女心と秋の空

すっかり夏が去って
どうしても昼と折り合えない夜の住人、な私にとって
夜が長くなってくると体調も優れて来、力が漲って来る。
夜になると鞄に本を忍ばせ、熱い珈琲を飲みに出るのが最近の楽しみになっている。
高く、澄んだ空気や、冷たくなった風を吸い込みながら歩いて
お店の扉を開けばやんわりと、暖房がかかっていて、暫しソファに沈没し、素敵な人の記した本を開く。


女心と秋の空

女心と秋の空

珈琲のお供は珠玉のこちらを。


美しい日本語で丁寧に綴られた本書。
一文字一文字を辿っていく毎に、自分自身も折り目正しく作られていく感じがする。
筆者の美がどの様なもので構成されているのかを知る。
決して内面は外面を裏切る事は無いのだな、と改めて思ったり
そして、ほんのちょっとした事、
ちょっとした選択が人の佇まいや気配まで変えてしまうのだろう(自戒)。
「気配の美しい人」になりたいですね。



今の暮らし。
静かな生活が送れているのは、本当に有難い事。
イメージしている「なりたい自分」にはまだ遠いけれど、「ここにいる私」も楽しむ。
夜中に吃驚するほど辛い本格的なグリーンカレーを炊いてみたり、
材料の調合の納得の行くまでパンケーキを試作してみたり、創る事が楽しい。
お店に並ぶスイーツ類にも必ず「ハマりもの」がある季節・・・。
秋の夜長は食に貪欲になる。
心なしか頼りなかった腰周りが少しふっくらして来た様な・・・。


苦痛を挙げたり、多くを望むまい。
人を相手にせず天を相手にせよ、と言ったのは西郷隆盛だったか。
dum fata sinunt vivite laeti(運命が許す限り嬉々として生きよ)、
これも良い言葉です。
外側の事象ではなく、自身の良心に従い、燃料をフルに燃やして生きる事のみ。
相手は、自分なのだ。
人に決められる事の嫌いな私は、人の目を気にせず、人に合わせる事無く・・・
気の赴く方向に歩ける生き方を、こだわって選び取っていきたい。


静かでアンニュイな音楽と落とされた照明の店、
甘ったるいお酒や珈琲、落ち着いた言葉で語る友・・・共に過ごしたいもの達。
静かで美しい秋を。