良いお年を

2019年の年末は、当初は軽く見ていた風邪が思わず長引いてしまい、何もできずに寝込んでいました。

せっかくの年末のお誘いもことごとくキャンセルさせて頂くことになり、周囲に迷惑をかけてしまったのですが、皆さん逆に優しい思いやりの言葉で元気づけてくださって、いくら強がってもやはり、周囲とのつながりの中で生かされている自分であることを一年の終りに思い知らされたワタシでした。

そして、自分ひとりが焦っても何の意味もないのだということを感じて、これはまさに今年を象徴するテーマのように思いました。

思えば昨年の年末も、腕の骨折で不自由な思いをする中で、同じようなことを思って反省していたワタシ、つくづく、成長がないな、と。

そんな感じで終りを迎える2019年。

ブログを訪れて下さった皆様、ありがとうございました。

良いお年をお迎えください。

2020年がステキな一年でありますように。

太田裕美コンサート~まごころ大感謝祭<45周年45回転でくーるくる>

GOLDEN☆BEST/太田裕美 コンプリート・シングル・コレクション

45周年コンサートに行ってきました。

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(ワタシはステージを近くで見渡せる2階の張り出し席でした、ラッキー!)

 

おそらくこのブログを訪れてくださっている太田裕美ファンの多くは参加されていると思うので、今回は記事にするまでもないようにも思ったのですけれど、備忘録かつ感動の再現ツールとして、書いておきます(微笑)。

本当に、素晴らしいコンサートでしたね!

開演30分前に東京フォーラムホールC(近年の太田さんとしては珍しい1700席強の大会場!)に着くと、会場前には長蛇の列でビックリ。なるほど、『ヒロミ・デラックス

ヒロミ☆デラックス (特典なし)がデイリー10位に入るだけあるよな、と初めて実感したワタシ。

そしてコンサートはまさに、太田さんの45年の集大成であり、集まったファンそれぞれが太田さんの歌声と共に過ごしてきた長い歳月がエーテルになって会場全体を覆っているような感じ。まるで仲良しクラスの同窓会のような、とても温かく和やかな空気に包まれて、太田さんも終始嬉しそうだったのが印象的でした。

今回のコンサートは45周年記念ということで、シングル曲中心の選曲。バックを固めるのは今回も楠均さんのドラムスに、EG&B&Perの岩井眞一さん、AGの西海孝さんという気心知れたメンバー。ただ違っていたのは、今回は二部構成で、第二部ではピアノクインテット(高嶋さち子さんは残念ながら不在)との共演という、45周年ならではの演出もあって、アニバーサリー&大規模会場らしくいつになくゴージャスなステージ。

太田さん曰く、ヒロミ・デラックスの収録曲をズラッと並べれば簡単だったけれど、45周年にふさわしくクインテットに合う選曲など、色々と考えたのだそうで、そうした太田さんのまごころのこもった周年コンサート、曲数はレギュラーコンサートと変わらない20曲弱ながら、やはりひと味も二味も違う満足度の高い内容でしたわ。

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(会場ロビーで「もうひとりの太田さん」がお出迎え)

 

<セットリスト> 

~太田さんのトークも一部、再録してますが、なにぶん記憶頼りなので、間違っている部分があったらご容赦ください。。。

【第一部】

★太田さんはステージ中央の椅子にギターを抱えてスタンバイ。衣装は白いブラウスに紺のストライプのロングスカート。そう、↑ の等身大(?)写真と同じ!

1.First Quarter~上弦の月(99年・アルバム「太田裕美の軌跡」)

2.黄昏海岸(80年・18thシングル)

 「「黄昏海岸」は地味だけど大好きな曲です。でも今まであまり歌う機会がなかったので、久しぶりに選びました。」

3.恋人たちの100の偽り(77年・10thシングル)

4.シングルガール(79年・15thシングル)

 「宇崎・阿木夫妻には今も仲良くしてもらっています。この曲も、大好きなアルバム(12ページの詩集)曲の「あさき夢みし」も、私の「ラ行」の変な発音(会場、笑)をあえて強調して作ってくれたみたいです。阿木さんは当時、この曲を歌う時のアイデアも出してくれて、「間奏で手品をしてみたら?」と提案してくれたのだけど、さすがにそれはできなかった(笑)。」 

5.ロンリィ・ピーポーⅡ(83年・22ndシングル)

 「45年間の中で考えると、NYに行ったのもずいぶん前ですね。短い間のことでしたけれど、しっかりと私の中の歴史に刻まれてます。」

6.満月の夜 君んちに行ったよ(83年・23rdシングル)

★太田さん、椅子から中央後部のピアノの前に移動。

 「デビュー間もない頃、「夕焼けコンサート」と題して全国各地でミニコンサートをしました。久し振りに歌う、蔵出し曲です。」

7.夕焼け(75年・3rdシングル)

8.赤いハイヒール(76年・5thシングル)

9.君と歩いた青春(81年・21stシングル)※間奏のハミングがステキでした!

10.最後の一葉(76年・6thシングル)

 「(病気になって)生きていればいいことも悪いこともあると改めて思って。それを全部受け止めて、与えられた毎日を大切に生きて行くことの大切さを神様から教えられている気がします。次に歌う新曲は、病気がわかる前に録音していたのですが、まるでそれを予測していたみたいに、今、私自身がこの詞にとても勇気づけられているんです。」
11.桜月夜(最新シングル)

【第二部】

★15分の休憩後、幕が上がると上手側に弦楽カルテット、中央には男性ピアニスト。アルバムバージョンの「雨だれ」のイントロが始まると、太田さんは下手から白のロングドレスでハンドマイク片手に登場。以下、4曲はピアノ・クインテットをバックに歌唱。

12.雨だれ(74年・1stシングル)※アルバム『まごころ』収録のクラシック・バージョン

13.九月の雨(77年・9thシングル)

14.木綿のハンカチーフ(76年・4thシングル)

15.さらばシベリア鉄道(80年・19thシングル)

★バックバンド3名が再登場し、演奏に加わる。

「今回は、シングル中心のコンサートで、アルバム曲は2曲だけです。次の曲はそのうち1曲で、大好きな曲です。」

16.心さわぎ(75年・アルバム「まごころ」)

【アンコール】

★全員、45周年Tシャツで再登場。

17.ドール(78年・12thシングル)

18.ステキのキセキ(最新シングル)

19.雨だれ(74年・1stシングル)※太田さんソロ・ピアノ弾き語り

 

太田さんのコンサートではいつものことなのですけどね。ステキな歌声のおかげでいつも曲にどっぷり浸かってしまって(だから手拍子もつい忘れてしまって)、その曲を良く聴いていた時代時代に文字通り「トリップ」してしまうのです。でも今回は特に「どっぷり度」が半端じゃないワタシがいました。太田さんの歌声の素晴らしさ(まさに魂が込められていた、という感じ)はもちろんのこと、いかに太田さんの曲たちと自分の半生(反省)がシンクロしてきたのか、それを思い知らされて、とても平常心ではいられませんでした。それこそ(あまり使いたくない言葉ですが・・)、”涙腺崩壊”状態で。特に、太田さんの口から「病気」の話を聞いたあたりからは、1曲ごとに、感動して、嬉しくて、こみ上げるものを抑えられなくて。

最後は、いつもと変わらずに、明るく元気に手を振って舞台袖に下がっていった太田裕美さん。これからも、無理のない範囲でコンサートを続けてくれるならば、ワタシは何がなんでも駆けつけたい、と。強くそう思いました。

貴女の歌声を聴ける、何気ない日々に、感謝しつつ。

冬がはじまるよ~木枯らしソング特集

 今年は夏の終り頃から毎週のように超大型台風の襲来があって、その印象があまりに強かったせいか、ここのところ急に寒くなってきても、「え?秋はあったっけ?」という感じで、まだ冬を迎える心構えが出来ていないような気がするのは私だけでしょうか?

 とはいえ、今日の東京は本当に北風が冷たくて、そんな私の思いなど全く関係なく「冬」は確かに始まっているようです。

 

 ということで、今日は北風=木枯らしの曲を集めてみました。

 まずは、こんな曲から。


天地真理 ☆ 木枯らしの舗道

 1974年12月発売「木枯らしの舗道」。13枚目のシングルは大ヒットした名曲「想い出のセレナーデ」に続くマイナー調の大人っぽい曲調で、この曲も良い曲だったのですが、このあたりからトップアイドル・真理ちゃんの人気の翳りも本格化し始めていて、デビュー以来初めてトップテンに届きませんでした。真理ちゃん人気にも木枯らしが・・・ということね(涙)。笑顔なしの真理ちゃんも、新鮮ですけどね。

 

 続いても70年代のトップアイドルのひとり、南沙織さんのこの曲。


「木枯しの精」南沙織

 1977年発売の24枚目のシングル「木枯しの精」。作詞・作曲は「どうぞこのまま」(1976年)の大ヒットで知られる丸山圭子さん。こちらは「木枯し」のタイトルとは裏腹な明るく洒落た印象のポップスで、オトナっぽい沙織さんがステキですね。

 

 80年代は、これですね。


小泉今日子 1987年1月7日

 キョンキョンの1986年のシングル「木枯しに抱かれて」。THE ALFEEの高見沢さんの作詞・作曲で、最高位は3位ながら28万枚の大ヒットでした。

 

 ユーミンのこの曲は1984年のアルバム「NO SIDE」に収録。


木枯らしのダイアリーLyrics

 「木枯らしのダイアリー」。大好きな曲です。「別れ」の寂しさが、冬の青空のように穏やかな曲調に乗せて、しんしんと、冬寒のなか心に沁み入ってくるような気がします。詞の方もじっくり楽しんでください。

 

 最後は、「木枯らし=北風」と返しまして。

 今日のタイトル(冬がはじまるよ)がらみで、マッキーです。「北風~君にとどきますように~」。


槇原敬之 北風~君にとどきますように~

 ホッコリしますよね、この曲。

 それではみなさま、風邪にお気をつけて!

 

(11/25追記)

太田さんの45周年コンサートに足取り軽く向かう道すがら・・・

「♪ でも 木枯しのビル街 からだに気をつけてね

   からだに気をつけてね 」と鼻歌、歌いながら。

木綿も、木枯らしソングの仲間だったね。そういえば。

祝・デイリーチャート10位!~Hiromi★Deluxe

 

  11月1日発売の45周年のハーフベストアルバムがなんと、オリコンデイリーチャートのトップテンにチャートイン(なぜか10/31付チャートでした)。またもやキセキを創ってしまった太田さん。ウィークリーチャートでも45位と、久々のトップ50チャートイン。

 キセキをお祝いして、改めてレビュー記事を書いてみようかと。

 まずは、前半の新録曲群。1曲目「ステキのキセキ」(詞:太田裕美、作編曲:前山田健一)は、5/1にアナログ盤での発売ながらウィークリーチャート最高位74位を記した先行シングル。ワタシももちろん先んじて聴いてきたナンバーながら、改めて太田さんの歌詞の素晴らしさに唸った作品。過去のシングル曲のタイトルを盛り込んだアニバーサリーソングとしては、キャンディーズの「微笑みがえし」に始まって、聖子たんは「20th Party」「30th Party」と2曲もやらかしてるし(笑)、伊代ちゃんも30周年で「オールウェイズ・ラヴ・ユー」なんて曲、作っちゃってたりして、正直ちょっと手垢まみれな印象よね。

 でも太田さんの場合、同じ趣向の曲であっても、たとえばこんな感じで。

  風をあつめ 深呼吸

  しあわせ未満 足るを知るの

  意識次第 どんな時も

  生まれ変わるチャンス

  夢を求め まっすぐに

  生きて行く (作詞:太田裕美

  詞が深いでしょ?そして今の太田さんだからこそ、こうしたメッセージがグッときてしまったりするわけでね。

 ヒャダインこと前山田氏からもらった原曲のタイトルは「Spring」だったそうで、そんなイメージの明るいメロディーに、太田さんのまっすぐな、弾むような歌声がピッタリな一方、いざ過去の曲のタイトルが絡む箇所は、なぜかメランコリックな印象が漂ってくるのが不思議で、そこが何とも味わい深い曲。

 続く2曲目は、正真正銘の初出し曲「たゆたうもの」。詞曲編とも前山田氏による作品で、録音は「ステキのキセキ」と同時期(昨年11月)に行われていたもの。音楽界における太田さんの歴史的存在価値を世に知らしめた番組「名盤ドキュメント」(NHK)でも太田さんファンを公言していた前山田氏らしく、"いかにも太田裕美"的な、ファルセットとハミング(ご本人のバックコーラス)を活かした独特の浮遊感に満ちた曲に仕上がっている。サビでの転調も、秀逸。

 ここでの「たゆたうもの」とは、「水のように形を変えるもの」のことであって、歌謡曲・フォーク・クラシック・テクノ・・・多様な音楽ジャンルを渡り歩き形を変えながらも「太田裕美」という本質は決して変わらない、彼女自身そのもの、ということなのでしょう。まさに、太田裕美のための、太田裕美にしか歌えない、そんな歌。

 そして3曲目が「ステキのキセキ」とのカップリングで先行発売された「桜月夜」。10/19にTOKYO MXテレビで放送された「ミュージック・モア」でも披露してくれて、ピアノ弾き語りの熱唱に、hiroc-fontana、涙ボロボロでした・・・。こちらは先行記事がありますので、そちらをご覧くださいませ。ワタシこの曲本当に大好きでね、実は最近のワタシのカラオケ定番曲でもあるの・・・(汗)。皆様ゴメンナサイ。

 4曲目は朝ドラ「ひよっこ」(2017年)の劇中歌だった「恋のうた」(詞:安田佑子、作編曲:宮川彬良)。シャンソン風のメロディーに、舌足らずで甘い太田さんのスキャットがベストマッチ。思わず、赤いとんがり屋根に黒猫がうずくまる「メルヘン世界」にトリップしちゃいます。

 そしてアルバム中盤は、高嶋さち子ピアノクインテットをバックに、セルフカバーを2曲。「木綿のハンカチーフ」はオリジナルに近いストリングスアレンジ。太田さんとしてはとにかく「歌い倒(たお)している」曲だけに、ボーカルに単調な印象があるのは否めないものの、その歌声の裏側に年輪を重ねた"達観"のようなものが感じられるのも確かで、もはや遠距離恋愛に引き裂かれる男女の目からは抜け出て、「鳥瞰」でこの歌世界を捉えている気もする。まさに、今の彼女にしか歌えない「木綿」、かも。

 続く「さらばシベリア鉄道」は、時の積み重ねの中で育った彼女の代表曲として、しなやかさを増した凛としたボーカルで、この曲特有の哲学的な世界観を"年齢相応の深み"を加えて再現している感じ。イイです。

 後半は、ニューリミックス(「Reiwa Mix」)での "21世紀太田裕美ヒットメドレー"。どの曲も独特の哀愁味を帯びたシンプルなメロディーに、さりげなくも"じんわり"と来る言葉選びに感動させられる曲ばかりで、改めて太田さんがソングライターとしても稀有の才能をお持ちであることに驚かされる。

 25周年記念CD-BOXのボーナス・トラックだった「First Quarter-上弦の月」も、「みんなのうた」で素晴らしいアニメーションとともに人気を博した「僕は君の涙」も、ともにリミックス版では軽やかでフォーキーなギターサウンドに生まれ変わっていて、新鮮な印象。「パパとあなたの影ぼうし」「初恋」を挟み、「金平糖」「」のリミックスバージョンは、太田さんのボーカルがよりクリアになって感動新たに。

 何より素晴らしいのは、40代、50代、そして60代の太田さんが年齢を重ねてこそ歌える歌を、その時どきに歌ってきてくれたこと。"21世紀太田裕美ヒットメドレー"を聴いて、それがよくわかったのだ。だからこそ、今の自分の心にこれほど迫ってくるのだ、と。そして、聴くたびに勇気づけられるのだと。

 あらためて「太田さん、45周年おめでとうございます。」

 そして、いい歌をたくさん、ありがとう。これからも、応援していきます。

ひとり旅ふたたび~7年ぶりの「おかげ参り」。

 10月19日から1泊2日で7年ぶりに「お伊勢参り」して来ました。

 決して意図して今回の旅行を計画してきたわけではなかったのに(まさに「思いつき」で、ある晩、ネットの旅行サイトでポチッ!と・・・(笑))、気付けば今上天皇陛下が即位礼正殿の儀を迎えられる直前だったという・・・。そんなタイミングで、天皇家の祖先と言われる天照大御神をお祀りする神宮にお参りできることに、なんだか不思議な仕組みを頂いたような気もしました。

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内宮の参道から見上げた青空に、龍のような雲が

 伊勢には7年ぶりという事で、前回の旅行をそのままトレースしたような旅ながら、前回と全く違った印象を受けたのが面白くて、今回も存分にひとり旅を堪能してきました。

 かつては一生に一度のお参りをすべての日本人が憧れていたと言われるお伊勢参り。江戸時代には村で「お伊勢講」と言われる、今でいうところの旅行積立のようなことをしたり、お伊勢参りに向かう旅人の目印である、柄杓(ひしゃく)を携えた人は、道中は街道沿いの人々から一晩の宿や食事さえ提供されたと言います。

 それほど、伊勢神宮へのお参りは、昔から日本人にとっては特別なものだったということなのでしょう。

f:id:hiroc-fontana:20191019114048j:plain (一日目は外宮。雨でした。)

 現代もそれは変わりないようで、7年ぶりに訪れたお伊勢さまは、雨天にもかかわらず相変わらず清浄な気に満ち溢れていて、参道は善男善女で賑わっていました。気のせいか日本人比率が高い印象もあってインバウンドの影響はあまり無いようにも思えたのですが、これも神宮ならではのことなのかもしれません。

f:id:hiroc-fontana:20191019135411j:plain (やがて、雲が切れて・・・。)

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(2日目の朝、宇治橋を渡るころには素晴らしい青空が。)

 

 さて。今回の旅は、少しばかり波乱の幕開け。出発前日に旧友からのお誘いがあり、いつもながら飲み過ぎて、翌朝、見事に(!)寝過ごしてしまい、朝早くの新幹線に乗り遅れるというハプニング(苦笑)に襲われてしまいました。新幹線の方は、幸い一時間後の自由席に余裕で乗れて、無事リカバー。

 しかしそんな予想外の出来事を「これも、ひとり旅ならではの一興よ。」などと、強がりともつかぬ呟きとともに、むしろ「楽しんでいる」自分も確かにいまして、己のその図太さに驚きつつも、イイ具合の"イイ加減さ"をいつの間に身に着けていたことに、えも言われぬ満足感を覚えていたのも事実でして・・・。

 その時どきの心の葛藤や、予期せぬ出来事で気持ちが動揺することは避けられないけれど、やがてそれらもいつの間にやら通り過ぎて、気付けば何事もなかったように、まるで必然的に、次の場面に移ってしまっているものです。

 肝心なのは、出会うものに対してどのように対峙していくかであって、それはすべて自分の心が決めること。そんな心の持ちようをいま、学んでいる私なのかも知れないと。ひとりで生きて、ひとり旅を続けることの目的は、もしかすると、そのことだけなのかも知れない、なんて。今回の旅ではなぜか、そんな思いがずっとありました。

  

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 そして今回のひとり旅、私のテーマは「他生の縁」そのものでした。

 ここ数年、50代半ばになって段々と「大勢の中の自分」というものが客観視できるようになってきていまして、そのぶん、周囲との距離の取り方がわかってきて、いろいろな意味でラクになってきたんですね。

 たとえば自分が前に出る場面でないなら、一歩(もしくは数歩)下がって様子を見守る、とか。相手が急いでいて、自分に時間の余裕があるなら相手に先を譲る、とか。
 そうすると、無用な対立は生まれないし、何より、自分が無理をしなくて済む。 

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(今回も、大好きな二見浦まで足を伸ばして来ました。夫婦岩です。)

  以前の私は無意識のうちに何かにつけ「自分(=我)」が前に出て来てしまうことばかりで、それが他者との間に軋轢を生んで、心の葛藤や感情の乱れ(イライラ)を徒に呼び起こしていたように思えるのですね。それをいざ「相手に譲る」という姿勢でこの世の中に対峙してみると、こんどは、人々の優しさの方が目に付いて仕方なくなってくる、という。。(こんなことを書くのは、ちょっと気恥ずかしいのですけどね・・・。)

 それは今回の旅で出会った人々がお伊勢参りの善男善女だから、ということばかりではなく、本来多くの人が持ち合わせている美徳に違いないのだと。それを信じて、心してそこにフォーカスしてみる、ということ。 

(ああ、私はこれまで、そんなことさえもして来れなかったのだな・・と。しみじみと反省した次第です。)

 そうしてみると、例えば街角で出合がしらにぶつかりそうになったとき「すみません、どうぞ」と譲ってくれる若い女性が現れたり、道を尋ねれば、曲がり角まで先導して行く先を示してくれるカップルがいたり・・・世知辛くばかり思えたこの世の中も、いくぶんか違った風に見えてくるのですね。

 そして、すれ違いながらも一期一会を前回以上に楽しんでいる自分がいたのです。

 冒頭で私が「前回の旅行をそのままトレースしたような旅ながら、前回と全く違った印象を受けたのが面白くて」と書いた意味は、そういうことです。

 これからもうしばらく、人生のひとり旅、こんな感じで続けていくのだと思います。

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(もちろん旅の愉しみのひとつはグルメ。今回も堪能しました。穴子せいろはふんわりと香り、最後は出汁茶漬けで。方や自然な味噌の味があとを引く伊勢みそラーメンは、地元の有名店(「蔵deラーメン」さん)で、店の外は大行列でした。)

メモランダム20191022

●東京が札幌に

f:id:hiroc-fontana:20191022155742j:plain IOC東京オリンピックのマラソン開催地を札幌に決定した件。賢明な選択だと、個人的には思います。

 暑さ対策として沿道の舗装工事をしてきたのだとか、これまでいくらお金をかけてきたにしても、選手に万が一の事があったら取り返しがつかないですからね。暑さを想定して練習してきた選手たちや、チケットを買った人の嘆きが報道からは聴こえてきますが、選手にとっては練習はどんなコンディションでしてきたにしても決して無駄にならないでしょうし、チケットの方は払い戻される話もあって、うまくいけばお金が戻ってくるはずです。

 今回、酷暑の中でのマラソンは本当に大丈夫なのか?と、最初から懸念する声があったにも関わらず、工夫すれば何とかなる、と強行しようとしていた日本側に「外圧」が働いた格好ですね。クソ真面目でいながら、呆れるくらい楽観的で優柔不断な私たち日本人。いかにも欧米人らしい現実的な考え方をバシッと突き付けられて、いつもながら、降参ですね。

 それにしても、「東京」オリンピックを「札幌」で、って。こればかりは現実的というよりも、欧米人の大雑把さの表れ?と言えるのかも知れませんけどね。

 

蜜蜂と遠雷松岡茉優

 映画「蜜蜂と遠雷」、観てきました。


映画『蜜蜂と遠雷』予告【10月4日(金)公開】

 原作がとても面白かったので、映画化されると聞いたときから楽しみにしていた反面、「音」そのものを脳内で視覚化していくような原作の手法は、読者それぞれのイマジネーションが広がる小説だからこそ可能なもなのであって、それをいざ映像化してしまうと却ってイメージの広がりを制限してしまうのではないか?と危惧する部分もありました。しかしそんな心配をよそに、映画の仕上がりはことのほか良くて、原作の緻密な構成を大胆にカット&ペーストして、エッセンスだけを濃縮したような見事なつくり。映像も美しくて、見応えがありました。
 その中で私が感動したのは、主人公・栄伝亜夜を演じた、松岡茉優さん。

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 この人、バラエティ番組では女優感ゼロで何の違和感なくあっけらかんとしたキャラを発揮しているけれど、いざスクリーンの中に登場すると、その存在感だけで映画に深みが出てくる感じがするのが、凄いのです。私は「万引き家族」の彼女を観てそれを感じたのですけど、今回「蜜蜂と遠雷」を観てその思いを強くしました。今回は、少女期の出来事からトラウマを抱える天才ピアニストの役で、演技の大部分は、ピアノを弾いている場面の無言の演技。しかし、ピアノを弾く表情だけで伝わってくるものが確かにあって、そんな、表情だけで語れる女優は、いそうでいてそう多くはいません。ましてやバラエティ番組で見せる明るいキャラとの振れ幅を考えると、そこに計り知れない埋蔵量を感じさせてくれて、映画好きにとって、何だか得した気分にさせてくれる女優さんであると思うのです。
 目を見はるような美女ではなく庶民的な顔立ち。でもスクリーンの中では輝きを放つこのタイプ、他に誰かいたかな?と考えたのですが、あまり思い当たらなくて、ちょっと前なら小林聡美さんとかがそうかもしれないとか、ああ、キョンキョンが近いのかな、なんて思い当たったのですが、彼女達のように、本来のキャラとは違う様々な役柄で主役でも脇役でもきちんと存在感を示せる女優さんとして、これからますます活躍して欲しい人には違いありません。

 

●聖子さんと40年

 ご存知の通り、このブログは聖子ファンのブログでもあるのですが、過去のエントリーでアクセスを稼いでいる記事を読み返してみると、聖子さんのセルフ作品への不満を書き連ねた内容が多いのです。大体10年前くらいの記事で、アルバムで言うと30周年のMy PreludeMy Prelude(初回限定盤)あたり、今や懐かしい?リョー小倉とのベッタリ期で、30周年をよそに聖子さん自身がマンネリのドツボに陥っていた頃ですね。
そしていま、40周年を迎える聖子さんを見たとき、私は彼女にあの記事を書いた頃のような不満をあまり感じていないことに気付くのです。

 ここ数年の聖子さん、セルフ作品の作詞力は相変わらずながら(涙)、リョー小倉から離れてからはサウンド的には確かに進歩を遂げているし、他者とのコラボにも不定期ながらこだわりなく取り組み始めていたりもします。

特別な恋人(初回限定盤)(DVD付) 薔薇のように咲いて 桜のように散って(初回盤B)(ポスター封入) 永遠のもっと果てまで/惑星になりたい

(コラボシングル。ジャケットはセルフ作品と区別つきませんね…汗)

 何より、ジャズフィールドへの進出は、今の彼女のボーカル・声質を活かすにはベストの選択だったように思えて、それがここにきて実現しただけでも、ファンとしては一時のフラストレーションの大部分は払拭されたと言えるのでしょうね。 

SEIKO JAZZ(通常盤)

SEIKO JAZZ(通常盤)

 

  そう、不満を抱いていたあの頃、聖子さんには私たちファンの声は決して届かないように思えていたけれど、実は私たちの思いは、確かに届いていた…。
そういうことですね。

 改めて、そんな聖子さんに、感謝。そして、祝・40周年!


SEIKO MATSUDA 「Fly me to the moon」Music Video from 「SEIKO JAZZ 2」

 

一日千秋

「一日千秋」の思い?

ここに来てアクセスが急増していまして、久しぶりに一日あたりのアクセスが千件を超えました。

そう、今回のタイトルは「一日千」が正解でした(汗)。

(まあ、いつもながらその後はあっという間に平均件数に落ち着きましたが・・・。)

やはり太田さんのニュースの影響かと思っているのですが、このブログでの安定検索ワード御三家である、聖子、ユーミン、明菜へのアクセスも相変わらず多いようですので、太田さんファンが動いた結果だけでもないようです。いずれにせよ、ありがとうございます。

こうした事は概して実生活とリンクするものでして、何やら公私ともに交際関係が賑やかな?状況だったりもしています。どこか不思議な秋を迎えています。

 

さて太田さん。ご本人のツイッターでは変わらないご様子で何よりです。

考えてみれば時の移り変わりはどんな人にも平等に影響を与えるものでして、私たちはそれを無意識のうちに受け入れて生きているわけで。いつの間にまた今年も秋が訪れていて、やがて鮮やかな紅葉を目にすることになるわけですが、たとえ紅葉の美しさは変わらずとも、背景となる街並みもそれを見る自分自身も、毎年、確実に昨年とは変わっていて。

あと何度、この紅葉を見られるのだろう。そんなことを考えざるを得ない私がいるわけです。(by まりや「人生の扉」)

きっと、太田さんもいま、そんな境地なのかな、と想像しています。だから私も、変わらぬ日常を繰り返しながら、変わらざるを得ないところはまるごと受け入れて、毎日を大切に、日々確かめながら生きていこう、なんて考えています。

これこそが、闘病を通じて太田さんが贈って下さっているメッセージなのかも知れませんね。

 *********

さて、太田さん、聖子さんの多くの作品をアレンジ(ときに作曲)された大村雅朗さんが早逝されてから20年、いよいよ回顧作品集がリリースされました。 

作編曲家 大村雅朗の軌跡 1976-1999(完全生産限定盤)

作編曲家 大村雅朗の軌跡 1976-1999(完全生産限定盤)

 

 ブックレットでは太田さんもインタビューに答えています。

この4枚入りCDが今我家でヘビロテ中なのですが、この人のアレンジの素晴らしさはなにより「イントロ」のセンスとアイデアなのではないか、と改めて思いました。そして様々なタイプの曲を演出しながら、1曲の中のイメージがどのアレンジも、イントロからエンディングまで首尾一貫していて、齟齬がまったく感じられない。そんなところがミュージシャン達にもリスペクトされてきたのだろうな、という気がしました。

実は太田裕美ファンだったという大村さん。そして太田裕美さんにとって、過渡期の大切な時にアレンジで助けてくれた大切な音楽家だったという大村さん。

この追悼盤の中でもやはりこの曲の美しさは格別に思えました。

初夏の曲ではありますが、晴れ渡る秋空にもピッタリの名曲です。


「青空の翳り」 太田裕美