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辺境の偏屈屋の日記

2011-05-25

地盤の話(その3)

舞浜が高級住宅地としてのブランド地域だと、今回の震災被害の報道で知りました。
雑誌などでホームイルミネーションが紹介されたりしますが、私が東京に住んでいた頃には、高級住宅地として知られていたことはないように思います。東京デイズニーランドのあるところ位の印象です。
もっとも私が東京に住んでいたのは、はるか20年以上も前のことです。

その頃、東京デイズニーランドができて、ウオーターフロントという言葉が全国的に脚光を浴びるようになり、地方都市でも海岸線の街の活性化が図られたりしました。
舞浜のみならず浦安周辺は、土地は埋め立て地盤ですが都心に近いという交通の便もあり、地価が上昇していきました。バブル全盛期でもありました。

浦安や、南葛西、辰巳、豊洲などの埋め立てが進み、中には住宅に不向きな倉庫街とし街づくりが行われるのだろうと思っていた場所が、今では大規模団地や、マンションが建つようになりました。地盤の悪さよりも都心へのアプローチが良いことが評価され、都心部のベッドタウンとしてたくさんの住居が供給されていました。


その頃私は乏しい不動産の知識しか持ち合わせていませんでしたが、浦安、木場、辰巳、豊洲等にかけて、住宅地としては地盤に難がある地域と理解していました。


当時も埋め立て地の液状化現象ということは、時折問題になり、耳にする機会も少なくありませんでした。
マンションを検討していた当時の会社の先輩が、松戸や流山の方が、浦安近辺よりも、安全だと言って抽選会に参加していました。(当時は販売住戸数に対して希望者が10倍以上などというマンションが珍しくありませんでした。竣工時点で完売です。うらやましい次第です)
浦安周辺のマンション価格が高騰していたため、この先輩は価格の面で選んだ面があるかとは思いますが、一般の方でも埋め立て地の地盤が悪いことは常識に近かったものと思います。


埋立地等の液状化が大々的に問題になったのが、16年前の阪神淡路大震災の時です。
阪神淡路大震災では神戸のポートアイランドや六甲アイランドの液状化による被害が大きく報道されました。
あの時は、埋め立て地の危険性が大きく報道されました。マンションなどの建物は杭を打って足元を補強しているから耐震の面では問題がなくても、周辺地盤は砂と水が分離して地盤の沈下等が生じ、、ライフラインの復旧に時間がかかると言われていました。


今回の東日本大震災で、液状化現象が広範囲に生じて、埋め立て地や砂地だった地域に被害を及ぼしています。

中には街の大きな範囲で被害が出ており、個人の力では何ともしがたい状況に思えますが、その報道の仕方と住民の認識に、私は違和感を覚えました。


それは、住民の方々が自分の住む地域特性や地盤の件について、素人であることを殊更アピールして、こんな場所とは知らなかった、素人には分からない、自分達には責任がないのに被害を受けた。市も分譲を後押ししていた。それなのに何もしてもらえないといった主旨のことを話している番組を見た時です。

マスコミも、住民のそうした感情に取り入ることで番組を作り、憂国の士のように悲憤慷慨することで、正義の仮面をつけて、自らの立場を正当化しているようです。お手軽な正義感を匂わせる報道姿勢は、上辺だけの薄っぺらなものに感じました。民主党政権のポピュリズムと変わるところがありません。


前日も触れましたが、不動産の購入の際には不動産業者は法規をはじめとして詳細な説明を購入者に行います。
万一、契約日までそうした知識を仕入れずにきてしまったにしても、契約の前には行われる重要事項の説明の際に、土地が抱えている問題等知る機会となります。

しかし、高価な不動産購入に際して、お客様はハウツー本や購入ガイドブックのような書物を購入して熱心に勉強されている方が大変多いです。(中には偏った見方をする著者もいるので、私は全般に漏れが少なく満遍なく客観的な説明がなされている本のコピーを差し上げたり、本をお貸ししたりしています。問題意識を共有すると、話が早いので、その本に沿った質問を頂いたりすると、お知りになりたいポイントがどこにあるかが明瞭なため、補足説明も楽になります)
お客様は真剣ですので、時に素材や設備の新商品などは、お客様の方が細かな情報をお持ちの場合もあり、教えていただくこともあります。

住宅の知識以外にも、現在は地盤調査を必ず行いますので、軟弱地盤の改良方法や、不同沈下や液状化等の問題についても、従前と比べてはるかにたくさんの情報をお持ちです。

地盤調査の結果、地盤に適した地盤改良工法と基礎工事を行うことが、建物を建設する業者に課せられています。
そのため、地盤調査結果の報告と、それに対応する補強工事等の説明を、お客様に建設する住宅会社等から行われますので、この時点で地盤に関しての豊富な知識を得ることができます。
私の周りの不動産を求めるお客様の実像は、以上のような環境にあります。


それに比して、先般のTV番組での液状化の被害者の方達の発言が、少数意見なのか大勢なのかは、TV局の視点が定まっていなかったので何とも分かりませんが、この番組での浦安の住民の方達が、自分達の住まいが地震でこうなるとは知らなかった。液状化について認識していなかったというのに、大変違和感を覚えたのです。


どうして、こういう事態がおきるのだろうか。
自覚が乏しいのは何故だろうか。
自己責任感が欠けているように見えるのは何故だろうか


何とか補償を得ようと、知識が乏しい一般人としての立場をアピールしている面もあるかと思います。

ただ、仮に多くの方が本当に報道で見るような知識のまま家を求めているとしたら、自己責任として突き放すだけでは、問題の解決になりません。
自治体に文句を言っても、その切り口の切れが悪ければ真剣に受け止めてもらえないでしょう。国会議員の中に救済を求める声も上がっているようですが、優先順位からすると後回しにされそうな気配でもあります。外見上建物の破壊が顕著に見えないため、そのダメージは過小評価されやすく、被害者の方はストレスの多い状態で長期間ほったらかしにされる恐れもあります。
以下問題点を整理したいと思います。



「浦安市も積極的に分譲を勧めた」ので市にも責任があると意見を述べられていた方がいます。

開発主体が自治体関連の開発公社や自治体主導の区画整理組合等であれば、自治体にも責任を求めることができるでしょう。
ただし、地盤に応じた補強工事を行うのは建設会社の責任ですので、液状化への対応まで建設会社が負うべき地盤対策に入るかどうかが争点になりそうで、判断が分かれそうです。

自治体主導の開発地であれば、住民も責任を求めているでしょうから、おそらく民間主導の宅地開発等だったろうと思います。

その場合、自治体も容認していたはずだと言われても、建築基準法や都市計画法等法規を遵守していれば、容認する以外にないでしょう。

民間が法令上問題ない方法で開発・分譲していれば、自治体が口を挟む余地は少ないですし、そんな余地が多ければその方が問題です。
その場所が、仮に軟弱地盤であっても、そこはあまり良い土地でないので購入を熟慮するようにとか、買わない方が良いなどと、民間企業の販売活動を邪魔するとしたら、これも問題です。

販売する業者側の説明責任、販売姿勢に問題があったということも考えられなくはありませんが、販売姿勢よりも、購入側がある種の過熱状態にあったことの方が要因としては大きいと思います。

日本人は乗り遅れることを嫌います。
物件が少ない中で、応募者が多ければ、とにかく他人に先んじて購入したいという状況になり、さほど熟慮することなく購入まで行ってしまうということが考えられます。
何せ日本人に対する決め台詞は、「皆さん、そうなさっていますよ」、「こちらを選ばれる方がほとんどですよ」
の類です。

また、選ばなかった方も、自分の意志で選ばなかったのではなく、選ぶことのできない状況にあった場合が多く、選んだ方と同様の立場にあれば、似たような行動を取っていた場合が多いでしょう。

こういう状況で業者が通常説明義務を遵守しても、例えば高倍率のマンション契約権に当選した興奮で舞い上がり、説明を真剣に聞いていなかったり、自分が購入を止めれば他人の手に移ってしまう、そこで熟慮せずに購入しようという浮わついた雰囲気があったのかなとも思います。


業者の姿勢として懸念されるのは、大手のデベ等がウオーターフロントの開発を行い、本来土地の価値が低い筈の埋め立て地の高級イメージ化を図り、建物の仕様のレベルを上げ、それが土地の価値が高いかのような錯覚を生み出したことがなかったろうかと思います。
後発業者もそのマーケッテイング手法を踏襲したために、交通の便が良いという利点以外に、通常では土地の瑕疵と考えられる軟弱地盤に目がいかなくなっていた、目をそらせるのに成功したとも考えられます。

しかし、これは一般的な販売活動において、よく目にすることで巧妙な販売戦略と言えます。

ところが、一般消費財の売買と違って、不動産は高額です。何か別な管理ポイントがないと、今後も同様なトラブル、割り切れなさが残ってしまいます。