映画三昧〜「君の名は。」そして、クセのあるすばらしき日本映画たち。

 君の名は。
 すごく、面白かったです。

 子供じみた感想ですけど、そんなノリこそがこの映画には相応しいのかな、なんて。
 あまりに評判が高いので、ちょっと観ておこうかな、と土曜日の朝、ぼんやりテレビを見ながら朝食を食べている時に思い立って、即、一番近い街の映画館の夕方の回の座席をネット予約。残り少ない席(もちろん一人席)を何とかゲット。本当に便利な世の中になったものよね。特に、こんな風に速攻即決で休みの予定が決められちゃう東京という街はやっぱり恵まれている、としか言いようがない。
 さて映画の方は、よく出来たジュブナイル、というのが第一印象。男女入れ替わりのストーリーということで、アラフィフ世代なら大林宣彦監督の「転校生」転校生 [DVD]をまず思い出してしまうけれど、観る前はあの映画の焼き直しかな?なんて思っていたのに、いざ蓋を開ければ、入り組んだ伏線が絡み合って進む展開がなかなかスリリングで、思わず引き込まれてしまったワタシ。その意味では、“楽しませ要素”てんこ盛りの、まさにイマドキの作品。
 そしてこの映画、何より、絵がとにかくキレイ。殺伐としたイメージで描かれることが多い東京の街並さえ、キラキラと輝く美しい風景として登場してくるのよね。それは田舎町に住む少女の憧れの気持ちが映し出した心象風景でもあったりするわけだけどね…。まあ、振り返れば誰もが10代の頃に見ていた風景はおそらく、今見ているそれよりは遥かに輝いていたはずだったわけで、この映画が醸し出すピュアな印象は、描かれる背景や風景の美しさに負うところが大きいのかもな、なんてことも思った。

 この映画の批評などで引き合いに出される“ジブリ映画”も、絵の美しさでは定評あるけれど、この「君の名は。」は、ジブリにつきものの“説教臭さ”が全くないところも良かったのよね(環境問題がどーのこーのとか、戦争反対!とかいうやつね)。それにちょっと強引なハッピーエンドも、途中で何度となくインサートされる音楽も(オジにとっては少しばかりうるさかったけど)、結局は若い子向けのアニメならではなのかもな、なんて思って。でもそれでいい、と思ったのだ。
 そう、映画館はイマドキの若い子がいっぱいで、その多くが見終わったあと、何だか穏やかなイイ顔して出口に向かっているのを眺めながら、オジさん、少し嬉しかった。こんなピュアな作品が若い子に受ける日本という国は、捨てたもんじゃないな、なんてね。
 
 さて。
 独身中年のワタシ、翌日の日曜日もヒマを持て余しましてね。夜はお酒を飲みながらひたすらケーブルテレビ鑑賞となりまして。
 「悪人」(2011年)悪人 (特典DVD付2枚組) [Blu-ray]、「紙の月」(2014年)と、クセのある2本の邦画を立て続けに見たのね。紙の月前者ではイメージを覆すダークな妻夫木くんと脇役ながら鬼気迫る満島ひかりさんの演技に圧倒され、後者ではひたすら堕ちていく宮沢りえさんにカタルシスを感じたりしながら、どちらも最後には、あたかもポン!と放り出されたかのような何とも“楽しくないエンディング”が待っていたことに“やれやれ”なんてタメ息ついたりして。それで、思ったの。
そうか、「君の名は。」は、やっぱりハッピーエンドだから、あれだけヒットしているんだろうな、とね。
 とりあえず日本映画、確実に面白くなってます。