化作業は完了し、RFC 4287となっている。
  • RSSには明確に定義されていない点が幾つかある。たとえば、RSS 2.0でポッドキャストを配信する場合、1つのエントリに複数のenclosure要素を入れた場合の挙動は未定義である。
  • RSSではできないことも幾つかある。
    • 国際化URL(IRI)を含めること。
    • 相対URLを含めること。ブログ記事中の画像は、RSS中では絶対URLになっていなければならない。ブログサイト上は相対URLでも構わないのだから、このために余計な処理が必要になる。HTML中で相対URLが許されているのにRSS中で許されないの困ったことである。
  • RSSでは不便な点もある。
    • 各エントリにグローバルに一意のIDを付けることは必須となっていないので、複数のRSSフィードを重複を避けて1つにまとめる処理に少し手間がかかる。
  • 標準化の議論の中で上記の問題はすべてクリアされた。多くの人が様々な観点で検討・議論することにより標準がまとまった。IETFでの標準化作業のメーリングリストでは1万7944通のメールがやりとりされ、それは60メガバイト以上になった。
  • Atom形式にはバージョン番号を示すところがない。なぜなら、バージョン番号を不要とするように標準を定めてあるからである。具体的には、Atomデータを解釈するプログラムは、自分が知らないタグは無視するように定めている。これはHTMLについておこなわれていることと同じである。ウェブブラウザーは未知のタグは無視する。このしくみがあるので、HTMLは下位互換性を実現できている。同様のことがAtomについても言える。
  • 現在ではほとんどのRSSリーダーがAtom 1.0をサポートしている。ただし、Bloglinesはサポートしていない。*1
  • RSSに加えてAtomでも記事配信をおこなうウェブサイトが増えている。BloggerはまだAtom 0.3という非常に古いバージョンを使っている。*2
  • ブログの記事を編集・投稿するためのアプリケーションがあり、それは、ブログサービスの投稿APIを使って記事を投稿・更新する。現在はそのAPIは標準化されていないので、ブログ編集アプリケーションを使う際はブログサービスの種類を選ばなければならない。
  • 多くの人は現在のブログ編集のインターフェースに満足していない。投稿APIが標準化されれば、ブログ編集ソフトが編集機能で競争できるようになり、使い勝手が大きく向上することが期待できる。

講演の概要は以上で、以下は私の考えである。標準化団体のお墨付き自体には本質的価値はないが、標準化作業で多くの人により加えられる考察・議論・入力には大いに価値がある。RSSは標準化団体による標準化作業を経ていないので、曖昧な点があっても不思議はない。RSSの仕様が固定されている一方で、IETFで活動中のAtomコミュニティがあるという状況では、Atomに注目し続ける必要があると思う。そして、長期的にはAtomにより比重が移っていっても不思議ではない。

*1:2006年6月にサポートされるようになった。

*2:2006年8月現在もそのままである。

2006-08-12

特殊な鍵を挿してたたくだけのピッキング「鍵たたき開錠」

概要

熟練を要せず、特殊な鍵を鍵穴に挿し、それをドライバーの取っ手などでたたいて、数秒で鍵を開けてしまう「鍵たたき開錠」とでも言うべき手法がある。その手法について警告を発しているグループ(後述のToool)によれば、従来から安全性が低いとされている種類の鍵だけでなく、ディンブル鍵などの安全性が高いとされている鍵にも適用できるとのことである。更に、この手法は高価な鍵に対してのほうが安価な鍵に対してより有効なことが多いそうだ。高価な鍵は加工精度が高く、それのために、この手法に弱くなってしまっていると言う。この手法では開けられない鍵も存在するが、まだ少ないようだ。

手法の名前

この手法は、鍵をたたくことから英語では「lock bumping」あるいは「key bumping」と呼ばれている。日本語では「鍵たたき開錠」と呼ぶのがいいのではないかと思う。そして、この手法で使われる特殊な鍵は「bumpkey」と呼ばれている。このブログ記事の中ではバンプ鍵と呼ぶことにする。

手法のポイント

この手法のポイントは、以下の点である。

  • ディンプル鍵など安全性が高いとされているものを含めて多くの種類の錠前に適用できる
  • この手法で使う特殊な鍵、バンプ鍵を普通の鍵から比較的容易に作ることができる
  • バンプ鍵されあれば、それを使って開錠をおこなうのに熟練を要しない

情報源

鍵たたき開錠について私は最初GIGAZINEで8月7日に紹介されているのを見て知った。2005年4月にオランダのNova TVで、この手法のリポートがあり、最近そのリポートの英語字幕付きのものが、YouTubeで閲覧可能になった。GIGAZINEの記事では、そのYouTubeの映像が見られるようになっている。かなり衝撃的な映像である。その映像へのリンクをこのブログ記事にも載せておこう。これである。

このYouTubeの映像は、ネット記事の推奨サイトdiggでも8月6日に紹介され、英語圏でも多くの人の注目を集めている。

Nova TVのリポートではオランダのピッキング愛好家団体Toool(The Open Organization Of Lockpickers)の人が、この手法について解説していた。Tooolは2005年1月付けで、この手法についての報告書「Bumping locks」を公開している。

Nova TVのリポートの放映後、2005年7月にオランダでWhat's the Hackという会合があり、そこで、Tooolの人達がこの手法について講演およびデモをおこなっている。その映像が、ここにある。この中では、Nova TVのリポートも途中で流されており、これを見るならNova TVの映像は見る必要はない。後半は少し間延びした感じだが、全体としては情報量も多く、とても興味深い。この講演について報告したブログ記事が2005年8月にdiggで取り上げられている。

What's the Hackでの講演の内容

講演ではまず、この手法のしくみについて詳しく説明している。Nova TVのリポートで出てきたビリアードの玉の例えは、リポートの中ではあまり意味が分からなかったが、講演でははっきり分かった。

Nova TVのリポートではバンプ鍵さえあれば非常に簡単に実行できるような印象を受けるが、実際には熟練は必要ないものの、ある程度の慣れと知識は必要なようだ。そして開錠に必要なコツは錠前ごとに異なると思われる。

ヤスリを使って、通常の鍵からバンプ鍵を作るデモがおこなわれていた。2つの錠前の鍵について、講演の場でそれぞれ2分ほどヤスリをかけてバンプ鍵にし、鍵たたき開錠ができることを示していた。

鍵たたき開錠がおこなえないとメーカーが主張しTooolがそれを確認した錠前が幾つかある。そのリストはここにある。講演の中では、なぜそれらの錠前が鍵たたき開錠に対して耐性を持つのかの説明もしている。

手法の歴史

Tooolの報告書によれば、鍵たたき開錠には50年以上の歴史があると言う。しかし、最近までは適用できる鍵の種類は多くなく、使うにはある程度の熟練を要した。しかし、最近の改良によりほとんどの種類の鍵に適用できるようになり、また、熟練も必要なくなった。Tooolのメンバーは現在の形の手法を2004年にドイツのピッキング愛好家から知ったそうだ。

バンプ鍵の制作・入手

バンプ鍵はすべての切り欠きが最大限になっている鍵である。合鍵を作る機械は、鍵の各切り欠きの深さを指定するようになっていて、バンプ鍵を作る際は、すべての切り欠きを最大限に指定する。つまり、合鍵を作る材料と機材があればバンプ鍵が作れるのである。また、すべての鍵はバンプ鍵に「改造」することができる。

ただし、これは従来のバンプ鍵で、これでは開錠できる錠前は限られ、開錠するのに熟練が必要だった。

最近知られるようになった改良とは、バンプ鍵が本来より0.5mmほど(この長さは錠前によって違う)深く挿せるようにすることである。具体的には上記のバンプ鍵の以下の2箇所を0.5mmほどヤスリで削るのである。

  • 先端
  • 錠前に当たってそれ以上深く挿されないようにしている、鍵の「肩」

先に挙げたWhat's the Hackでの講演では、バンプ鍵が動作するしくみや、具体的な作り方が説明されている。Nova TVのリポートではヤスリで削る工程が紹介されていない。たぶんわざと紹介しなかったのだろう。

なお、Nova TVのリポートではバンプ鍵がインターネットで販売されていると報じている。

2007-02-14追記

バンプキーと日本のセキュリティというページに鍵たたき開錠の仕組みが分かりやすく図解されている。ディンプル鍵で鍵たたき開錠ができることを実証した報告も載っている。

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