「サンセット・メモリー」杉村尚美

 1981年1月25日発売。作詞:竜真知子、作・編曲:木森敏之。
 TVドラマ「炎の犬」の主題歌としてトップテンヒットとなったこの曲、歌っていたのは1977年に「い・に・し・え」をヒットさせたフォーク系グループ“日暮し”のボーカリストとして活躍した杉村尚美さん。hiroc-fontana、前にもちょこっと日記に書いたことがあるのだけど、この「い・に・し・え」という曲が昔から大好きだったのね。そういえば「い・に・し・え」もドラマ主題歌だったのだけど、それを歌っていた女の人が杉村尚美と同一人物だ、というのを知ったのは、この曲がヒットして随分経ってからだったかしら。
 彼女、品が良くて表情に独特な憂いのある文句なしの美人さんではあったけど、印象としてどこか「大企業の受付嬢」ぽいというか、やっぱりテレビでピンで勝負するにはちょっと華に欠けるような感じもあって、いわゆる一発屋さんで終わっちゃったよね。それと。なめらかでよく伸びるファルセットボイスは、レコードで聞く限りとても魅力的だったのだけど、この曲がヒットしていた頃よく顔を出していたザ・ベストテンなどで聞かせてくれた生歌の方は、いつも上ずって不安定で、結局は“ちりめんビブラート”ばかりが耳に残って、その頃の俺には「岸田今日子の声」みたいに聞こえたのよね(笑)。
 そんなこともあって、当時はこの曲、正直言ってキライでした(汗)。
 でも、去年ビクターから奇跡的に(!)リリースされた日暮しのベストアルバムに抱き合わせのような感じで杉村尚美のソロ曲がこの曲を含めて3曲収録されていて、それで久しぶりに改めてこの曲を聴いたら、とてもイイ曲なんでビックリしちゃったのね。そうそう、「SACHIKO」とか「愛はかげろう」とか「初恋」とか、当時はこういう“ポッと出のイイ曲”がけっこうあったよね、なんてことも思い出したりして。

ゴールデン☆ベスト 日暮し+杉村尚美

ゴールデン☆ベスト 日暮し+杉村尚美

 作曲の木森敏之氏といえば、岩崎ヒロリンの「聖母たちのララバイ」「家路」、中村雅俊「心の色」といったTVドラマ系のヒット曲が多い作家。どの曲も、独特のひねりの効いたAメロのマイナーメロディーと、サビでのドラマチックな盛り上がりが共通しているかしらね。「サンセット・メモリー」も、文字通りサンセットを思わせるような優美な歌い出しのメロディーと、一転してまるで犬ぞりが軽快に進んでいくような(笑)ドラマチックなロシア民謡風のサビメロディーの対比が鮮やかな作品。アレンジも木森氏で、イントロの「ジャ、ジャ〜ン」という繰り返しのリズムの微妙なズレが、なんだかとても耳を引くのね。こだわりを感じさせてくれます。ところでこの木森氏、残念なことに1988年に40歳の若さで他界されてしまったとのこと。
 ただこの「サンセット・メモリー」の難点と言えば、歌詞の意味がわかんないこと。竜真知子さん。このヒト、「Mr.サマータイム」とか「私のハートはストップモーション」、「すみれSeptember Love」・・・タイトルだけでも意味不明な作品が多いんだけど(笑)、この作品もそう。

はるかな夕陽 それは 
哀しい季節つらぬいた 愛のシルエット
忘れたはずのララバイ
幸せすぎたあの頃が 心にじませる
ブロンズの風の中 見つけたメモリー
悩みなき遠い日の 私になって
あのひとの胸の中 かけてゆきたい あの日のまま
 (サンセット・メモリー 詞:竜真知子

 どうですか?意味がわかんないのは俺の詩的センスが無いだけなのかしら?でもね、「ブロンズの風」は夕陽の赤銅色ってことなんだろうけど、どちらかというと青銅の青のイメージが強いし、俺なんか、その辺でもうイメージの像が結べなくなっちゃうのよね。冒頭の「はるかな夕陽それは〜」の答えが「愛のシルエット」てのもどうよ?夕陽は「光」であって、「シルエット=影」とは違うじゃん?て感じなのよね。読み込めば読み込むほどに居心地悪い感じがしちゃうのです。
 まあ曲もいいし、とりあえず言葉のモザイクで何となく別れた彼への慕情を歌っているのね、というイメージは湧くし、尚美さんのベルベットボイスも心地いいしで、多くのリスナーの心を動かしたからこそのトップテンヒットだったわけで。今更この名曲にワタシはとやかく言うつもりはありませんけれども(笑)。