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2010-02-13

『教育改革のゆくえ――国から地方へ』(小川正人)

教育改革のゆくえ ――国から地方へ (ちくま新書 828)

教育改革のゆくえ ――国から地方へ (ちくま新書 828)


教育再生懇談会委員、中教審委員なども務めた元東大の先生の新刊。


小川先生のプロフィール(http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480065360/)。


1950年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学、教育学博士。東京大学大学院教育学研究科教授を経て、2008年より放送大学教授。専攻は教育行政学研究者の立場から国や自治体の政策づくりに関わる。福田・麻生内閣教育再生懇談会委員や、2006年に約40年ぶりに国が行った小中学校教員勤務実態調査の研究代表をつとめた。現在、文科省の中央教育零議会委員、日本教行政学会長(08〜10年)等。著書に『市町村の教育改革が学校を変える』(岩波書店)、『現代の教育改革と教育行政』(放送大学教育振興会)、『分権改革と教育行政』(ぎょうせい)、訳書に『日本の教育政策過程』(三省堂)などがある。(写真提供:共同通信社


公教育について理論も実践もやってきた先生が書いた新書ってことで、教育問題には興味あったから買って読んでみた。小川先生自身が書いているとおり、この本は教育の内容(カリキュラム、教え方)に関わるものではなく、公教育を取り囲む中央と地方の制度についての本だ。


こうした教育を取り囲むハードな問題の中核にあるのが、「義務教育国庫負担制度」と「教育委員会制度」で、昨今の「政治主導」の流れが教育行政にも波及するにつれてその影響をもろに被っているのがそれら2つの制度。2つとも、各自治体が独自性をもった教育をしながらそれと同時に日本国民としての最低限共有していてほしい能力を子供に与えることのできる仕組みってなんだろう、そのことと関係してくる。


読んでいて自分の無知さに驚きを隠せなかったのは、公教育にかかわる非常に基本的な点について「へー知らなかった」という事実がとても多かったこと。その中でも公立学校の先生の給料が誰によって支払われているのかということは知っておくべきじゃないかな。


ブログなのですぐに答えを言ってしまうのだけど、国と都道府県が払っている。「へー」である。ねじれているのは、市町村の公立学校の先生は市町村の役人なのに、給料は国と都道府県が払っているということだ。三位一体の改革以前は国が半分払っていたが、それ以降は3分の1になった。


国が払う金の削減は地方への税源移譲でまかなうってことになっていたんだけど、そんなにうまくいくわけないでしょってなことで、金がある自治体とそうでない自治体とのあいだで「教育格差」がでてきちゃった。教員の一部を非常勤にしてみたり、給料を下げてみたりってな形でね。「準要保護家庭」に対する就学援助補助金が2004年に廃止されて、補助は市町村が独自にやるようなしくみになると、金がないとこは「もうできません」って。


じゃあ、やっぱり改革以前に戻すべきなのか、どうなのか。最後のほうで小川先生は国による「財源保障機能」と「財源調整機能」を分けるべきだってなことを主張している。これは、ベーシック・インカムみたいな話で、教育の「ナショナル・ミニマム」の部分は全額国が払って(保障機能)、ミニマムの上に付け足す部分は各自治体の自由な創意と国による調整で対応してこうってことだ。


これはとてもわかりやすい話で、直感的には賛成したくなる。でもよくわからない。そもそも教育の「ナショナル・ミニマム」ってなんだろうか。これからの日本人が全員身につけているべき最低限の力ってなんだろう。


ここからはただの雑感になるけど(教育委員会制度については直接本を読んでみて)、社会のいろんな問題について人と話していると、「やっぱり教育だよね」みたいなオチになって話が止まっちゃうことがよくある。なんだか、「教育」というものに過剰な期待と責任を負わせてしまったりする。


だけどどうなんだろう。確かに、ふつうにお金がなくて塾に行けないから入りたい高校に受からないってなこととかは改善すべきだと思う。だけど、そこんとこを手当しちゃえばオッケーってな話なのだろうか。とりあえずGDPあたりの教育予算をがんがん上げていけばいいのか。


実のところ問題は、「一体何を教えていいのか大人もよくわかんない」ってことじゃないのか?


大人たちは最近の子供が「ダメ」になってきた思ってる。そして未来の日本を「ダメ」にしないためには「教育」を変えなきゃって思ってる。でもどうやって?字は読める、九九は言える、え?言えないやつが増えてきたって?じゃあそこを手当すればオーライなのかな?


コミュニケーション能力?貧乏なギャル男とかいっぱいいると思うんだけどどうなんだろう。へらへらしてるやつを就活勝ち組とかいって調子のせちゃう国でいいのか?うーんどうすれば???


言ってしまえば、人間の様々な能力が「人的資本」として、要は「利潤」を生み出す大きな源泉の1つとして重要視されている現状では、義務教育の「ナショナル・ミニマム」が何かって話は、どこにいくら投資するかって問題と一緒で確固たる答えはないってことなんだろう(だってどの会社の株を買えばちゃんとリターンが返ってくるのかなんて事前にわかんないでしょ)。


これからは「やっぱ教育だね」で終わらないようにしないと。


あー小川先生の本とはあまり関係のない話になってしまった。勉強になるいい本でしたのでぜひ。

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