ゾウの時間 ネズミの時間 −サイズの生物学

こんにちは。

今日は読書感想文です。



ゾウの時間 ネズミの時間 −サイズの生物学 本川達雄

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)



新書なのですが初版が20年前で、もはや古典の部類に入ります(友達が教えてくれましたw)

ただ、この中身を書評しようとするとかなりの知識能力(特に数学を簡単に説明する能力)と要約力が必要みたいです。

なのでどこまで紹介できるかは保証の限りではありません。でも面白かったです。




「サイズの生物学」とある通り、動物(生物)はサイズが違うと行動速度も範囲も異なり寿命も異なります。ところが哺乳類を形作ってる細胞の大きさはほとんど同じなのです。また一生に打つ心臓鼓動総数も同じなのです。

サイズを考えて見える動物(生物)のデザインを理解し、その動物(生物)が成り立ってる論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書…だそうです。




生物の時間は、体重の1/4乗に比例するのだそうである。これから他の時間に関するものを組み合わせて計算すると、哺乳類はどの動物でも、一生の間に心臓を20億回打ち、5億回息をスーハーと吸ってるらしい。



進化論の中に「島の法則」というのがあるらしい。

島に閉じ込められた動物は、大きいものは小さく、小さいものは大くなるらしい。(化石でわかるらしい)ゾウもネズミも「普通」の動物になりたくなるみたいだ(安全で閉鎖した空間では)。





次に標準代謝量(=基本的なエネルギー消費量、人間でいうところの基礎代謝量のこと)についてだが、これが不思議なことに体重の0.751乗に比例するというのだ。

つまり、3/4乗に比例すると言っていい。

これが不思議なことに、単細胞生物から変温動物も同じく体重の3/4乗に比例しているのである。

生命の設計原理と呼んでいいものだと書いてた。もっと教科書に載っていいのではないかと。





食事量だが、体重の0.7〜0.8乗に比例している。つまり体重が増えるほどには、食べる量は増えないということらしい。

200gのハツカネズミで、4日もあれば自重と同じだけのえさを平らげる。その一方、ウシは体重450kgに与える飼料は1日12.3kg。自重と同じえさを食べきるのに1カ月ちょっとかかる計算になる。




ウシを食べる贅沢という話がある。

一定の量のえさで体組織をより多く増やす「組織生産機械」と動物をみなしていくと、恒温動物ははなはだ効率が悪く、ほとんどが燃焼に使われてしまっているらしい。

マックスクライバーいわく

「ここに10トンの干し草があるとする。これを500kgの牡牛2頭に食べさせても、体重2kgのウサギ500匹に食べさせても結果は同じ。サイズに関係なく、0.2トンの肉が新たにでき、6トンの糞の山もできる。ただし、ウサギは草の山を3カ月で食いつくすが、ウシは14カ月かかる。

同じ草をイナゴに食べさせたとしよう。体重1gのイナゴ100万匹、9か月で草の山がなくなり、200万匹(2トン)の新しく生まれたイナゴと、6トンの糞の山ができることになるであろう」


少ないえさで肉をたくさん作りたいのなら変温動物は恒温動物の10倍の収穫があるのである。ウシを飼うというのは時間的にもエネルギー的にもぜいたくな話だということであった。




こんな具合にいろいろと数学的な検証が行われていくのである。

レビューを書かれてる方には「根拠が薄い」的な評価の方もいらしたが、これに根拠の論文でも載せられたらきりがないと思う。




5章は「走る・飛ぶ・泳ぐ」で、移動距離と酸素消費量と体重から「コスト」を出してサイズと比較してある。



6章は「なぜ車輪動物がいないのか?」

世の中にあるものは生物が発明した物の焼き直しがすべてらしい。そのなかで「車輪(スクリュー・プロペラ)」だけは人間オリジナルだ…らしい。

なぜいないのだろう? その説明はなるほどって感じであった。



厳密に言うとバクテリアの仲間にはスクリューを持っているものがいるらしいのだ。

水中の水素濃度差でまわしてるらしい。



8章「呼吸器系や循環器系はなぜ必要か?」

単細胞生物は浸透と循環で酸素とか栄養を回せるからいらないのだそうな。それが厚みができてくると必要になるらしい。循環器はあるが呼吸は皮膚呼吸なミミズは、呼吸器官がない故あれ以上太くはなれないのだそうである(長くはなれるので3mってのもいるって書いてた)




動物の建築法と植物の建築法の違いも面白かった。

動物は外骨格とか内骨格をとる。昆虫のように「殻」で骨格を形成したのが外骨格である。これには無数の気管が開いており内部へ直接酸素交換するようになっている。その先は各細胞まで細かく分かれてるのだそうな。

問題は脱皮の時だ。その期間まで丁寧に脱がないと内部を自己破壊しかねないのだそうな。




植物の建築法は細胞の周りをセルロースで固めたレンガのようにどんどん積む方式なので、実は大きさの限度があるようでないのではないかと書いてあった。

またこのセルロースをなぜだか分解する機能(酵素)を持った動物が存在しないのだ。ウシやヒツジは、胃の中にバクテリアを潜ませ反芻でまかなってるらしい。



また、昆虫といえば「変態」だが、なぜかというのを成長するのに比較的手に入りやすい葉っぱ類を食べて育つ時期と、繁殖のために葉っぱのように重くエネルギー変換の悪い食事をせずにかつ移動しやすいようになる時期と人生を分けているのだろうと分析する。




このあと「動かない動物」「棘皮(きょくひ)動物ーちょっとだけ動く動物(ひとでよかウニみたいなの)」と続いていく。




かなり面白かったとこだけを書いてみたが、書きそびれたとこだらけであった。

いや、面白かった。(しんどかったけど)




それにしてもここまで読んでくださった、あなた。本当に感謝してます、こんなつたない文章を。

それではまたね。