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2006-08-20

加工食品は脳を飢餓状態にし肥満をもたらすとの仮説

加工食品には糖分が多く、食物繊維が少ない。100%果汁も含めてそうである。そういった加工食品の作用により脳が飢餓状態(=カロリー不足)と誤認識し、その結果肥満がもたらされるのではないか。そのような肥満に対する新たな仮説を、カリフォルニア大学サンフランシスコ校臨床小児科のロバート・ラスティグ教授が発表した。その論文は「Nature Clinical Practice: Endocrinology and Metabolism」誌の2006年8月号に掲載されている。

同教授はサンフランシスコのラジオ局KQEDのトークショー「Forum」に8月15日に出演し、その仮説の解説をおこなった。その音声はこちらでReal MediaのストリーミングおよびMP3のダウンロードで聞ける。医学用語が多く出て来ていて、その分野の語彙に触れる題材としていいように思った。以下は番組の内容をまとめたものである。

仮説の核心

  • 加工食品や果汁を多く摂ることでインシュリン濃度が上がっている人が多い。
    • 加工食品は糖分(砂糖あるいはコーンシロップとして)を多く含み、糖分はインシュリン分泌を促す。
    • 食物繊維はインシュリン濃度を下げるはたらきがあるが現代では食物繊維の摂取は非常に少ない。研究によれば昔は1日100gから300g摂取していたのだが、今では10g未満である。
    • 果汁(100%ジュース)は大量に飲むべきではない。果物をそのまま食べれば繊維が摂れるし、一度に大量に食べることができない。一方、果汁には繊維は含まれておらず、一度に沢山飲むことができ、大量のカロリーを摂取することになる。オレンジジュースの成分は主にショ糖とビタミンCであり、栄養的に価値はあまりない。
    • 6歳で体重100ポンド(45.4kg)という子供がいた。縦より横のほうが大きい状態である。炭酸飲料は飲んでいなかったが、オレンジジュースを1日に1ガロン(3.8リットル)飲んでいた。
  • インシュリン濃度が高いと脳内が飢餓状態になるのではないか(仮説)
    • 脂肪細胞はレプチンというホルモンを分泌しており、脂肪がどれだけ蓄積されているかを脳に伝えている。
    • 脂肪蓄積が一定以上あれば(=レプチン濃度が一定以上あれば)、通常の新陳代謝がおこなわれる。
    • 脂肪蓄積が一定より下がると(=レプチン濃度が一定より下がると)、飢餓状態と認識し、代謝を抑えて脂肪蓄積をおこなう。これはダイエットで体重を減らしてもすぐにもとに戻ってしまう理由である。
    • レプチン濃度が高くても、そう脳が認識せず、代謝を抑えて脂肪蓄積をおこなってしまう場合がある。レプチンの脳に対する作用が阻害されているとそうなる。
    • インシュリン濃度が高い状態が続くとレプチンの作用が阻害されるのではないかという仮説を立てた。
  • その仮説に対する疑問とそれへの回答
    • そのようなインシュリンの効果にはどんなメリットがあるのか?
      女性の思春期と妊娠中は脂肪蓄積を増やすためにインシュリン濃度が上がる。それらの時期に脂肪蓄積がおこなわれないと種が滅びてしまう。
    • 脳にインシュリンを直接投与すると食欲が抑えられるのではないか?
      それは、インシュリンの短期的効果を見たのであって、長期的効果は見ていない。ホルモンの短期的効果と長期的効果はほとんどの場合異なる。インシュリンがそうであっても不思議はない。たとえば副腎皮質ホルモンを考えてみよう。同ホルモンは感染や交通事故などの身体的ストレスへの対応のために分泌される。長期間同ホルモンにさらされると、うつ状態、潰瘍、体重増加などをもたらす。

糖分中毒

飢餓状態仮説とはすこし違うが、インシュリン濃度が高いと糖分が薬物中毒の薬物のように働くことが紹介されていた。

  • ニコチンやモルヒネは大脳の側坐核に作用し、側坐核はドーパミンに関係している。
  • ドーパミンの量が多いほど、心地よく感じる。
  • 食物摂取は心地よさをもたらす。
  • 動物実験でドーパミンを側坐核に投与すると食物摂取が増える。
  • 健常者であれば、インシュリン濃度が通常通りであり、インシュリンが増えるとドーパミンが減少する。
  • インシュリン濃度が高く、脳がインシュリン耐性を持っていると、インシュリンが増えてもドーパミンが減少しない。
  • その結果、食物摂取の心地よさが持続し、食べ続けることになる。
  • これは薬物中毒と同じメカニズムである。

果糖の害

これも仮説とは直接関係ないが、番組の中では果糖の害について詳しく述べていた。果糖はコーンシロップならびにテーブルシュガーの主要成分で、過剰摂取はいろいろな害をもたらす。コーンシロップは安価なことから様々な加工食品に使われている。また、ショ糖(砂糖)は消化により果糖とブドウ糖に分解された上で腸から吸収されるので、ショ糖を食べても結果的に同様の害があるのだろう。

  • 果糖はアルコールと同様に代謝される。
  • 果糖はインシュリンによる制御を受けることなく、腸から肝臓へ運ばれて代謝される。果糖はまず、アセチル・コエンザイムAになり、それからクレブス回路に入る。
  • アセチル・コエンザイムAが肝臓のクレブス回路で処理し切れない場合、以下のことが起こる。
    • 二量体化してマロニル・コエンザイムAとなる。これは膵臓のβ細胞に対して毒性があり、2型糖尿病の原因ではないかと疑われている。
    • 遊離脂肪酸となる。そして、遊離脂肪酸は:
      • アステローム性動脈硬化を起こす
      • 脂肪細胞に取り込まれて肥満の基となる
      • 肝臓に沈着して非アルコール性脂肪肝炎を起こす。炭酸飲料の飲みすぎで肝硬変を起こし、肝臓移植が必要になった15歳の患者がいた。

単語帳

subservient: 付随する

tantamount: 同等の, 等しい

cornerstone: 土台, 基礎

nucleus accumbens: (大脳の)側坐核(そくざかく)

leptin: レプチン

replete: 豊富な

sympathetic nerve: 交感神経

vagus nerve: 迷走神経。番組中では副交感神経(parasympathetic nerve)の意味で使っているようだ。迷走神経は副交感神経の1つではあるのだが、sympathetic nerveと対にして使うのは変ではないか。

recidivism: 転落,堕落

sickle cell desease: 鎌状赤血球貧血

cortisol: 副腎皮質ホルモン(hydrocortisoneとも呼ばれる)

ostracize: 仲間はずれにする

unbeknownst: (unbenownとも)知られない, 未知の; 気づかれない

sucrose: ショ糖

sloth: ナマケモノ; 怠惰, 無精

fructose: 果糖

athetyl coA: アセチル・コエンザイムA

atherogenic: アテローム性動脈硬化を起こす

substrate: 基質: 酵素の作用で化学反応を起こす物質

non-alcoholic steato hepatitis: 非アルコール性脂肪肝炎

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