深呼吸する言葉・浜辺の歌
波打ち際が歌ってる
寄せては返し歌ってる
むこうむこうずっとむこうの浜辺で誰か
海に向かって呟いた
そのひとことふたことを
手渡しざぶん 耳打ちざぶん
今、こちらの波打ち際で
私のサンダルぬらしていった
深呼吸する言葉・包む
おくりものを包むように
きもちを包み渡すもの
それが言の葉ひらひらいちまい
深呼吸する言葉・やさしさって
やさしさって何でしょう。
笑顔でしょうか
言葉でしょうか
態度でしょうか
それとも そこに佇む
気配でしょうか
深呼吸する言葉 嗚呼
海に何が流れ込もうと
それでも海が美しいように
この地に何が降っていようと
やっぱり土に触れていたい
なぜならそこはわたしの一部
地球に起きていることは
わたしの身の上のことと同義
寸分狂わずそのまんま
嗚呼
深呼吸する言葉 紡ぐ
今日という日を 紡ぎだしてくれたのは
今日までのわたし
今日という日と 出会わせてくれたのは
今日までの出逢い
深呼吸する言葉 つなわたり
綱渡りというには心細い
華奢なひもをたぐりよせ
歩いているような、
そんな心持ちになるときもある。
でも、その繊細なひもで
きっと結晶のような紋様の軌跡を、
編んでいく。
編んでいける。
深呼吸する言葉・プロセス
母をよぶその呼び名を獲得することと、
この世界を信頼することは、
幼子にとってきっと、
無関係なプロセスではないのだろう。