稲妻



稲妻(1952年 大映 監督:成瀬巳喜男 出演 高峰秀子、三浦光子、村田知栄子、丸山修 他)
林芙美子の原作を成瀬巳喜男高峰秀子のコンビで描いた作品。52年の作品なので高峰秀子は当時28歳。その後の作品から見始めた僕にとってはとても若々しく凛とした印象で、これは役柄もあるのか、放浪記での印象が強すぎるのか、とても魅力的に映った。ストーリーとしては、複雑な家庭環境の中でいくつものゴタゴタに巻き込まれながら主人公が自立していく姿を描くヒューマンドラマ。偶然なのかもしれないけれど、成瀬巳喜男監督はお金を上手く使っている気がする。放浪記でも乱れるでもそうだけど、当時の時代背景を表現する上では貧しさが欠かせないと思う。成瀬監督はお単純に貧困を描くだけでなく、生活感や緊迫感、欲望や倫理、人間の強さや弱さなど、リアルな人の心を描く上での必要な要素としてお金を使っているように感じる。ありそうで無い、いや、やっぱり普通にあったのかな、という人間模様をリアルに描いていく作品で、こういうのが成瀬監督の良さなのかな。と思い始めました。派手さは無いけれど、心に残る映画です。