ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア

 

メソポタミアあたりの神話に当たっているが、現代のオタク表現でどのように引用されているのかを調べようと思ったので……とはいえFGO、最初をアプリでちょっと触っただけで、基本内容知らないので、一気見の0話とかいきなりたっぷりじっくりキャラクターの彫り込みをやっていて、着いていけるか心配だったぜ。

とはいえ見始めるとまあやっていることはよくわかるというか、そんなに難しいことはやってなかったので、まず面白く観られた。映像的にかなり気合いが入っているので、それを追いかけるだけで見てられるしなー。いやまあ、逆に言うとストーリーは、バックグラウンドの知識をどれだけ持っているかみたいなところに依存するので、能動的に知識を求めにいかんとちょっと微妙なところはありそうだよなあ。今回はシュメールの神話をバッチリ予習していったので、あーなるほどこれはこういう設定を引っ張ってきたのね、とか、あとこの文化だとこういうことをするといかにもメソポタミアよね、って感じとか、そういうのは楽しめたので良かった。というか、そこで当初の目的は果たせているか。

しかしまあ、Fateもそうだったけど、面白いポジショニングの主人公だよなあ。主人公に対する障害もほとんどない話だったのは、なるほどソーシャルゲーム原作、という感じなのかしら。

コール・ジェーン ―女性たちの秘密の電話―


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『ジェーンズ 中絶の権利』がめちゃくちゃ面白くて、コレを題材にして映画を撮ったら面白いんじゃ? って過去記事にも書いたんだけど、本当に映画になるとは思わなかったぜ!

とはいえ、ドキュメンタリーの内容はそれだけで結構サスペンスな部分があったんだけれど、この作品はちょっと切り口が工夫してあって面白い。ジェーンズがどうやって成立したかではなくて、主人公が途中からジェーンズに参加して、自ら堕胎手術を行うようになるまでの自立の物語にしてあるのが、なるほど納得の構成という感じ。

いやまーしかし、題材的に当然なのかもしれないけれども、かなり意図的に政治的なつくりにしてあるよなーコレ。大麻とか共和党とへの意思表示が明瞭だなあ、と思ってはいたけれども、ラストであそこまであからさまにヒッピーを持ち上げるとは思わなかったよ。いっそせいせいしちゃいますわ。

それにしても、シガニー・ウィーバーがあのポジションの役柄をやるのはめちゃくちゃ説得力あるよなー。フェミニズムのある種の文化的なアイコンになってるよなー。ま、ストリップをノリノリでやり出したときはもうどういう感情で観れば良いのかわかんなくなっちゃったけどね!

しかしまあ、さすがにこれだけ文化的背景がわかるようになると、それだけで楽しく観られちゃうよなー。堕胎の話で「ノーチョイス」とか言われるともうその言葉の選び方だけで「プロチョイスの話だもんね」とか納得してしまうし……ロー対ウェイドの判決に、わざわざ男性のみの最高裁を当てこすったりねえ。

あとは音楽かな……題材の性質上、引用される音楽の内容とかバックグラウンドを知ってたら、もっと面白く読めるはずだよなぁ。

オッペンハイマー

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ノーランってもっとガジェットに凝って、目先の面白さを追い求める監督という感じがしていたので、この作品は結構新鮮だよねえ。ふつーに文芸って感じ。TENETも見た目は色々オモシロかったじゃない? そういうオモシロ成分を抜いて、ストイックに描いてるよなあ。時間軸が弄ってあって、序盤のワンシーンが実はオッペンハイマーの内面を一番わかりやすく示していた、みたいな構成はあるけれども、しかしアインシュタインとの関係含めて、結構前提知識が必要って感じだもんなあ。普通、アインシュタインが平和活動を行ったこととか、もう少しわかりやすく示すはずだよなあ。

そういう意味で、オッペンハイマーって人物が、アメリカの歴史の中でどういう位置に立っているのか、もうちょい前提として理解してた方が良かったのかなあ。もちろん映画では彼中心にたっぷり描かれているけれども、原子力政策でどのような振る舞いをしたかがわかんないから、現在軸の出来事が結構混乱した。ロスアラモスの辺りは個人的に興味もあって本を読んだから、あーそういえばそんな話だったか、と思い出しながら観られたけどね。

しかしまあ、よく考えたら3時間くらいあるこの映画を、なんでこんなに集中して見られるんだろうなあ、って感じはする。普通この脚本だったら眠くなりそうなもんだけれどもな。ノーランってなんなんだろうな。不思議。

憲法で読むアメリカ史(全)

 

わははは、めちゃくちゃおもしれー!! コレを読んでから『リンカーン』観たかったよね……

とはいえこれが面白いと思えるのは、今まで映画を観まくって、自分の中でアメリカという国のイメージがおぼろげながらに掴めてきたからよねえ。っていうか、そのイメージの源泉が、バッチリ合衆国憲法に刻印されてるからこそ、こんなにおもしれーって思えるワケで。

とはいえ、映画を観ていると、むしろ公民権運動とその後の女性の権利運動辺りがテーマになりがちだけれども、この本で特に厚く取り上げられているのは、建国から南北戦争の辺りよね。まあだからこそ、黒人奴隷がどのように解放されて、しかしジム・クロウ法で隔離されたのか、みたいな経緯を興味深く学べたってのもあるか……あとネイティブ・アメリカンの扱いとか、州の独立性の問題とか、いやー、やっぱり建国時に制定された憲法って、国の性格を強く方向付けたんだなあ、という感じ。っていうか、ここまで憲法が強く国民性に影響を及ぼすのを目の当たりにすると、日本って憲法がどうでも良さ過ぎね!? とか思ってしまうよなあ。

あと良かったのは、最高裁判所の独立性の問題をちゃんと追えたこと。三権分立も最初から上手く機能したわけじゃない、というのはだいぶ驚きがあった。まあそりゃあ、アメリカっていう国が、民主主義の実験って側面もあるわけだしなあ。努力なくして機能するわけがないよなあ。

「女装と男装」の文化史

 

いやー面白かった。というかこの本のおかげで「さらば、わが愛 / 覇王別姫」を見ることができたので、もうそれだけで万々歳って感じである。

過去の異性装の作品を取り上げながら、ジェンダーの問題を分析している本だけれども、 2009年に書かれたということもあって、今見ると時代がひとまわりしている感じがすごくする。今、異性装をテーマに作品を書いたら、このエンディングにはならないよね、見てる方もものすごく違和感覚えるよね、みたいな展開が大量にあって、この15年でエンターテインメントにおけるジェンダーの描かれ方は大きく変化したんじゃないかなあ。自分レベルの知識と感性しか持っていない人間でも、比較的最近観た「トッツィー」「ミセス・ダウト」には、そこそこの違和感を持っていたわけでね……っていうか、この本における性自認と性的指向の表記が、現在のシス/トランス・ヘテロ/ゲイとちょっとズレていて、読んでて少し混乱するところもあったしなあ……

とはいえ、そういった過去の名作にどういった視点の問題点があるのか、というのを、改めて指差し確認するのはめちゃくちゃ重要で、その指摘はどれもが大変納得感がある。正直自分が読んだり観たりした作品はそこまで多くなかったんだけれども、特に映画はこれから追っかけ観なきゃなあ、という気持ちになりました。

SAND LAND

 

鳥山明が亡くなったので、なにか一冊読んでおこうと思って……映画にもなって評判良かったしね。

鳥山明が書くマッドマックス! という感じなんだけれども、向こうが裏に神話だのフェミニズムだのが敷いてあるのに比べて、こっちは「戦争」が染みついているのがめちゃくちゃ印象深かったなあ。もちろん現実とは距離があって、そのままなんかの暗喩にはならないんだけれども、デフォルメの効いた「戦車」の向こう側に、抑圧された人間とその死があるんだよ、みたいなことがハッキリと描いてあって、あー、これはすごく強い意思を感じるなーと思ったよ。

それにしても、ベルゼブブって一体なんなんだろうな。キャラクターとしてはなるほどちゃんとツボを突いているし、好感がもてるんだけれども、ストーリーの流れの中できちんと役割を果たせているのか、正直よくわからんところがある。最後の怒ったぞ! からの逆転も、まあカタルシスを得る為の展開なのはわかるんだけれども、しかしそれ以上になんかこう意味を求めちゃうところだよねえ。全体的に保安官の人のドラマが強すぎて、もう少し悪魔の王子がわにドラマの軸があっても良かったのかなあ。いやしかし、そういうドラマがないからこそ、成立する話なのかもしれないなあ。

ミスター・ノーボディ

 

セルジオ・レオーネは大好きな監督なんだけど、この映画は抜けていたぜ……

とはいえ、なんか変な映画だよねコレ。セルジオ・レオーネっぽさも所々にあるんだけれども、それだけではちょっと乗り切れないところがある。っていうか、レオーネの映画ってやっぱり顔の汚さがめちゃくちゃ大事なんだなあって思ったよ。顔が汚れてるってことはその分映像に情報量があるってことで、不思議とその顔に見入って、キャラクターに感情移入しちゃうんだよね……あのクッソ長尺の顔のドアップは、その感情移入があってこそのものなんだなあ、なんてことを思いながら見たよ。

全体的に色々どーなの? というところもある映画ではあるけれども、その珍妙な味があればこそ、モリコーネの音楽が光っちゃうのめちゃくちゃ面白い。ワイルド・バンチでワルキューレの騎行が流れる度に、理屈じゃない昂ぶりとどうしようもない失笑が湧き上がっちゃうのは、いやほんと変な感覚だよなー。

あとコレ、「ウエスタン」の後にヘンリー・フォンダを迎えて撮った西部劇なのね。「ウエスタン」もだいぶ歴史の中に取り残されていく男たちの話ではあったけれども、今回は生き延びて船でヨーロッパに向かうのがなかなか面白いところだよなあ。滅びの美学……ではなく、伝説を伝説にして、しかし男は生き続ける、というのは、レオーネの意向がどれだけ入ってるのかなあ、なんてことは考えるよな。