PACDEV2009

今年のNEUDC (https://www.bu.edu/econ/neudc/index.html)は先週末に終わってしまったが、
来年3月のPACDEV(http://bss.sfsu.edu/economics/newsevents/pacdev.htm)は、
現在論文募集中。
PACDEVも、1日だけじゃなくて、2日とか3日とかにしてくれればいいのに。
再来年あたりにBarkleyあたりにVisitingで滞在したいので、
Miguelあたりに研究内容とかを知ってもらうためにSubmitしてみようかな。

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理論と実証

最近、マイクロクレジットの実験論文のリバイズで、
繰り返しゲームのモデルを作って、
どの程度の協力が均衡でSustainされるかをいろいろ調べているのだが、
グループのメンバーの収入の額があるThreshold以下の時には、
どうも均衡で協力がSustainできなそうだ。
グループのメンバーの収入がThresholdの上か下かでStrategic defaultするかどうかも変わるので、
メンバーの収入を単にLinearに入れただけのRegressionを、
拡張する必要がありそうだ。
実証分析をする際に、つい単純にLinearな関数を仮定してRegressionをするだけで終わってしまいがちだが、
きちんと理論的に詰めて、
人々の行動パターンが念頭においている理論で説明できるかをより明らかに示すためにはどういうSpecificationのRegressionをすべきか、
という作業をしておくと、論文のSharpさもかなり増すように感じる。


Randomized Evaluationも、
単に効果があった、なかった、を議論するのでなく、
経済モデルをきちんと作って、
どういう場合に効果がありえて、どういう場合に効果がないと予測されるのか、
理論的な予測として、どういう状況のときにどういうInterventionが効果的だと予測されるのか、
というフレームワークのもとで分析すると、
別の環境にある別の場所で同じプログラムをやったときの効果も、ある程度推測できるようになり、
Randomized EvaluationのExternal validityも高まるように思う。
Poverty Action Labとかは、あるプログラムを他の地域でもやってみるReplicationを、資金にものを言わせてあちこちでやっているが、
複数の理論モデルを作って環境の違いがどう結果に影響するかの理論的Predictionを立てて、
どの理論モデルがもっともらしそうか、
そのモデルに基づくと、さらに別の地域でやるとどういう効果が予測されるのか、
というところまでやってこそ、
Replicationをする価値が出てくるのだと思う。


まあ、JICAのプロジェクトについても同じ。
単にProgram evaluationの手法(Randomized evaluationとかMatchingとかRegression Discontinuity DesignとかIVとか)で効果があったかどうかを論じるだけでなく、
どういう状況で効果が生まれやすく、効果があがるようにするにはどういう介入が必要か、
というところまで論じられる経済モデルを提示してこそ、
プロジェクトの評価からもっと多くを学ぶことができる。
この観点から考えると、プロジェクト評価の質を高めるには、
1.プロジェクトサイトの視察→分析フレームワーク(モデル)の着想、プロジェクトサイトの状況の把握
2.計量分析
3.計量分析の結果、見えてきたことをもとにモデルを修正
4.これを状況の異なる別の地域でもやって、見えてきたことをもとにさらにモデルを修正
5.もっともらしいモデルをチョイスして、どういう状況でどういう介入が効果的かを検討
6.効果的と思われる介入をプロジェクトと同時に行って、その効果がモデルと整合的かを検証
というステップが必要であり、研究者が継続的に関与していく必要がある。
新JICAが、ここまで研究者とタッグを組んで、プロジェクトの効果を高めようとする熱意があるといいんだけどなあ。


旧JICAは、知り合いの研究者が当時の副所長にRandomized evaluationの申し込みをしに行ったら、
「我々の業務を邪魔しないでほしい」
みたいなことを言われて、むげに断られたからなあ。
まあ、「プロジェクトにインパクトがありませんでした」なんてことが明らかになって新聞にでも書かれたら、
ただでさえ国の財政が厳しくて援助に批判的な世論が、
さらにJICAに厳しくなるというのも分かるし、
たしかにRandomized evaluationをするには、それまで取っていなかったQuestionnaireを取ったり、Randomized evaluationの実行手続きをしたり、相手政府との交渉も必要だったり、いろいろ業務に負担が増えるのも分かる。
せめて、新聞をはじめとするマスコミが、
援助の結果だけに焦点を当てるのでなく、
援助の効率を高めるためにどのような努力をJICAが行おうとしているのか、また行うべきなのか、
について、もっと力点を置いてくれたらなあ。


学術研究で見つかった重要な知識や重要な方法論について、
もっと国民の注目度が高まるようになれば、
それがプレッシャーになって政府機関なども新しい知識・方法論を採用することにもっと積極的になると思うのだが。


て、国民の注目度を高めるようにするのは、
うちら研究者の仕事か・・・

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