hkonoの日記

2012-05-10

帰国のお知らせ、セミナー発表者募集、RA募集

10:58

前回のポストで書いたとおり、

4月1日に帰国しました。


アジ研ではランチセミナーを開催しており、

発表者を募集しています。

http://www.ide.go.jp/Japanese/Event/Apl/index.html

申し訳ないことに大学院生には謝礼は出すことはできませんが(講師以上の方であれば薄謝が出ます)、

発表自体は歓迎します。

自分も、日本にいる限りはほぼ出席しています。

セミナーで報告したいと思われた方は、

上記サイトの連絡先までご連絡ください。


また、個人的に、

データセット構築のRAを募集しています。

Stataのprogramコマンドなどに慣れている方が望ましいです。

たとえば、データの重複などもあるので、

重複データを見つけて、内容(指示した変数、あるいは何も支持していない場合は全変数)が同じの場合には、

重複しているものを一つだけ残し、

内容に違いがあればエラーが出て、

内容が違うけれどidが同じObservationに対しては1、それ以外は0を与える "_differ" という変数を生み出す

以下のようなプログラムを使ったりしています。

すべての重複するIDを確認して、重複するIDは全部同じ内容になったと判断した跡で、

drop if _dupnumber>1

で重複しているため必要のないObservationを削除できます。

何度も同じような処理をする場合には、このようなプログラムを書くことで、

コードも読みやすくなるし、エラーも減ります。


capture program drop dupli

program dupli

syntax [varlist], BY(varname)

tempvar dum samehh

gen `dum'=1 if `by'<.

by `by', sort: gen _dupnumber=sum(`dum')

by `by', sort: egen `samehh'=total(`dum')

gen _duplicate=`samehh'>1

gen _differ=0 if _duplicate==1

set trace on

foreach x of local varlist{

by `by', sort: replace _differ=1 if `x'!=`x'[_n-1] & _n>1 & _duplicate==1

by `by', sort: replace _differ=1 if `x'!=`x'[_n+1] & _n==1 & _duplicate==1

}

preserve

keep if `samehh'>1

foreach x of local varlist{

by `by', sort: assert `x'==`x'[_n-1] if _n>1

}

end

ある程度は、programの使い方について簡単にですが教えることもできると思うので、

データ処理は面倒ですが、仕事を通じて、少しは効率的なコードがかけるようになるかもしれません。

ご関心のある方は、

hkono "atmark" ide.go.jp

までご連絡ください。

バングラデシュ出張

10:45

4月1日にボストンから日本へ帰国。

それから、E-educationのプロジェクトで、バングラデシュに行ってた。

そしてまた来週から、ベースライン調査のセットアップのために、バングラデシュへ再渡航


前回のバングラ出張は、かなりばたばたして、

ビザを取るのを忘れていたのを、出発前日の深夜(出発日の早朝)に気づいて、

非常にあせった。


家にはネットもまだつながっていなかったし、

iPhoneが唯一のネットへの接続手段で、

Twitter情報収集したら、

無理、だめ、という情報、

空港での到着ビザで大丈夫との情報、

以前は到着ビザで大丈夫だったけど今はだめという情報、

いろいろ錯綜して心配だったけど、

同僚が教えてくれた移民局のこのHPの情報を信じて

http://www.immi.gov.bd/land_permit.php

成田に行った。

ビザがないとそもそも飛行機に乗せてもらえないかもと恐れてたけれど、

キャセイのチェックインの人はビザの有無もチェックせず搭乗券くれて、

逆に怖かった。


で、バングラに着いたら、

なんてことはなく、到着ビザが何の問題も無く取れた。

本来は50ドルらしいけど、

お金を財布から出すと「日本人はお金要らない」と言われて無料でビザ発行してくれた。

その後でやっぱり小さな部屋に手招きされて”Give me some help”と言われたので10ドル渡して任務完了。

10ドルだったら、目黒に行ってビザ申請して、また次の日目黒パスポート受け取りに行くより、

はるかにお得。

到着ビザは一回限りだから、

6ヶ月以内に数回バングラに行くようなことがない限りは、

到着ビザが便利だと思う。


バングラの空港の職員も、

インドに比べてはるかにPoliteでFriendlyだし、

汚職があるにしてもFriendlyな汚職で、悪い感じはしなかった。

国家の財政としては多少の損失ではあるけれど。


バングラでは、ダッカに二日滞在した後、

フェリーとオートリキシャを乗り継いで、E-educationの現地責任者のマヒンの村へ行った。


フェリーでChandpur港に着いたときはもう薄暗くなっていて、

オートリキシャでだんだん暗くなっていく道を進んでいく。

まだ未電化の村も多く、

一人当たりGDPが同程度だった5年前のベトナムより、電気や道路を含めたインフラはかなり劣っている。

どこにも電気がないから真っ暗で、夜になるともう人はほとんどの活動ができなくなる。

そんな暗闇の中、時々電気がついている家があって、

人々が集まっていたり、料理やら何やらをしているのを見て、

改めて電気の大切さを感じた。

自分は学者なので、ビジネスやどういう商品がヒットするかの感性がないし、

ソーラーランタンも、今まではあまり関心がなかったけど、

今回、身にしみてソーラーランタンはすごい発明なんだと認識した。

それと、購入したNOKIAの携帯も、一番安い1700円程度のものだったけど、

懐中電灯の機能もついていて、

貧困国向けによくデザインされてると感じた。


マヒンの家には、電気が来ているけれど、

国全体で電力供給が不足しているので、

全体の電力消費量が少なそうな朝の数時間しか電気がこない。

マヒンの家には日本人がたくさん来るので、

今回新しくジェネレータを導入し、滞在中に家の中にトイレもできた。

ジェネレータ発電は高いので本当に必要なときしか使わないし、

トイレも滞在中に完成したので、最初の数日はマヒンの家の前にある井戸で水浴び(もちろん外なのでパンツははいたまま)をするしかなかったので、

電気のありがたさ、家の中で体を洗えることのありがたさを身にしみて感じた。

ちなみに、教師で農園経営や魚の養殖もしているマヒンのおじさんの家は、

まだ未電化の村にあるので、

ソーラーパネルで太陽発電していた。


マヒンは去年ダッカ大学を卒業してダッカ大学の大学院に進んだが、

E-educationのプロジェクトに集中するために、

大学院をやめた。

というか、生徒がダッカ大学に合格できるようにE-educationをちゃんと運営しようとすると、

とてもじゃないが学業とは両立できない。

E-educationは、日本の大学生が現地に飛び込んでプロジェクトを始めてダッカ大学への合格者も出したというので、

最近いろんな記事にのって知名度も高くなってきたけれど、

バングラデシュでは、まったくの無名。

実績も何もないに等しい。

だから、大学の先生も、親や親戚も、大学院を辞めてE-educationに集中することを理解してくれなかった。

そうして周りが理解してくれない中で、

去年、生徒に数千タカ課金することにして、最終的に生徒が10人しか集まらなかったときには、

本当に心が折れたらしい。

一生懸命勉強して合格したダッカ大学を結局は辞め、

周りの人からは反対され、

他を犠牲にしてまで取り組んだE-educationもうまくいかないとなると、

信じるべきもの、自分自身を支えるべきものが見えなくなって、

自分の進むべき未来が見えなくなる。

そんな時、アツがかけてくれた、この言葉に救われたらしい。

「人生には、二つの経験しかない。成功の経験と、失敗の経験。

僕らはもう失敗の経験をしたんだから、あとは成功の経験をすればいいだけだ」

理屈っぽい自分には、

「でも問題は、どうやったら成功の経験ができるようになるか、わからないことなんだ」

と思いそうになるけれど、

そのときのマヒンには、

この言葉が最高の栄養ドリンクだったみたいだ。


この話は、Steve Jobsスタンフォードでのスピーチを思い出させた。

http://news.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html

Jobsは、20歳で金銭的理由(そして大学がどのように自分の将来に役に立つかがわからなかったため)で大学を辞めた。

その時は何も当てもなく、

ただ、きっと大丈夫、と信じて進んでいくしかなかった。

大学を辞めた後、必修科目をとる必要がなくなったので、自分の好きな授業だけとって、

その中に、Caliographyの授業があって、それが今のコンピュータの様々なフォントのもとになった。

後から見れば、あの時のあの選択がなければ今の成功はない、と思うものが色々出てくる。

ただ、実際に選択する時点では、将来どうなるのか、それが本当にうまくいくのか、知ることはできない。

でも、将来どうなるかわからないからと立ち止まっていたのでは、何もすることができない。

だから、自分のガッツなり、運命なり、カルマなり、何かを信じて大きな決断をしなければならない、自分の信じた道を突き進まなければならない、

というような話をマヒンとしたのだが、

このSteve Jobsスピーチは、今も通勤途中とかによく聞いている。


その数日後、暴風雨が来て、どこかの電線がやられたらしく、

それから数日の間、電気が通じない見込みになった。

夜、ジェネレーターで電気を起こしていたら、近所の人が10人以上やってきて、携帯の充電をしてた。

携帯は村の人々にとってもかなりの必須品になってきている。

もう寝る時間になったところでさらにもう一人やってきたが、さすがにお断り。


そうこうしているうちに、

某大臣が車のトランクに大金を隠していたのが見つかり辞職する騒動になったり、

最大野党BNPの幹部が行方不明になって、それを与党の仕業と見たBNPゼネストを始めたりと、

政治が混乱してきた。

車両に対する投石や放火、手製爆弾など、治安もやや悪化してきた。

汚職などのほかにも、人々は、親印とされる政府インドへの弱腰対応にも憤っているらしいく、

乾季にインドが上流で川をせき止めてバングラに水がこなくて農作物が被害をこうむったり(30%の水を流すという合意があるがまったく守られてない)、

毎日インド国境で何人もバングラ人が(国境近くを通っただけで)殺されたりしてるのに、

そういったことがずっと放置されて未解決のままだそうだ。


帰国日の直前3日間にわたりストがあって、

スト初日はフェリーも止まってしまって、ダッカに戻れないんじゃないかと心配したが、

二日目はフェリーが何とか出たのでそれに乗ってダッカに戻り、

無事帰国することができた。


ただ、家計調査データ買おうと思ってとりあえず8万円分両替して別に持っていたが、

結局ストで統計局に行けなかったので、次回の出張で使うために8万円分76000タカをバックパックに入れてたら、

空港のセキュリティで引っかかって米ドルに無理やり両替された。

8万円だから問題ないかと思ってたけど、結構厳しい。

空港職員の人が「100ドル以上あるじゃないか」と言っていたので、

100ドルくらいが目安らしい。


今回が初めてのバングラだったが、

ストとか停電とか色々あったものの、

バングラ人はインド人に比べてはるかにFriendlyでPoliteだし、

こっちの話もちゃんと聞いてくれるし、

とてもすごしやすかった。

主にマヒンとつながりのある人とあっていたのも大きいかもしれない。

インドに行っても、現地語を学ぼうという気にはなれないんだけど、

ベンガル語はちょっと勉強してみようかなという気になった。

2012-03-28

川崎開幕メジャー入り

07:13

川崎が開幕メジャー入りしたが、イチローのこの言葉に尽きると思う。

「大変そうなことを大変そうにやっている人はいっぱいいる。でもあいつは、それを見せずに元気いっぱい。みんながムネとプレーしたいという現象を生み出した」。

大変そうにやってちゃだめだよな。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120328-00000033-spnannex-base

2012-03-24

IVを説明変数やMatchingに使ってはいけない

13:42

Wooldridge 2009 "Should Instrumental Variables be Used as Matching Variables?"

https://www.msu.edu/~ec/faculty/wooldridge/current%20research/treat1r6.pdf


内生変数がある時、

IVとすべき変数を、

間違って説明変数に入れて回帰してしまうと、

バイアスが生じてしまうことを示したうえで、

Treatment effectを推定する時に使うMatching estimatorでも、

IVの性質をもつ変数をPropensity scoreの推定に使ってマッチングしたり回帰したりしてしまうと、

バイアスをもたらしてしまうことを示したかなり重要な論文


Treatmentを受けるかどうかには影響を与えるけど、

Outcome変数には直接影響を与えない変数を、

Propensity scoreの推定の際に入れてしまっている論文って、

結構ある気がする。

Treatmentを受けるかどうかに影響を与えるけど、

Outcome変数にはそんなに影響を与えない変数も、

入れてしまうと方がバイアスが大きくなる傾向があるらしい。

2012-03-13

StanfordのOnline Education

12:18

StanfordのOnline Education

Algorithmのコースが今週から、

Game theoryのコースが来週からスタート。

https://www.coursera.org/algo/class

https://www.coursera.org/gametheory/class


今、Algorithmのコースを聴講してる。

これでプログラミングスキルが上がるといいな。

Online向けに撮影されたものなので、

授業やカンファレンスをただ撮影したものと違ってかなり見やすい。

宿題もちゃんと出されてるし。


バングラデシュのE-educationについて考えるためにも、

自分でOnline educationを体験しておいた方がいいし、

一石二鳥。

2012-03-01

「あなたの作ったものはゴミである」

14:38

Twitterで知ったブログ記事。

これは備忘録としてここに書かずにはいられない。

http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2012/02/post-fef7.html


アメリカの大学でアート&ビジネスというクラスを取っていた際、

「はい。みんな課題持って来ましたか?では、机の上に出して、紙の人はそのまま破り捨てなさい。立体物の人は壊してゴミ箱へ捨てなさい。」

と先生に言われた。

曰く、「プロのデザイナーを目指しているなら、一生懸命作ったアイデアや作品を見ることもなく破り捨てられる経験をこれからたくさんする。それに耐えられなければ、プロのデザイナーにはならない方が良い」

・モノには価値があるモノとないモノがある

・「頑張ったか」は価値があるかどうかとは無関係

・価値がないと判断したときは、それをオブラートに包んで伝えるべきではない

・価値があるかどうかは、作った本人には判断出来ないことがある

・作ったモノがゴミなだけで、作った人のことまではゴミと言っていない

・「ゴミだね」に傷ついていたら、クリエイティブな仕事はできない

そして、「ゴミだね」への反論は、ゴミではないモノを作ることしか許されないこと。

そして、「頑張ること」それ自体に価値があるのはアマチュアの世界、価値がないのがプロフェッショナルの世界である。

全ての人がプロフェッショナル的に仕事をするべきだ、とは僕は思わない。

でももしプロフェッショナルになりたいのであれば、「僕、努力したもん」は封印しなければならない。そんなこと、他の人は知ったこっちゃないのだ。

努力は確かに価値がある。

でもそれは、頑張ったその人だけに関係がある種類の価値だ。いつか努力が能力に転換され、他の人にとっても価値のあるモノを生み出した時に初めて「価値のあるモノを生み出している」と胸を張れるのだ。

もう一つ大事なこと。

「ゴミだね」を恐れて指示を待っていると、永遠にゴミしか作れない。

・価値があると信じて自分の頭で考えたモノを作る。

・そして「ゴミだね」と言われる。

・そこでイチイチ立ち止まらずに、また自分の頭で考えて作る。

この繰り返しでしか、プロフェッショナルになれない。

傷ついたことを「ゴミだね」と言った人のせいにしているうちは、決してプロフェッショナルにはなれない。

2012-02-29

E-educationへの公開メッセージ

14:26

E-educationのアツのツイート

https://twitter.com/#!/AtsuyoshiGCC/status/174526806769143809

を受けて。


途上国の農村地域では、ほとんどどこでも優秀な先生不足が深刻。

インドの遠隔地域に行くと、

壁も屋根もないさびれた校舎があるだけで先生はやって来ず、

児童たちは村の寺小屋のようなところに集まって地元の人が組織するインフォーマル教育を受けていたりする。

ある程度は学べるとしても、高校進学、ましてや大学進学など夢のまた夢のような状況。


そんな中で、

E-educationでは、

東進ハイスクール型のDVD教育を導入して、

大学生のチューターによる指導のもと、

農村の貧困家庭の高校生の大学受験を応援し、

昨年度も十人の受講生の中から、バングラデシュ最難関のダッカ大学へ2名の合格者を出している。


アメリカではOpen educationのKhan Academyが有名だけれど、

英語での授業だし、翻訳するといっても同じカリキュラムが全世界で使えるわけでもない。

ICT教育では、習熟度に合わせた学習ができるようにPCのソフトウェアを取り入れようとする試みもあるが、

ソフトウェアを一から作らないといけないし、そのソフトウェアが本当に優れたものか予め保証できるわけでもない。


それに対して、E-educationは既にあるリソースを使っている分、多くの国に適用可能なプログラムだと思っている。

どの国にも教えるのが抜群にうまい名物教師、スーパースター教師は存在しており、

そのスーパースター教師の授業をDVDにして全国の学校、先生が来ないような遠隔地域にまで最高級の授業を届けようとする試みだ。


そして、Mobile learningやOpen educationで最近焦点になっているEngagement, Involvement, Commitmentの問題に対処するために(Mobile learningなどの普及によりアクセスの問題は改善されてきているが、遠隔授業では生徒が実際の授業と同じようには努力してくれない)、

大学生のチューターを導入して、

質問への回答、適宜の励ましを行うとともに、チューター自らがロールモデルとなって受講生にも自分もこうなれるという希望を与えようとしている。


この仕組み自体は、成果を上げるために重要なものだと思う。

しかし、チューターの大学生がいなければ、プログラムを拡張できない。

今のところ、チューター一人が担当しているのは20人以下。

何十万といる、E-educationを必要としている農村の貧しい高校生に対して、

サービスを提供できるようになるには、

何万というチューターがいなければならない。


チューターがいなければスタートできないなら"Open" educationは達成されないし、

今や途上国でも多くの人が使っている

携帯電話

インターネットチャット

Facebook

また、Khan Academyも、

最初から今の形を想定していたわけではなく、

使いたい人が使えるようにして、いろいろな使い方をされて当初の想定とは全く異なった広がり方をしてたりする。

もしチューターやカスタマーケアができる人を送り込まなければサービスを提供しない形を取っていたら、

きっとその広がりはずっと制限されたものだっただろう。

成果を示すためのコアのプロジェクトとしてチューターを用いる今の形をどんどん改良していくのはもちろん大切だが、

別の地域では、もっとOpenにしてみて、

様々な形を試していってもいいんじゃないかと思う。

どこかでスケールアップのための次のイノベーションを生み出さないと、

結局限られた地域で実施して、そこそこ成果を上げる援助プロジェクトで終わってしまう。


チューターをつけてできる限り最高の環境を整えてあげ、

いろいろとカイゼンしていく、というのは、

どことなく日本企業のものづくりと似ている節がある。

「優れた特色を持つ商品を売る巨大企業が、その特色を改良する事のみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かず、その商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業の前に力を失う」

っていう、イノベーターのジレンマがあるが、

E-educationではバングラでの成功体験に縛られてカイゼンを繰り返すだけに終わらず、

どんどん破壊的イノベーションを起こしていってもらいたい。


Engagement, Involvement, Commitmentの問題というのは、

行動経済学やHeckmanなどの非認知能力の問題と関わってきて、

それは途上国の貧しい学生に関わらず誰もが勉強やトレーニングの際に抱える問題で、

これまで多くの人が色々考えてきながら決定的な特効薬はまだ見つからないようななかなか難しい問題だが、

ここを乗り越えられるアイディアが生まれれば、スケールアップの可能性はかなり高まりそうな気がする。

もちろん、DVD授業でのEngagement問題改善とは全く別の方向から、貧しい農村の生徒の学習を助けるアイディアが生みだされることも大いにあるだろうけれど。


と書いていたら、たまたまこんなページを見つけた。

"An essential skill for innovators and entrepreneurs is the ability to turn success into failure."

http://www.ssireview.org/blog/entry/turning_success_into_failure

イノベーターにとって必要なスキルとは、

成功を失敗にする能力。

とりあえず成功したが、それでは最初に思い描いていた最終的なゴールには到達できない場合がある。

その時に、成功したことを捨て、本当に最終的な目的は何なのか、そのために何が最も望ましいのか、常に考え続けること。

まさに、

"Turning success into failure by constantly refocusing on the ultimate goal"。

それが、本ブログのタイトルにも書いてある、ミケランジェロ

「我々にとって最大の危険は

高きを目指して失敗することではなく

低きを目指して達成することである」

という言葉が意図していることなのだと思う。



追記:

こちらは、途上国高等教育充実にOpen and Distance Learningを使えないかというテーマについてのディベートブログ

https://edutechdebate.org/open-and-distance-learning/are-open-and-distance-learning-the-key-to-quality-higher-education-for-all/?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+EducationalTechnologyDebate+%28Educational+Technology+Debate%29&utm_content=Google+Reader#IDComment289146293

2012-02-15

備忘録

16:26

近年バングラデシュマイクロファイナンスセクターの動向に関するblog記事。

"Microfinance in Bangladesh: It's Not What You Thought"

http://www.huffingtonpost.com/elisabeth-rhyne/microfinance-in-banglades_b_1266759.html?ref=tw


BRACによるUltra-poorプログラムの調査レポートの紹介blog記事。

"Brac programme lifting 'ultra-poor' out of poverty in Bangladesh"

http://www.guardian.co.uk/global-development/poverty-matters/2012/feb/13/brac-lifts-ultra-poor-out-poverty

そのもとになっているCGAPのレポート。

http://www.cgap.org/gm/document-1.9.50739/FN69.pdf


アメリカ心理学会の、意志力に関する報告書。

"What You Need to Know about Willpower: The Psychological Science of Self-Control"

http://www.apa.org/helpcenter/willpower.pdf

2012-02-14

いろいろ

13:27

今日は計量とIOと応用理論のセミナーに参加。

アイディアっていうのは、

普段過ごしている中で入ってくるいろいろな情報や思いつきの中に潜んでいるアイディアの素を、

どれだけ面白く奥深い視点で切り取ってこれるか、

というセンスに結構かかってくるようになぜか感じた1日だった。


Twitterから見つけた、やる気を出させてくれる二つのブログ記事。

「アーティストのためのハンドブック  制作につきまとう不安との付き合い方」

http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/02/post-1589.html


陶芸の先生が授業の初日に、教室をふたつのグループに分けると発表しました。そして教室の左側半分の学生は作品の「量」によって、一教室の右側半分の先生には作品の「質」によって、それぞれ成績がつけられることが言い渡されました。」

量グループ:制作した陶器の総重量で成績をつける。数は何点でもOK。重いと高成績。

質グループ:制作するのは1点だけ。1点の質で評価される。

量グループ、質グループで提出されたすべての作品を、質で並べ直したところ、最高と評価された作品はどれも量グループから出たものだったそうだ。量のグループは山のように作品を制作しつづけたことで、失敗から学んだ。質グループは完璧さにこだわり、理屈をこねたりするばかりであった。

作品の量をつくること。作品制作を生活習慣化できているかどうかが重要な問題だと著者は指摘する。。多くの美大出身者にとって卒業制作展が最後の展示会であり、そこで作品制作を止めてしまう。提出期限のような作品を生み出すインセンティブ、評価し合い励まし合う環境がなければ続かない。

「作品制作の細部には、苦労の末に身につけた実践的な制作上の習慣や、何度も頼りにしてきた形式的な反復が宿っています。」。作品とは「生産的な様式をもって生活することから生まれた表層的な表現」なのである、という。

ノらない日でもとりあえず○○から始めるという日常の作品制作の手順、クセをつくるとうまくいくと実践的なアドバイスもある。そして競争のエネルギーを他のアーティストではなく、自分の内側に向けること。「自らの心の声を唄えば、いずれ世界は受け入れるようになり、その本物の声は報われる」などという考えは捨てること。


MITメディアラボ石井裕副所長インタビュー」

http://courrier.jp/blog/?p=9690

2012-02-11

社会科学版ハイゼンベルクの不確定性原理

02:49

http://www.pnas.org/content/108/5/1821.full.pdf+html

調査することで調査対象の行動が変わることを定量的に示した研究。

まさに、社会科学ハイゼンベルク不確定性原理

(位置の正確な観測には波長の短い光が必要

 →波長が短いほど観測対象の運動量に影響

 →物体の位置と運動量の二つを同時に正確に測れない)

2012-02-10

Ashraf et al. "No margin, no mission? A Field Experiment on Incentives for Pro-Social Tasks"

01:18

一昨日のLaborセミナーでのAshrafの報告。

http://isites.harvard.edu/fs/docs/icb.topic964076.files/Ashraf_NoMarginNoMission.pdf

金銭報酬を与えると内因性動機が低下してしまう、という研究が結構あるが、

じゃあ、どんな報酬だったら内因性動機を下げずにより努力を引き出せるか、

というテーマで行った、ザンビアでのフィールド実験の研究報告。


美容院では、客の多くが女性で、かつサービス中いろいろおしゃべりするので、

NGOが美容院のスタッフに女性用コンドームの販売を委託している。

そこで、その販売委託された美容院を、以下の4つのグループにランダムに振り分けた。


(1)Volunteer treatment - This group receives no incentives, financial or otherwise. The purpose of this treatment is to provide the benchmark against which effects of different incentive scheme are measured.

(2)Low powered financial treatment - This group receives a small financial reward based on monthly sales volume. The purpose of this treatment is to test the hypothesis that small amounts of money may devalue the pro-social component of the task and crowd out intrinsic motivation, particularly for socially oriented agents.

(3)High powered financial treatment - This group receives a high monetary rewards based on sales performance. The purpose of this treatment is to create strong performance incentives, akin to those observed in the private sector.

(4)Non-monetary rewards (Stars) treatment - This group receives a non-monetary reward based on performance (each sale of a pack of female condom is rewarded by a star stamped on a sign in their shop), and stylists selling more than 216 packs in a period of one year are rewarded by a ceremony at SFH headquarters.


「金銭報酬を与えると内因性動機が低下してしまう」という既存研究に対し、

「じゃあ、どんな報酬だったら内因性動機を下げずにより努力を引き出せるか」

というリサーチトピックを設定したことは「おお、なるほど」と思ったのだが、

非金銭的報酬として試しているのが、

売れた分、チャートに星のスタンプ押します、

というだけなのがちょっとがっかりした。

非金銭的報酬のTreatmentが1つだけでは、

非金銭的報酬としてどんな報酬システムが望ましいかが分からないから。

しかも、星のスタンプなんて、そんなもの、子供のご褒美じゃあるまいし、自分だったら絶対やらないような報酬設計。


しか〜し、結果を見ると、

(2)と(3)は(1)に比べて販売量に違いはないが、

(4)ではこれらの2倍くらいの販売量を達成した、

ということで、「星のスタンプ」がそんなに違いをもたらすのか???とびっくりした。

自分の事前の思い込みで判断しちゃいけないんだな。。。


で、結果をよく見ると、

周りに、同様に星のスタンプの報酬体系を受けてる美容院が多いほど、

販売量が大きくなっているので、

星のスタンプによってどれくらい売ったかが「見える化」することで、

他者との比較を誘発して効果を上げるようになったんじゃないか、

というメカニズムが見えてくる。


こんなの子供だましでしょ、と思うような報酬体系が効果を上げ、

それが「他者との比較」を通じた効果だった、

という結果は、非常に興味深いし、新鮮。

正直、これまで、Ashraf程度の研究なら自分もできる、と思ってたけど、

この研究報告(とプレゼンスキル)を見て、Ashrafすげーと思った。


研究は、とにかくアイディア。

既存研究で言われていることを、最近出てきた計量手法を使ってより厳密に実証する、という研究スタイルは、

やっぱりやってて面白くない(計量に詳しくなるので他者の発表へのコメントでドヤ顔できるとしても)。

既存研究で言われていることを、自分で新たに開発した、これまでの限界を克服する計量手法を使ってより厳密に実証する、

というのなら非常に面白いだろうけど。

前者のスタイルは、最新の研究をどんどんインプットしていけばそれなりに論文が書けてくる研究スタイル。

日本の中でなら、このスタイルでも十分それなりの研究者として扱われる。

でも、世界で考えるなら、研究者としての独自の貢献を考えるなら

(前者のスタイルなら、数年後にはその手法が標準になって、自分がやらなくてもそのうち誰かがやる可能性は非常に高い)

そんなスタイルで満足していてはいけないんだと自戒する。

もちろん、計量手法の発展をきちんと抑えて、できる限り妥当な推計量を出せるだけの知識は、最低限度のマナーとして持っておいたうえで。

nanahonanaho 2012/03/18 22:00 学部生の身からは、計量や実証で何を取り上げるにも思いつくものすべて既に研究されているような印象を受けて、そこに少し付け加えるか、なぞるか、ぐらいの選択肢しか見えていませんでした。

それ故計量や実証研究からどのように自分独自の色を出せるのか考えることがありますが、Ashrafさんの例や『研究は、とにかくアイデア』との書き込みを見ていて、余白は自分次第で作れるのかな、と少し勇気づけられました。