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2016-12-23

[] 僕は明日、昨日の君とデートする

青春恋愛映画の名手といわれる、三木孝浩監督の最新作。この監督のすべての作品を見たわけではないが、『陽だまりの彼女』『くちびるに歌を』は特にお気に入りである。今年は『青空エール』とこの2作品が公開され、三木監督ファンとしてはうれしい限りだ。

美大生の主人公は通学電車で出会った初対面の彼女に一目惚れする。とんとん拍子に理想的な恋人同士になるが、彼女には秘密があり、なぜか彼の未来を知っているようだった‥

ファンタジー色の強い作品で、ネタバレすると、彼女は平行世界からきた別の世界の住人であり、5年ごとに40日しか滞在できないというルールがある。二つの世界はそっくりだが、時間の流れが反対であり、彼が5歳の時彼女は35歳、彼が10歳の時彼女は30歳、彼が15歳の時彼女は25歳‥という関係になっている。二人が同じ20歳で会えるのは、現在の40日しかない。物語を成り立たせる舞台装置を理解すると、この40日の物語がとてもせつなく、貴重で愛おしいものに見えてくる。

時間の流れが逆なら会話も全て逆回しになるはずじゃないかとか、SF的考証がどうとかは、ファンタジーだから棚上げしていい。たぶん二つの地球は公転が逆で自転方向が同じということにしておこう。素直に感動できる良作に仕上がっていた。

原作者はいわゆるライトノベル出身だが、作者自身の経験や年輪が加わってくると、純文学や文芸作品との差はなくなってくる。むしろ現代では、漫画原作やライトノベルの作者のなかに、昔であれば文豪になったような才能が集まっているのかもしれない、と感じた。

2014-03-25

[] 最近見た映画の感想

永遠の0

安倍首相も見た大ヒット作。不覚ながら、途中から涙が止まらなかった。左翼的な反戦でもなく、極右的な戦争肯定でもなく、当時、国と家族を守るために戦い死んでいった青年達をリアルに描いていると思う。作中で主人公に語らせているが、殺戮兵器である空母を対象にした特攻と、一般市民を対象にしたテロは根本的に違う。むしろ一般市民大量虐殺した東京大空襲広島長崎原爆こそ「人道に対する罪」であるはずである。この映画のヒットは、戦後自虐史観の見直しの始まりを意味するかもしれない。

魔女の宅急便

ジプリのアニメ化で有名になったが、角野栄子作の原作の実写化。キキ役の小芝風花がとても可愛くて、好演だったので、全体の満足度は高かったが、カバの飼育員の激しい怒りの表現が児童文学にふさわしくなく、見ていて不愉快だった。レンタルで見直すときは飼育員のシーンは全て飛ばすだろう。なぜホラーの監督に撮らせたのだろうか。

銀の匙

農業高校生を主人公にした漫画の映画化らしい。原作もアニメも知らずにニュートラルに見たが、意外に、と言っては失礼だが、王道の青春ムービーで良作だったと思う。育てた家畜を屠殺することに対する葛藤とその克服など、よく描けているのではないだろうか。何気なく食べている食品について考えるきっかけになるし、他の生物の生命を食べている人間だからこそ、その生命を有意義に精一杯生かすべきなのだと思う。

2013-06-11

[][]『奇跡のリンゴ』

映画は洋画派だったが、最近、観たい映画がない週には、邦画も観るようになった。

『奇跡のリンゴ』は事実に基づく映画化ということなので、良作の予感がして観てみたが、個人的には当たりだった。

面白かったので映画鑑賞後に原作も読んでみた。映画のエピソードの大半は事実らしい。

無農薬栽培というよりは自然栽培で、雑草を刈らず、自然林と同じ生態系を再現することで、普通は農薬がないと防げない病気の発生が抑えられるらしい。

害虫の大量発生もいわば生態系の壊れた状態であり、自然状態だと天敵の虫がちょうどバランスするだけ現れて平衡状態を取り戻すらしい。原作では、どこからともなく蜂が大量発生し、巣を落としてみると巣の中はリンゴの木の害虫でびっしりだったとか。

また、肥料をやると根から栄養を吸い上げる必要がないので根があまり伸びないため、通常のリンゴ園のリンゴは根が数メートルしかないが、自然農法のこの農園のリンゴは根が二十メートル以上あるとか。

非常に勉強になっておもしろかった。

なお、原作だと宇宙人に遭遇した話等もあり、ルポライターはユングの心理学を援用して象徴的に解釈しているが、これだけ正直な人なので、事実と思ってあげていいんじゃないだろうか。

2013-04-16

[][]『舟を編む』

2012年の本屋大賞の原作の映画化。辞書づくりの課程を丁寧に描写しており、登場人物が全員善人で、ほんわかした良作だった。

作中で編纂される『大渡海』は二四万語の広辞苑・大辞林・大辞泉クラスの中型辞典なので、作中で用例採集していたような若者の流行語はさすがに収録しないだろうと思った。ただ用例採集は日常的にやっていて、日本語として定着しているものは積極的に載せる方針の辞書なのかもしれない。(現実の辞書では大辞泉が現代語を積極的に採用する方針で近いかもしれない。)

映画では1995年の辞書の企画の開始から、2009年の辞書完成直前までシーンが飛ぶが、1995年のシーンの机上の『広辞苑』は第四版で、2009年の『広辞苑』は第六版だったので、細かいところまで気を配っていると思った。1995年の時点ですべて紙の用例カードを使用していたが、1995年といえばWindows95の年だから、もう少し電子化されていてもおかしくないと思うが、紙の辞書をアナログな手順で作るところをあえて見せたかったのだろうと解釈した。

作中では編集主幹が辞書の完成を見ずに故人となるが、大辞書の序文や奥付を見ると、辞書の編纂にはドラマがつきもののようだ。青空文庫に、『言海』を編纂した大槻文彦の「ことばのうみのおくがき」が収録されているので、是非ご一読いただきたい。『舟を編む』というタイトルも「言葉の海を渡る舟」をイメージしているので、『言海』の遠い影響を受けているかもしれない。個人的には「ことばのうみのおくがき」の映画化が見たいと思った。わずか三十歳で亡くなる大槻文彦の奥さん役を宮崎あおいで。