Framed Field Experiment

今日、開発学会で、
マイクロクレジットのFramed Field Experimentの論文を発表してきた。


Framed Field Experimentというのは、
例えばマイクロクレジットに関するトピックであれば、
実際にマイクロクレジットに参加している(あるいは参加対象の)人たちに被験者になってもらい、
実際のマイクロクレジットに近い形のゲームを行うというもの。


発表が終わった後なので書くが、
これ系の研究は、そろそろDead endな気がしている。
自分でモデルの構造に沿ったゲームを作って、
実際に人々がその通りに行動しているかを見たりするわけだが、
普通の実証研究の場合には、
そのモデルが現実のある部分を説明しているかを検証するのに対し、
こういったFramed Field Experimentの論文は、
そのモデルに合うようにゲームの構造を人工的に設定して、
人々がモデルの均衡行動を選ぶように利得構造を設定しているわけなので、
モデルが現実妥当性があるかどうかの検証になっていない。
あくまで自分が設定した世界ではモデルの予測通りに動くけれど、
現実の世界の利得構造、経済構造は自分が設定したゲームとは異なる可能性もあるわけで、
理論通り人々が行動したということが観察されても、
それは理論の現実妥当性とは関係のない話ということになる。



行動経済学の効用関数VS新古典派効用関数
のように、
代替的な仮説がきちんとあって、
かつ効用のように実験者が設定できず
人々の選択からどちらの仮説が正しいかを検証できるような枠組みなら
Framed Field Experimentをやってもよいが、
そうじゃなければ、やる意味はあまりないのではないかと思う。

E-education

学会前日の金曜日の夜はE-educationのアツと食事。
バングラデシュの貧しい農村で、
バングラデシュ最高の予備校講師の映像を取ってPCで再生するという東進型モデルで、
村の高校生が大学に行ける道を切り開こうとしている。

前へ ! 前へ ! 前へ ! ― 足立区の落ちこぼれが、バングラデシュでおこした奇跡。 ―

前へ ! 前へ ! 前へ ! ― 足立区の落ちこぼれが、バングラデシュでおこした奇跡。 ―


こっちの映像の方がよいかも↓
https://readyfor.jp/projects/14

映像授業とは言っても、場所を借りたりネット料金などがあってやはりRunning costがかかる。
一人の生徒にかかるコストが3500円くらいで、
上のサイトから支援もできる。


「すべての高校生が自分の可能性にチャレンジできる、そんな環境を作り出したい」


すべての高校生に可能性を与えられるには、
援助だと資金制約で拡大に限界があるし、
料金を取ると貧しい高校生が抜け落ちてしまう可能性もあるので、
コスト面の削減と持続可能なビジネスモデルの構築が必要なところ。
マイクロクレジットを使った奨学金なども可能性はあるかもしれない。


とにかくも、来年度からこのプロジェクトの研究をやってみようと思う。
研究でどれだけ世界を変えることができるかという、自分のチャレンジでもある。
こういう、前例も関連する例も少なく何をしたらよいのか分かりにくい状況では、RCTは便利。



目下のライバルはKhan Academy。


Web上に2100もの無料レッスンと100の問題集が公開されていて、
いくつかの学校では実際に授業の一部として採用されつつある。


http://en.wikipedia.org/wiki/Salman_Khan_(educator)
によると、
設立者のSalman Khanの父はバングラデシュ人、母はインド人なので、
Khan Academyがインドやバングラデシュに進出してくる日も遠くないかもしれない。
Khanは学部はMITで数学と電気工学・コンピュータサイエンスを専攻、MITで電気工学・コンピュータサイエンス修士
さらにHarvard Business SchoolでMBAも取ってる俊才。

途上国では貧困層はネットへのアクセスも制限されているので、
Khan Academyのシステムだけだと、
貧困層の大学教育へのアクセス改善は難しいかもしれない。


途上国のとくに農村地帯では、学校に教師が来なかったり、教師が来ても質が低かったりして、
貧しい地域の人々は教育の面でも不利な立場に置かれている。
もしE-educationが機能するのであれば、
小学校や中学校にも適用して教育アクセスを改善できる可能性があるので、
結構期待している。