近年のアルミニウム価格について-その 1

 アルミニウム、非常にボラタイルな展開になっている。
 正直、ファンダメンタルは強くなく、一時期相場の上げ材料となっていた中国や欧州のアルミナの価格も切り下がってきている状況である。
では何が相場水準を高止まらせているのだろうか?

 私は別のブログやマーケットレポートでもコメントしているが、大きく3つの理由があると考えている
(1)中国のWTO加盟
(2)投機資金の流入
(3)エネルギー価格の高騰

 この3つのあわせ技によって、価格体系に大きな変化が発生したという考え方だ。
 (1)の中国のWTO加盟は新しい需要の創出を意味している。即ち国際ルールに則った取引の実施により、外資系企業が多数中国に進出、そうした企業が中国に進出する事に伴う工場の建築や近隣住民の居住スペースの確保といったインフラ整備の需要が発生したため、純粋に需要が増加した、という考え方である。現に、アルミニウムの年間消費36百万トンのうち実に25%が中国で消費されるようになった。この事は多くのアナリストが指摘するようになったが、以前はこれほどクローズアップされていなかった。
 要するに長い間中国なしでバランスしていた需給が大きく崩れたため、市場は新しいバランスの形態を模索している最中である、ということであろう。
 この中国の需要の増加は「今まで安く放置されすぎた一次産品価格の修正」をもたらした。この事はアルミニウムに限った話ではなく、銅やニッケル、原油等にも観測されており、特に2003年のイラク戦争以降に顕著になった。
 今年に入って漸く、この中国が世界のアルミニウム需給に組み込まれた後の新しいバランスが完成してきたようにも見受けられるのだが、実際のところ依然として中国はGDP10%内外の高成長を継続しており、現時点において新しいバランス体系が構築されたと結論付けてしまうのは時期尚早のように思う。
 
 (2)の投機資金の流入であるが、これは(1)の中国のWTOの加盟と関連している。多くの日本人は、「投機資金とはマーケットにおける悪者であり、彼らは自分の利益しか考えておらず、彼らが市場にいることによりマーケットが混乱する」と誤解している。この議論はある一面では正しいのだが、ある一面では間違っている。前FRB議長のグリーンスパンは「ファンド等の投機資金は市場に効率化と流動性をもたらすため、市場にとって有益であり、こうした投機家の存在が中長期の市場に流動性をもたらし、企業の調達(資金、商品)を安定化させ、企業の効率化に貢献した」とコメントしている。勿論、いたずらにマーケットを撹乱しようとしている投機家もいるにはいるのだが、よほどの資金力がない限り、1人の投資家の力によってマーケットが操作されてしまうほどマーケットは甘くはない。IT技術の著しく進んだ現代において、そういった投資家がいた場合には逆に格好の餌食となってしまう。つまり、投機家は「あらゆる材料を吟味した結果、勝てる可能性が高いもの」に関して資金を投入するのである。念の為行っておくが、資金を投入する、とは商品を買う、という事ではなく、先物市場で売買を行うために証拠金を投入する、という事である。一時期投機筋は、商品市場においてロングポジションを取る戦略を行ってきた。これは上記の通り中国の参入に伴い、商品価格が上昇する可能性が高いと予想されたためである。この戦略によって投機筋はかなりの利益を得たはずであるが、今年の6月以降、アルミニウムは調整局面を迎えつつあり、多くの投機筋が損失をこうむったはずである。それでも価格が下がりきらないのは、株や債券と比較した場合の収益性が依然としてプラスであると判断されているためであろう。
 ここで少し足元の価格下落のメカニズムを説明してみたい。そもそも何で最近アルミの価格が下がっているのか。それは今話題となっているサブプライムローンの影響で米国株価が大幅に調整したためである。新聞やテレビのコメントを見ると「株価の下落により景気が悪化して消費が減る可能性が高まったために、アルミニウムが売られた」といった論調のものが多い。しかしながら、そんな「風が吹けば桶屋が儲かる」的な三段論法的展開で価格が下がるものであろうか?もし株価の低迷が長期化すれば当然経済に悪影響を及ぼし、消費減少を通じて価格が下落することになろうが、そういったメカニズムが1日や2日で機能するものだろうか?私はそうは思わない。短期的にはもっと別のメカニズムが機能しているからだ。つまり、「株式市場で損失をこうむった投機筋が、流動性が低く、価格が上昇している非鉄金属市場で手仕舞い売りを入れることにより、非鉄金属価格が下落する」のである。
 つまり投機筋はあくまでその他の資産とのパフォーマンスを比較しながら資金の投入先を選定しているわけである。本格的に株価が下落しない限りは、2,500?近辺であれば需給に関わるファンダメンタルが大きく変わっているわけではないため、おそらく買いが入ることになろう。

 (3)のエネルギー価格の高騰は言わずもがなである。アルミの製造コストの大半が電力料金であることから、今の価格水準が続けば当然価格が上がってしかるべきである。因みに、であるが、世界の原油の埋蔵量は富士山一杯分しかない。そのことを鑑みればエネルギー価格は当分下落することはなく、アルミニウムの製造コストの押し上げに寄与する事になろう。

 ちょっと書き疲れたので、続きはまた後日。(記:油売り)

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