SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ハナシマさん

[著者:天宮伊佐/イラスト:ヤマウチシズ/ガガガ文庫]★★

ハナシマさん (ガガガ文庫)

ハナシマさん (ガガガ文庫)

 第10回小学館ライトノベル大賞『ガガガ賞』受賞作。

 杜秋教授の解説を読んでいると、特に今回の殺人
犯の動機思考について、現実世界でも本当にありそ
うだと思わされた瞬間に震えが来ました。フィクシ
ョンだと理解していても妙に彼の話術に引き込まれ
てしまうと言うのか、非常に人身掌握術に長けてい
る印象だったでしょうかね。その辺りを物語の文章
に乗せて表現されている所に巧さを感じました。
 当初の晴海のように、幽霊の仕業なんて脅された
所で鼻で笑うしかなかったのですが、そこに杜秋教
授の解釈が乗っかると途端に信憑性が増してしまう
のが恐ろしいです。信じなくても「あるのかな?」
と思わされてしまう。言いたい事はいろいろあれど
も、オチの付け方に納得なのはここがあってこそ。

ヒイラギエイク

[著者:海津ゆたか/イラスト:やすも/ガガガ文庫]★★

ヒイラギエイク (ガガガ文庫)

ヒイラギエイク (ガガガ文庫)

 第10回小学館ライトノベル大賞『優秀賞』受賞作。

 閉鎖的な限界集落の過疎地に、部外者を排他する
かのような含みのある大人達の態度。あからさまに
秘密があると、雰囲気で示しているようなもので。
 ただ、出海は押すか引くかで言うと、引くタイミ
ングを弁え過ぎている少年で、こりゃ無遠慮に首突
っ込むとか間違ってもできないだろうなあ、と諦め
るしかありませんでした。出海のそんな所が、欠点
であると同時に好感抱ける良い点でもあります。
 まあたとえ押しが強かろうと秘密に迫れるとは思
えませんでしたが。護ろうとする意志の固さは凄ま
じいものがあり、好奇心で殺されていたかも知れま
せん。そんな中での出海の勇気は称えるべきもので
しょうね。余韻の残る結末は大好きなものでした。