クリスマスも正月も仕事をしてたのだ

 三賀日は、結局、家で仕事をしていた。
 指導している院生の修論の仕上げにつきあってたのもあるけど、主には、
1月20日に発売される新著
 『数学でつまずくのはなぜか』講談社現代新書
の最終校正をしていたからだ。
そういえば、初校を校正したのは、クリスマスだった。編集者の
陰謀にみごとにはめられたようだ。


 それで思い出したのは、ディケンズの名著『クリスマスキャロル』である。
ぼくは中高生のとき、クリスマスには必ずディケンズの『クリスマスキャロル』を読んだ。
いろんな文庫で違う翻訳が出ているので、毎年違う翻訳を読んでいくことにしていた。
薄い小説なので、クリスマスイブの一日で読めてしまうのがちょうどよかった。


ご存じだと思うが、『クリスマスキャロル』というのは、イブの夜に従業員を働かせて家族
と過ごせなくするごうつくばりの経営者スクルージを死んだ親友の幽霊がこらしめる話である。
息子がもう少し大きくなったら、この本をプレゼントしたいと思う。
まあ、ぼくは家で息子と駅伝を観ながら校正をしてたので、お化けは出てこないとは思うけど。


ついでに思い出したのが、昔のアルバイト先の同僚のことだ。
経営者が、イブの夜に勤務を入れようとしたところ、そいつは
「イブの夜に仕事するくらいなら、ぼくは即刻退職願いを出します!」
とのたまわったのだ。 それでぼくは、彼をイブ男と名付けた。
ところが、このイブ男、翌年のイブにはなぜか率先して仕事を入れた。
ぼくがその理由は?と問うと、こう答えたのだ。
「イブの夜には1人しかデート入れられないじゃないですか、で、デート入れなかったオンナは、
自分が本命でないと気づくじゃないですか。でも仕事入れておけば、今日は仕事はいっちゃった
んだよー、ってことで、すべてのオンナが納得するじゃないですか」
こいつは絶対幸せにはなれない、そう思ったが、その後、モデルと結婚し、
今は幸せにやっている。世の中には、公正な神なんかいないわい。


クリスマスの物語は、映画「シザーハンズ」とかいろいろあるけど、すごく好きだったのは、
内田善実さんのマンガ『イブによせて』だ。
1975年のりぼんに掲載したもので、『星くず色の船』に所収。
 9歳で難病で死んで行く妹のために、イブの夜に天使を見せようとして、街を探し回り、
美少年だけどしょーもない男の子に天使役になってくれるよう懇願する、というストーリー。
妹は、天使が来て自分を連れて行くと信じているから、天使に「君を連れていくことはしない」
といわせようとするたくらみなのである。しかし、断られてあきらめることになる。
ところが、その美少年は、しょーもないやつなんだが、けっこう気のいいやつだったのだ。
雪降るイブの夜にそのしょーもない少年だが美形の天使が、窓から突然登場する、という
ラストシーンはめっちゃ泣けた。
内田さんのその後の活躍を予言する作品だったと思う。
たぶん、この少女マンガは50回ぐらい読んだ。

内田さんのマンガについては、語り出すと止まらないので、今日はこのあたりで
やめとこう。続きはいずれ。