次から次へと出てくる森友・加計疑惑の新事実、安倍内閣改造は政権浮揚につながらない、国民世論は安倍内閣を拒否し始めた(3)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その75)

 安倍内閣改造直後の数日間、マスメディア各社による世論調査が一斉に行われた。調査実施日は、毎日、読売、日経、共同通信が8月3、4日、朝日が8月5、6日だ。内閣改造後の内閣支持率の動向は、各社によって相当の違いがあるとはいえ、いずれの結果も支持率が若干回復し、その分だけ不支持率が減るという傾向を示した。安倍政権は、これでひとまず内閣支持率が下げ止まり、「V字型」とまではいかないが、今後は着実に回復できると期待しているようだ。

 だが、いずれの調査においても不支持率が支持率を上回っていること、及び支持する理由が「これまでよりもまし」「ほかに適当な人がいない」といった相対的理由であるのに対して、支持しない理由が「首相が信頼できない」という絶対的理由である点が注目される。いわば、安倍内閣の支持基盤が不安定で流動的であるのに比べて、不支持を表明している世論の方がより確かな社会基盤を形成していると言っていいだろう。

 加えて、内閣改造後から次々と森友・加計疑惑に関する新事実が出てきていることも注目される。8月4日には森友学園(前理事長)の籠池夫妻が昨年6月、近畿財務局との国有地売買契約をめぐる交渉で、地中からごみが新たに出てきたと難癖をつけ、損害賠償請求をちらつかせて「0円で買いたい」(タダでよこせ)と要求していたことが発覚した(毎日新聞、8月4日)。

このやりとりをめぐる生々しい録音は、フジテレビでも流れた。妻の諄子容疑者が担当者に対して「鬼!」と怒鳴り散らすなど激しい剣幕で迫り、財務局側が土壌改良費としてすでに1億3200万円がかかっているので、それ以下では売れないとひたすら言い訳していたのが印象的だった。また、籠池容疑者が近畿財務局担当者に「ぐーんと下げていかなあかんよ」と求めたのに対して、担当者側は「理事長がおっしゃる0円に近い金額まで、私ができるだけ努力する作業を今やっています」などと応じている(朝日新聞、8月5日)。要するに籠池夫妻容疑者は、昭恵首相夫人の存在を「葵の御紋」にして近畿財務局を恫喝し、最終的には土壌改良費に僅か200万円を上積みしただけのタダ同然の価格で国有地を手に入れたのである。

既にそれ以前においてもNHKのスクープによって、近畿財務局が森友学園に対して「いくらなら出せるか」として事前交渉していた事実も発覚している。財務省の佐川理財局長(現国税庁長官)は今年3月、衆院財務金融委員会で「財務省が価格を提示したことも、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」と答弁しているが、それが「真っ赤なウソ」であることが動かぬ証拠で明らかになったのである(朝日新聞、8月5日)。佐川氏は先月5日に国税庁長官に就任しているが、恒例の就任記者会見をいまだ開けないまでに追い詰められている。

次いで8月6日には、政府の国家戦略特区ワーキンググループ(八田達夫座長)が2015年6月、獣医学部新設提案について愛媛県今治市からヒアリングした際、加計学園関係者が出席して質疑にも答えていたにもかかわらず、内閣府が公表した議事要旨には加計学園関係者の名前も発言内容も一切消されていたことが発覚した(朝日新聞、8月6日)。8日には、愛媛県ヒアリングの内容を非公開にすることを希望したとの部分が削られ、議事要旨が改ざんされていたことも明らかになった(同、8月8日)。ワーキンググループは7日、今後公表する予定の詳細な議事録においても、加計学園側の発言は「公式発言ではない」として掲載しない方針であり、ヒアリングの速記録についても「用済みになったので、今は存在しない」(破棄した)としている(同)。

 八田座長は今年7月、衆院予算委員会でワーキンググループは、「議事を公開している。一般の政策決定よりはるかに透明度の高いプロセス」であり、「一点の曇りもない」と言明した。安倍首相も今月3日、内閣改造後に出演したテレビ番組で「国家戦略特区ワーキンググループの議論はすべてオープンになっている」と口裏を合わせた(朝日新聞、8月6日)。しかし疑惑の渦中にある加計学園関係者の発言はおろか出席自体も議事録から抹殺しようとする動きは、まさに国民には「臭いものに蓋をする」行為だと眼に映る。「李下に冠を正さず」どころか、「盗んだ李を隠す」ような行為だと思われても仕方がない。

 今回の各紙世論調査の中で、私が注目したのは朝日新聞の結果だ。内閣支持率は、前回7月調査の33%から35%へ、不支持率が47%から45%へとほぼ横ばいで変わらなかった。これは他の各社の調査実施日が改造直後の8月3、4日だったのに対して、朝日は2日後に調査をずらしたことの影響だろう。改造直後はニュースが溢れているので何だか内閣が変わったような印象を受けるが、3日目、4日目となると事態の構造が冷静に見えるようになる。その結果、内閣支持率があまり動かなかったのだ。

 加えて、加計学園に関する質問の中で、「加計疑惑が晴れた」6%に対して、「疑惑は晴れていない」が83%に達したことも注目に値する。「今回の内閣改造は、安倍政権の信頼回復につながるか」との質問に対しては、「つながる」26%、「つながらない」55%だったことも同様だ。つまり、加計疑惑(森友疑惑も含めて)を100%解明しない限り、安倍首相に対する信頼は戻らないのである。

 安倍首相が改造後の記者会見でお詫びの言葉を神妙に並べるのもよい。10秒近く頭を下げるパフォーマンスもいいだろう。でも、国民はもう騙されないと思った方がいい。世論調査の結果を素直に読めば、「論より証拠を示せ」とみんなが思っているのである。その目の前で凝りもせずに百日一日の如く「森友隠し」「加計隠し」を続ければどんな結果が待っているか、馬鹿でもない限り誰もがわかっているはずだ。「わかっちゃいるけど止められない」のであれば、国民に引きずり下ろされるだけの話なのである。(つづく)