2010-12-25
Positional Nystagmus of Horizontal Canalolithiasis
Conclusion. Vertical and torsional components occur from the horizontal semicircular canal, and the response to ampullopetal flow is greater than that to ampullofugal flow in every component.
Objectives. To clarify whether positional nystagmus of horizontal canalolithiasis contains vertical and torsional components, and to quantify the asymmetry of nystagmus.
Patients and methods. Twenty patients with transient direction-changing geotropic positional nystagmus were examined, and we performed three-dimensional video-oculography and measured maximum slow-phase velocity (MSV) of three components.
Results. Positional nystagmus was not purely horizontal. Fifteen (75%) patients revealed a vertical component, and nineteen (95%) patients had a torsional component. The mean value of MSV of the horizontal component in the affected-ear-down position was 51.5 °/s and that in the healthy-ear-down position was 19.1 °/s. The mean value of MSV of the vertical component in the affected-ear-down position was 8.7 °/s and that in the healthy-ear-down position was 3.0 °/s. The mean value of MSV of the torsional component in the affected-ear-down position was 12.8 °/s and that in the healthy-ear-down position was 6.5 °/s. For every component, MSV in the affected-ear-down position was significantly greater than that in the healthy-ear-down position (p < 0.01).
Acta Otolaryngol 2011;131:46-51
減衰型方向交代性下向性頭位眼振の3次元解析
第69回めまい平衡医学会(2010年、京都)にて発表
末梢性の方向交代性下向性頭位眼振は、眼振が1分以上持続する持続型と、眼振が30秒程度で減衰し停止する減衰型に分類でき、減衰型方向交代性下向性頭位眼振の病態は外側半規管内の浮遊耳石と考えられる。この減衰型はしばしば左右差があり、Ewaldの法則に従うと、患側下でより強い眼振が出現すると考えられる。今回はこの左右差を定量的に解析したので報告する。
(対象)減衰型方向交代性下向性頭位眼振を呈した外側半規管型頭位性めまい症20例(女性14例、男性6例、平均年齢51.4歳)である。
(方法)眼振映像は、山口大方式で3次元VOG(video-oculogaphy)とし、用手的に最大緩徐相速度を計測した。
(結果)出現した頭位眼振は必ずしも純粋な水平性眼振ではなかった。15例(75%)では垂直成分を有し、19例(95%)では回旋成分を含んでいた。患側下の水平成分の最大緩徐相速度の平均は51.5度每秒で健側下のそれは19.1度毎秒であった。患側下の垂直成分の最大緩徐相速度の平均は8.7度毎秒で健側下のそれは3.0度毎秒であった。患側下の回旋成分の最大緩徐相速度の平均は12.8度毎秒で健側下のそれは6.5度毎秒であった。3成分ともに患側下の方が有意に大きかった。
(結論)これらの結果から、外側半規管刺激で垂直成分と回旋成分が生じうることが明らかとなった。
2009-08-09
スギ花粉症について
春。楽しい季節ですが、スギ花粉症の患者さんにとっては憂鬱です。
はなみずがチョロチョロ、目はかゆく、くしゃみが止まらなくなります。風の強い日は特にひどくなります。
弘前では3月初旬から花粉が飛び始め、4月いっぱい続きます。スギ花粉症をすこしでも楽にする方法をあげてみました。
1)外に出ない スギ花粉は風にのって飛んできますから、家に閉じこもって外の空気を吸わなければ花粉症は起こりません。しかし実際には無理でしょう。ただし風の
強い日の外出は避けたり、外出から帰ったら家に入る前にコートをはたき、花粉を落とすのは効果的です。
2)マスクとめがね 外出する時はマスクやめがねをするとよいでしょう。特殊なマスクも売っていますが、一般的なものでもかなり効果があります。
3)ふとんと洗濯物 天気の良い日にふとんを干したくなる気持ちはわかりますがやめた方がいいです。ふとんに花粉がたくさんついて、夜寝るときにくしゃみ連発ということになります。
洗濯物も室内に干した方がいいでしょう。
4)くすり 自分がスギ花粉症だとすでにわかっている方は、3月初めからくすり(抗アレルギー剤)を飲む方法があります。
くすりを飲まない場合に比べると経過が楽になります。
ただし、症状が全くなくなるわけではありませんので、点鼻薬や点眼液は必要です。
Vertical semicircular canal
Angles between Left and Right Vertical Semicircular Canals
Hiroaki Ichijo, M.D.
Ichijo Ear Nose and Throat Clinic, Hirosaki
To clarify anatomical relationships between the left and right vertical semicircular canal (SCC) we measured angles between the left and right posterior SCCs, and angles between left and right anterior SCCs. Subjects were T2 images of axial magnetic resonance imaging (MRI) in 50 patients reporting headaches. The mean angle between the left and right posterior SCC was 92.6 degrees (S.D.=11.7) and that between the left and right anterior SCC was 76.1 degrees (S.D.=10.4). These results suggest that angles between the left and right vertical semicircular canals are not always 90 degrees, and interindividual differences in the relationship between canal planes are great, indicating a need for discretion in analyzing peripheral nystagmus.
Key words: posterior semicircular canal, anterior semicircular canal, MRI, angle
J Otolaryngol Jpn 105:1138, 2002
Light cupula theory
Light Cupula Theory in Persistent Type of Geotropic Direction-changing Positional Nystagmus
Hiroaki Ichijo, M.D.
Ichijo Ear, Nose and Throat Clinic,
5-4-8 Joto, Hirosaki, Japan 036-8095
Geotropic direction-changing positional nystagmus is considered to be caused by canalolithiasis of the horizontal semicircular canal. However, horizontal nystagmus, which persists without decreasing over time, can not be explained by canalolithiasis. The behavior of nystagmus as a function of the head position in space was studied in four patients without any evidence of neurologic disease and with persistent geotropic direction-changing positional nystagmus. In the supine position, permanent horizontal nystagmus toward the intact side was observed. In neutral position 1, with the head turned 15 to 45 degrees to the affected side, the nystagmus decreased and eventually stopped. With greater head-turn, nystagmus toward the earth lasted for more than one minute. These phenomena were considered to indicate that the cupula was deflected by the buoyancy of attached light debris which is hypodense compared with the endolymph. In the prone position, persistent horizontal-torsional nystagmus to the affected side was detected. In neutral position 2, with the head turned 15 to 45 degrees to the affected side, the nystagmus stopped. On the basis of these findings, the pathophysiology of the persistent type of geotropic direction-changing positional nystagmus is considered to be a result of light debris cupulolithiasis of the horizontal semicircular canal.
Keywords: direction-changing positional nystagmus, cupulolithiasis, neutral position, light debris, horizontal semicircular canal
頭位性めまい症
いままでこの病気は「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」と呼ばれていましたが、「良性」という言葉は病理学用語であり、不適切と思われます。また内耳障害は突然に起こることがほとんどなので「発作性」という言葉も必要なく、「頭位性めまい症(positional vertigo)」とするのが一番適切かと考えます。
また、従来は後半規管が病巣と考えられていましたが、側臥位で水平性の頭位眼振が出現するタイプも少なからず認められ、外側半規管由来の頭位性めまい症も存在することが明らかとなってきました。
この外側半規管頭位性めまい症は非常に興味深い疾患で、まだ完全に病態が解明されたわけではありませんが、次の3つに分類できます。
1)方向交代性上向性頭位眼振(持続型)
2)方向交代性下向性頭位眼振(減衰型)
3)方向交代性下向性頭位眼振(持続型)
1)は一側の外側半規管クプラに重いdebrisが付着した、いわゆるクプラ結石症で説明ができます。重力によって持続的にクプラが変位しますので、眼振も例外なく持続的です。
2)は外側半規管内のmoving debrisによって説明可能です。後半規管型と同様の病態と考えられ、眼振も20秒程度で停止する減衰型です。
3)は軽いdebrisがクプラに付着した状態であれば、眼振の性状が説明可能です。
浮遊耳石置換法
早いもので、私が医療に携わるようになって四半世紀が経ってしまいました。
その間、医学的に最もショッキングだった出来事は「Epley JM: The canalith repositioning procedure; for treatment of benign paroxysmal positional vertigo. Otolaryngol Head Neck Surg 107:399-404, 1992.」という論文との出会いです。直訳すると、「良性発作性頭位めまい症に対する治療の浮遊耳石置換法」という題名なのですが、大げさに言うとその後の私の人生を変えてしまった論文とも言えます。
あれはたしか平成5年だったと思います。恩師の朴沢二郎教授が退官され、私は弘前大学医学部耳鼻咽喉科の講師に昇格し、めまい外来で眼球運動を中心に細々と研究をしていたのですが、さて次に何をやろうかと模索していた時期でありました。医局で偶然このエプリーさんの論文を目にしたのですが、当時良性発作性頭位めまい症は耳石器の異常であろうと考えられていたのでにわかには信じられず、「ほんまかいな?」というのが第一印象でした。
この論文の内容を簡単に説明すると、内耳の後半規管の中に卵形嚢からはがれた小さな石が迷入し、それが頭位の変化により動くために異常な内リンパ流動が起きて、めまいと眼振が生じる。さらに懸垂頭位(美容院で洗髪する時の頭位)から連続して頭位変化をさせる事によって石を卵形嚢へ移動させ治癒せしめる、というものでありました。
自分の目で見たものしか信じないという疑い深い陰険な性格の私ですから、さっそく外来でその治療法を試してみました。すると見事にめまいと眼振が消失したのです。
その後症例を18例蓄積し、有効率が80%以上だったので喜び勇んで論文にし、日本耳鼻咽喉科学会会報という、一応日本では最上位の学会誌に投稿したのですがなぜか最初から掲載不可で帰ってきました。陰険だが温厚な性格の私もさすがにムカついて日本耳鼻咽喉科学会をやめようかとも考えたのですが、妻子を路頭に迷わす危険性もあるのでなんとか踏みとどまりました。しかたがないのでワンランク落として耳鼻咽喉科臨床という雑誌に投稿したところ、すんなりと掲載してもらったのでホッとしました。それ以来耳鼻咽喉科臨床という雑誌が大好きです。
このエプリーさんという方はアメリカのポートランドで開業している耳科医で、前述の画期的な浮遊耳石置換法はずいぶん前から行っていたようです。しかし学会では全く相手にされずキチガイ扱いされていたのですが、患者さんの口コミから徐々に評判が広がりアメリカの専門医講習会に招待され実技指導するようになってから一気に知名度が上がり、おそらく現在では世界で最も有名な耳科医でしょう。今では世界中から患者さんが押し寄せて来るそうです。
このエプリー法(浮遊耳石置換法)は、私が日本で最初に「平衡神経科学会」で紹介したのですが、なかなか理解されず「マユツバじゃないの?」という冷たい視線を浴び続けたのでありました。おそらくガリレオも同じ気持ちだったでしょう。
しかしこの治療法は内耳の解剖と病態生理を理解してさえいれば、特別な装置は必要ないので、その後広島大学や愛知医大などいくつかの大学で追試がなされ、徐々に効果が理解されるようになりました。平成17年の耳鼻咽喉科専門医認定試験ではついに浮遊耳石置換法が出題されるまでにいたり、やっと市民権を得たと言えそうです。
なにしろ以前はめまいの研究といっても病態を探るための検査に関する研究ばかりで、治療に関してはこれといったものはほとんどなかったのですから、このエプリー法は人類史上に残る革命的な発想と言えるでしょう。
その後私は平成9年に開業し、ほとんどメスは捨ててしまい、外科的治療がうまくいった時の喜びを感じることは少なくなったのですが、このエプリーさんの浮遊耳石理論を基に内耳の病態を想像し、治療に応用することでなんとかリサーチマインドを忘れずにすんでいます。
どんな治療でもそうですが、やはり患者さんが治ってくれるのは嬉しいものです。
めまいについて
「めまい」というのは症状です。たとえば「頭痛」や「腹痛」と同じようにあくまでも症状名で、診断名ではありません。
ですから「めまい症」というのは正しくない表現なのですが、しばしば使われるのはそれだけとらえどころがない症状だからでしょう。
たしかにめまいを起している病気を診断するのは簡単ではありません。
「めまい」という言葉はかなり広い意味に使われます。ぐるぐる回る感じ以外にも、立ちくらみやフラフラ感の時にも使われます。ですからもしあなたが「めまい」を自覚したら、どんな感じだったかをなるべくリアルに担当医に話すことが大事です。
たとえば「天井がぐるぐる回った」とか「自分が右から左へ流れる感じ」だったとか。これはご自分にしかわからないので、ご自分の言葉で表現してください。少々おおげさでもいいのでその時の状況をなるべく詳しく話すことが大事です。
おおざっぱに言って、「ぐるぐる回る」めまいや「流れる感じ」というのは耳(内耳)の病気のことが多く、「立ちくらみ」や「短時間フラフラする」というような場合はそれ以外の場合が多いと言えます。
また、何かのきっかけがあったかどうか。たとえば寝返りの時に起きるとか、まくらに頭をつける時に起きるというのは大変重要な鍵です。
それから、耳鳴りの有無も重要です。どちらかの耳鳴りがするとめまいが起きるというのはメニエール病を疑う症状ですが、この病気は名前が有名なわりには、あまり多い病気ではありません。
