おーい!待ってるよ!!!!

彼女に初めて出会ったとき、奇麗すぎて目を合わせられなかった。

私と違って美容に気を遣っているのがわかるツヤツヤの髪と女性らしいネイル、一点の隙もない真っ白で陶器の様な肌。

なかなか打ち解けづらくて仲良くなるのに時間がかかった。

私は、イタリア留学から帰ってきたところで、率直な感情表現の隠し方がわからず、就職活動にもあまり身に入らないまま派遣の仕事を始めた。

そんなときの職場で出会った。

お互い30代で、やみくもに働くだけの生き方が限界に思え、新しい生き方を模索してたときだったんだと思う。

キャリアじゃない何かを信じて心の中にある何かを無視できなくて、つなぎの様な仕事をする自分が落ちぶれた気がして、お互い心に抱えているものがあった。

仲良くなると、彼女の好きなものに対してきちんと取り組んで人生を楽しむ姿に惹かれた。
料理上手で、しょっちゅう美味しそうな食材を買っては、料理と食事を楽しみ、動物が好きで二匹の犬を飼っていて、毎日散歩にいってた。休みの日に動物園のボランティアも始めた。音楽が好きで、ライブにも足を運んでいた。

仕事にきちんと取り組み、覚えるのも早く、同僚には頼りにされ、上司には大事にされた。
飛び抜けた美貌をもちながら、慢心しない彼女が好きになった。

お互いうまくいかなかった恋があり、進むべき道さえわからなかった。

そんな彼女が恋をした。
妊娠をした。
シングルマザーになることに決めた。

彼女が作るお弁当は、プロ級でブログに載る彼女の料理は、本屋でみる料理の本よりわくわくした。
赤ちゃんのためにつくった手縫いのベビードレスや長肌着、にぎにぎは本当に可愛くて赤ちゃんに対する愛がこれでもかと伝わってくる。

彼女は、ご両親を亡くしていて、頼れるわけではないので、ギリギリまで働いた職場を辞めて、一生働くための資格の勉強を始めた。どれだけ洋服もってんだ?!っていうほどファッショナブルな彼女には、そぐわない様な堅くて堅実な仕事の資格だ。
一発で合格した。
その事を知った時、私は泣いてしまった。

彼女の愛は、なんてレベルが高いんだろう。人間はなんて素晴らしいことをやってのけるんだろう。彼女がみせてくれた愛には、依存も甘えも打算もない。
まっすぐに命を祝福している。
人間てすごいなあ。

スーパースターのホームランの球を見上げるような眩しさで、彼女の人生を見つめてしまう。

今日おしるしがきたらしい。
どうか無事にうまれてください。あなたのママの友達になれたことを誇りに思う者より。