フェイヴァリットリスト(海外小説編)

K:カイエ姫たまからフェイヴァリットリスト海外小説編を頂きました。以下に紹介を。なお、コメントはカイエ姫たまから頂いたものを掲載いたします。

城 (新潮文庫)

城 (新潮文庫)

  • 僕のリストアップ作品中、いわゆる「古典名作文学」に相当するのが本作と『八月の光』かな?Kは「永遠の到着者」なのです。池内紀氏による新訳版の『城』(ISBN:4560047030)が読みたくて仕方ありません。

白の闇

白の闇

  • 極限状況下、剥き出しになる本性。

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • イシグロによる「探偵小説」。闇のそのさらなる最深部へと分け入っていく道程に圧倒されました。イシグロが以前、探偵小説の構造について「謎がひとつ解けたときに世界の緊張も同時に緩和される」(曖昧)みたいなことを述べていたんだけど、本作では「謎」が解明されても、混沌と闇は深化するばかりです。

八月の光 (新潮文庫)

八月の光 (新潮文庫)

  • 出ました、フォークナーです(笑)。フォークナーの名言に「矛盾は辺境に集約される」というものがあるのね。アメリカにおいて「矛盾」が最も顕わに集約された「辺境」=「南部」を描き続けた作家です。一人の男が背負わされた、自らではどうすることもできない「血」という矛盾をあらゆる小説技法を駆使して抉出します。

  • 「マキシマリスト」などと称される、重厚長大な作風を持ち味とするポストモダン文学の代表的な作家の一人であるジョン・バース。と言っても、この作品は難解なものではなく(長大ではあるけれどね(笑))、物語的興趣や様々なガジェットに満ちた「ポカホンタス神話」の語り直しです。ただし、プロットは非常に複雑なので油断はできませんが(笑)。

エドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死

エドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死

  • 子どもの頃を思い出してみて。何があるわけでもないのに、「世界」に接するとき得体の知れない恐怖を覚えたよね。と同時に、根拠のない万能感もあって。恐怖と万能感ゆえの輝きに満ちた子どもの目にだけ映る世界を細緻・精密に描写していきます。この作家の描写力ってすごいよ。

ビッグ・ノーウェア 上 (文春文庫)

ビッグ・ノーウェア 上 (文春文庫)

ビッグ・ノーウェア 下 (文春文庫)

ビッグ・ノーウェア 下 (文春文庫)

  • もはや現代ノワールの古典とも呼びうるエルロイの連作「暗黒LA四部作」。その第二作目。プロットの構築性、衝撃度、救いのなさなど四部作中、最高の完成度だと思います。コロ姫は、『ブラック・ダリア』(ISBN:4167254042)は既読なんだよね?このシリーズ、コンプしましょうね?(笑)

偶然の音楽

偶然の音楽

  • 愛する作家の一人、オースター。僕にとってのベストは、現在までのところこの作品かな。

幽霊船 他1篇 (岩波文庫 赤 308-5)

幽霊船 他1篇 (岩波文庫 赤 308-5)

  • 僕がこの作品を読んだのは、上記の岩波文庫ではないのです。『集英社版 世界文学全集39 メルヴィル』(アマゾンで検索したけど、ヒットしないね)で読みました。もしこの短編を読む機会があったら絶対に土岐恒二氏の訳で読んで欲しい(ちなみに岩波文庫版は違う方の訳です)。繊細で本当に素晴らしい訳だから!最後の箇所なんかはテキストに抜粋してしまうほど好きなのです(笑)。少しでもこの繊細な訳に触れてもらおうと思い、抜粋してあったテキストを添付しました(笑)。よかったら一読を。*1

  • ここで描かれるのは、寺山修司曰くの「不貞」*2なのかもしれない。

*1:頂いたテキストを拝読いたしました。
メルヴィル自体が未読の作家さんなのですが、姫たまのおっしゃるように本当に素晴らしい文章ね。流れ込んでくるような日常の小さな不幸。それが人知れずひっそりと処理される場所。全文を読んでみたくなりました。

*2:『地球をしばらく止めてくれ ぼくはゆっくり映画を観たい』(ISBN:4041315190)収録、「幸福論のすりかえ」参照のこと。