いつのまにか、ぼくの本の電子書籍が出たようです

ダイヤモンド社の担当編集者から、拙著『完全独習 統計学入門』ダイヤモンド社電子書籍版が刊行された、という連絡を受けたので、せっかくだから当ブログで宣伝しておこうと思う。キンドル版へのリンクは以下。
 

楽天だと
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hontoだと、
完全独習 統計学入門の電子書籍 - honto電子書籍ストア
この本は、今年だけで(まだ6月なのに)すでに3回も増刷がかかった。ダイヤモンド社の西内啓『統計学が最強の学問である』が爆発的に売れていて、そのおこぼれにあずかっているのだと思う。実際、『最強』本の書評を日経から頼まれて、「今を読み解く」というコーナーで統計学について書いた。この書評も結構ウケたみたいで、紹介した4冊はすべてアマゾンのランキングが、瞬間的に2ケタになった(『最強』はもともと2ケタだったけど)。評者としては誇らしいが、自分の本を紹介できないのが残念だった。だって、紹介した4冊より、ぼくのこの『完全独習 統計学入門』ダイヤモンド社のがいい本だと思うもん(言うまでもなく当社比)。統計学ブームはまだまだ続くようで、ある新聞から、統計学について解説記事を書いて欲しいという注文がきた。それはたぶん、7月くらいには掲載されるので、そうしたら、当ブログでも告知する。
誤解を避けるために言うと、この本は今年急に売れ始めたわけではない。実際、最新の増刷で17刷になった。初版は2006年だから、毎年2刷以上増刷されている計算になる。部数的にも売り上げ金額的にもぼくの本でトップの本になった。
 「今を読み解く」で紹介する『最強』以外の本をみつくろうために、本屋でいろいろな統計学の入門書を買ったみた(『最強』を主軸に据えることは日経側の要請)。自慢に聞こえるのは不本意なんだけど、世の中の統計学の入門書の大部分は、工夫のない、つまらない本みたいに思えた。みんな、結局、「自分が教わったそのまんま」に書いている。だから、検定にしても区間推定にしても、「どうして、そういう計算をするのか」「どうして、そういう統計量を使うのか」「どうして、そういう判断をするのか」にはほとんど言及していない。きっと、著者たちは、自分たちでも疑問に思ったことがないのだと思う。「そうやるもの」だと暗記しているのだと思う。だから、判で押したように、みな同じ書き方をしている。まあ、どういう勉強をしようと、人の勝手だとは思うが、さきほどの3つの「どうして」に疑問を持たずに統計学を学習者に教えることができる人の気が知れない。ぼくには、「わかってないことを教える」度胸はない。まあ、批判や皮肉を言うのが本意ではない。「どうしてこんな面白いことを勉強しないでいられるのか不思議だ」、という疑問がぼくの本音なのだ。
統計学の面白さは、数学的な計算法にあるのでなく、それを取り去って裸にしたときに残る「思想」部分にあるのだと思う。このことについては、昔、統計学の面白さはどこにあるか - hiroyukikojimaの日記に書いたので、ここでは繰り返さないが、統計学の「思想」は、「正当化」+「哲学」と表せると思う。「正当化」というのは、「最小分散不偏推定量」とか「最尤推定量」とか「ベイス事前分布」とか、そういうところに現れる。そして、「哲学」というのは、その「最小分散」とか「最尤」とか「ベイズ」とかを、「なぜ、妥当な方法論と考えるのか」という、いわば「自然の見つめ方」として表出するものだ。ぼくは、大学院で受講した統計学の講義において、「正当化」部分を知って、溜飲が下がり、それまでの統計学への違和感を払拭できた。そして、「哲学」の部分は、(大学院の先生は表立っては主張しなかったので)自分なりに勉強し考えた。そうしたら俄然、統計学が魅力的なものに変わった。(最強とはいわないまでも、笑い)面白くて仕方ない学問になった。だから、本学での統計学の講義では、この「正当化」部分と「哲学」部分を、できるだけ隠し味として混入させるよう試みている。それが、学生さんたちに統計学の魅力を感じ取ってもらえるために有効なレシピだと思ったからだ。その講義の成果を本にしたのが、本書『完全独習 統計学入門』ダイヤモンド社なのだよ。
 7月に新聞に書く、統計学の解説では、その「思想」=「正当化」+「哲学」部分をできるだけ打ちだそうと思っているので、乞うご期待。
 さて、実はぼくは、この本がぼくの著作の電子書籍第一号だと思い込んでいたが、そうではなかった。さっき、講談社から、印税の通知が届いて、講談社ではすでに3冊の電子書籍が刊行されていることを初めて知った(報告されたけど、忘れてただけかもしれない。笑い)。そんなわけで、遅ればせながら、一冊だけリンクを張っておこう。