大阪都構想をめぐる市民世論が激しく揺れ動いている、世論が「都構想賛成」から「都構想反対」に変わったのは本当だろうか、共同通信・毎日・産経の共同世論調査を分析する(1)、橋下維新の策略と手法を考える(その16)

 2015年4月6日、毎日・産経両紙は共同通信社と共同で大阪市内の有権者を対象に4月4、5両日に実施した大阪都構想に関する世論調査結果を発表した。この調査は前回の3月14、15両日の世論調査に引き続くもので、質問項目は全部で12問、うち11問までが同じ内容なので統一地方選告示前と告示後の3週間の変化が一目でわかるように設計されている。

 読売新聞も同日、4月3〜5日にわたって大阪市内の有権者を対象にした都構想に関する世論調査結果を発表した。こちらの方は昨年9月の調査に引き続くものだが、前回調査とは半年以上もの開きがあるので、独立した世論調査と見た方が無難である。そこで拙ブログでは、主として毎日・産経両紙の調査結果を前回調査と比較しながら分析し、読売調査のほうは折りに触れて言及したい。

 まず注目されるのは、毎日・産経両紙ともトップで報じているように、都構想に対する賛否が、前回の「賛成43%≧反対41%」から今回の「反対48%>賛成37%」へと大きく逆転したことだ。この段階ではまだ断定的なことはいえないが、前回が賛成と反対が拮抗する「世論2分状態」を示しているとすれば、今回は反対側にやや世論が傾いたということだろうか。

 しかし都構想に対する賛否が反対側に傾いた理由は、まだそれほど明確になっていない。賛成側の主たる理由である「二重行政の解消」はあまり減っていないし(前回50%→今回45%、以下同じ)、「思い切った改革が必要」はむしろ増加している(19%→28%)。一方、反対側の理由も「メリットが分からない」(35%→41%)が増加しているぐらいで、それほど顕著な変化はない。もともと橋下市長の都構想についての説明が「十分でない」(70%→75%)と思っているのだから、賛成側も反対側も確たる理由がないのかもしれない。

 ただ、これまでテレビなどを通して橋下市長の一方的な主張ばかり聞かされ、何となく(ぼんやりと)都構想に賛成していた有権者が、統一地方選の告示前後の頃から都構想反対派の説明に直接触れるようになり、「どこかおかしい?」と思い始めたことが背景にあるのではないか。なにしろ大阪都構想の中身を「よく理解している」(6%→6%)人は1割にも満たず、「ある程度理解している」(50%→47%)はむしろ減り、「あまり、ほとんど理解していない」(44%→46%)が半数近くも占めているのである。こんな状態で都構想の賛否を決めろなどと言うのは「以ての外」であり、橋下氏が首長に求められる説明責任を果たしているとは(口が裂けても)言えない。

 そうなると以前にも指摘したように、大阪都構想への賛否は橋下市長に対する「好き嫌い=支持・不支持」で決まることになり、橋下支持率の動向が鍵になる。この点に関して言えば、今回の世論調査の特徴は橋下市長への支持・不支持の割合が大きく動いたことだろう。前回の「橋下優位状態」(橋下支持52%>不支持40%)から、今回の「拮抗状態」(橋下支持45%≧不支持44%)へ重心が大きくシフトしたのである。

大阪維新は「橋下人気」で持っているようなものだから(個々の議員の力量によるものではないから)、橋下支持率の下降は維新投票意向率(市議選)および維新支持率の低下に直結する。橋下支持率が下降するとそれにつれて市議選維新投票意向率が下がり(36%→29%)、維新支持率も連動して低下する(26%→22%)。この「橋下メカニズム」は変わることがない以上、下降曲線がこのまま続くことになると、4月12日の投開票日には維新が惨敗することにもなりかねない(嬉しいことだ)。

 それでは橋下支持率はなぜ動いたのか。私は大きく分けて2つの要因があるように思う。第1は本質的要因で、これまで橋下市長を支持してきた市民が都構想について疑問を持ち始め、「ちょっと待て!」と思い始めたことだ。この動きが広がると都構想の曖昧さやいかがわしさが明らかになり、それを強行しようとする橋下氏や維新の「決める政治」の独断専行的・ファッショ的本質が暴露されるようになる。橋下支持率の構造的低下が引き起こされるようになるのである。

 第2は、「浪速のエリカ様」といわれる橋下チルドレン(女性)が、国会予算本会議を休んで「ホワイトデー温泉旅行」に出かけたという疑惑の広がりの影響だ。私のこの種の情報にはあまり詳しくないので的確に語れないが、それでもこの間のテレビのワイドショーの盛り上がりや日刊現代夕刊フジなどの売れ行きなどを見ると、もはや無視できない「政治マタ―」になったことは否定できない。しかも、スキャンダルが暴露された時期が悪かった。統一地方選の告示直前にスキャンダルが発覚し、4月3日の告示日の第一声で橋下市長が弁明に追われるという失態を演じることになったからだ。

選挙中の統一地方選大阪都構想住民投票への影響を恐れる維新の党と「大阪維新の会」は4月4日、当該女性の除名処分を即刻決めたが、彼女は「議員の身分は法に触れない限りは奪われない」、「それだったら除名で結構」、「初心に帰って無所属議員として一から出直す覚悟」と開き直ったという。この間の一部始終がテレビなどを通して流れる中で世論調査が始まったのだから、若い世代とりわけ若い女性に悪感情を与えた影響が大きかったのでないか。(つづく)