時は過ぎても、キスはキス

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2007-02-25 (Sun)

[][] 今日の一句

精鋭に 保存されたし 文房具

承りました。

[] 再読・『一般システム思考入門』(ISBN:4314002549)

(17日読了)

初読は遅くて2001年。当時の読書録には

ワインバーグ先生の「処女作」。原著1975年(日本語訳1979年)。

のせいか、若書きの感がなくもない。が、ワインバーグ節はこの頃から全開といえる。

と極めてあっさり記している。

一般システム思考の門を敲く

まず、何と言っても、やっぱり読みにくい本である。「若書き」云云と記したのはそのためだが、再読してみると翻訳も生硬で調子が悪いと感じるが、やはり原文も幾分かは調子が悪い、あるいは流麗すぎるのではないだろうか。節見出しと本文の論旨がつながらない感じがすることがしばしばあった。翻訳が下手なだけではこういう感じを受けることはないように思える。全体の収まりというかバランスが悪いと感じる。最初の方は「(一般)システムとは何か」「どう取り扱うか(どう思考するか)」という実践的な話なのに、後半、6章7章辺りはなんだか思弁的になっている。そう感じる。

「処女作」にふさわしく、後の著書で見かける考え方やお得意の「法則」がたくさん出てくる。他の著書を読んでいれば初めて知ることはあまりない。ワインバーグの考え方の源流はここにあったのかという発見の方が大きい。それ以前に、プログラミングの世界に暮らしていれば自ずと「システム思考」の一端は身につくのだと思う(誰でも、どんな態度でやっていても必ずそうなるとまでは言わない)。こんな見方考え方はワインバーグに出逢わずともしていたなと思うことが多かった。初読の感想を軽く済ませたのはそうした事情もあったんじゃなかったか。《システム》の観察や観測はしていたし、分析や記述もしていた。人間世界の様様な様相を《システム》と見ていた。ただ欠けていたのは、システムを《システム》として眺め、取り扱う視座であり、《システムとは何(である)か》という問いだった。その根本を知らせてくれるのが本書の魅力であり、意義だ。

章立ては慎重に考えられており、記述は軽快であるにも拘らず、本書を手際よくまとめるのは困難なのだが、敢えて挑戦してみる。

  1. 問題
    我我が相手にする《システム》とは、「組織的で複雑」という特徴がある。大きな変動、不規則性、理論からの逸脱が著しい。
    そのようなシステムを相手にする際のキーワードは「単純化」である。
  2. アプローチ
    1. 一般システム思考では、あらゆる《システム》に適用できる一般システム法則を見出すこと、それを《システム》を考える際の道具とすることを目指す。
    2. アナロジー(比喩、類推)、カテゴライズ、一般化といった考え方が武器になる。
    3. ジェネラリストであるためには、既成のどんな考え方にも信念を持ってはならない。
    4. モデルを持て。
  3. システムと錯覚
    1. ブラックボックスとして観測する。
    2. ブラックボックスとしてのシステムは集合を使ってモデル化することができる。
    3. システムは、観測者の視点・観点に依存することに注意する。
  4. 観測結果の解釈
    1. 観測結果(のモデル化)から解釈を組み立てる。(状態モデル)
    2. すべてを見ることはすべてを知ることにはならない。取捨選択が重要。そして、取捨選択の仕方は観測者の数だけある。
    3. システムに関して得た知識は関数の形で記述すると具合がよい。(関数モデル)
    4. いずれにしろ、「完全な解釈」は望むべくもないし、望んではならない。
  5. 観測結果の分解
    1. 人間の知性には限界があるから、問題を分解する。
    2. どんな見方をすれば過不足なく矛盾なく対象のシステムを説明できるかを考える。
    3. アナロジーを活用する。比喩そのものではなく、比喩を行なうということ(変換の過程)こそが本質的である。(同型対応)
  6. 行動の記述
    1. 得られたモデルをホワイトボックスとして記述する。(行動モデル)
  7. システムの問題点
    (省略)

こうしてみると、「《システム》の取り扱い方、《システム》に対する見方考え方」はコンピュータ・プログラミングに通じるものが多いことが判る。コンピュータープログラミングがそもそも一般システム理論(思考)に根ざしているのか、相互に通底しているのか、全く独立なのに同型対応がみられるのか、はここでは考察しない(しきれない)けれど。対象をひとつの総体のまま取り扱おうとするのでなく、独立して考えられる部分に切り離して扱う、というのは、システム分析からモジュール、コードのデザインまであらゆるレベルで表れる考え方であり、プログラマーにとっては「自然な見方」でさえある(すべてのプログラマーがそう考える、と言うつもりはない)。無論「部分」は「部分」だけで済まず、それが全体の中でどのような役割を持つのか、どのように全体に作用するのかも見逃してはならない。まあ、コンピューターシステム、ソフトウェアシステムという位だから、《システム》的な見方が当てはまるし適しているのは当然とも言える。その割には、プログラミング教育やコンピューティング教育でこれまで《システム》という側面を強調する教え方があまりになかったのは気になる。

本書が特定のものの見方考え方、思考の方法を主張したり押しつけたりしていないことは要注目だ。ワインバーグという人はいつもそうなのだが、具体的で特定の「方法」を売り込むことは滅多にない。本書でも、終始一貫して述べられているのは「《システム》の見方考え方についての態度」である。「一般システム思考の本質・精神はこういうものである」「システム思考をする場合はこういうことに注意をしながら進めるのが肝要だ」と言っているのであって、本書を読めば誰もが「システム思考」を駆使できるわけではない。いわばメタ思考法とでも言えるだろうか。その辺が(具体的な手法を欲する人にとってはなおさら)判りにくい印象を与えるかも知れない。でも、特定の具体的な手法なんてけっこう簡単に廃れるものだ(商売が絡んでいるなら特に)。学ぶならこうした「基礎の基礎」「基底をなす考え方」の方が結局はお得なんじゃないだろうか。*1

「特定で具体的」というなら、本書に鏤められた「一般システム法則」なら少しはご利益があるかも知れない。これは実際に読みながら自分で書き出してまとめると身につくだろう。僕も自分用に抜き出したが、しかしこれとても《メタ法則》であって、即現実の事例に適用できるものではない。

本書の基底文書とも言える(であろう)『一般システム理論』はまだ読書中だけど、両者を併せて、「一般システム理論(思考)」(どちらも略語はGST)という見方考え方がそもそも何処を目指していたのかは押さえられるだろうと思う。尤も、どこかの記事で読んだのだが一般システム理論も20世紀半ばに提唱されて以来徐徐に変質していき、主たる関心事も移り変わっているそうで、同じ用語でも同じ見方考え方を指しているとは限らないようだ。

システム思考。システムシンキング。

さて、最近「システム思考」や「システムシンキング」といったキーワードが氾濫している。改めて本書を再読したのもその氾濫具合が気になったのが一因にある。

では今巷で流行っている「システム思考」「システムシンキング」とはどんな代物なのか? ウェブで調べてみると、百花繚乱というのか百家争鳴というのか、一致しているのは《システム》ということばと《システム》の基本概念くらい、というほど様様だ。

どうも、システムシンキングという用語(つまり、日本語でカタカナことばとして使われているこの用語)は、アメリカの経営学者が提唱した手法に源泉があるらしい(google:システムズシンキング)。具体的な手法やツールの駆使、問題のパターン化が主眼となっているんじゃないかという想像が浮かぶ。

システム思考はそこまで特定的なものではなさそうだが、その分この用語が指す概念は何なのか曖昧模糊として把みづらい。言ってみれば「言いたい放題、言ったもの勝ち」みたいな状況を呈している。

  1. 「システム思考は、問題状況をさまざまな要素のつながりとして考える「つながり思考」のアプローチです。(中略)自分や他人を責めるのではなく、システムの構造を見極めて、変えていこう!という建設的なアプローチなのです」(環境セミナー『温暖化について〜システム思考から考える』)
  2. 「システム思考とは、システムの構造を捉えて問題解決を行う手法です。その考え方をプロジェクトマネジメントに適用します」「システム思考を適用した統合マネジメントによって、プロジェクトでののトレードオフを効果的にマネジメントする体系的方法を習得できます」(pmstyle- 企業研修(システム思考))
  3. 「「日本型システム思考」がプロジェクトを成功に導く」(翔泳社PM INFO WEB)

(一般)システム思考という用語が「つながり思考」といった別のことばに結びついたり、プロジェクト管理に適用されたりしている(「対象の構造を捉えて問題解決を行なう」なんてごく普通にやっていることだと思っていたのだけれど、そんなに特殊なことなのだろうか。システム思考以前には誰一人としてそうした考え方をしなかったのだろうか?)。三番目に至っては、システム思考にも民族性が現れる、あるいはお国柄に応じて思考法を変える必要がある(あるいは有効性が増す)という、「一般システム」の枠組には囚われない自由な発想が窺える。

上のpmstyleでもちょっと触れられている「ソフトシステム方法論(SSM: Soft System Methodology)」もシステム思考の仲間みたいだが、

Soft(柔軟)にシステム思考(システムズアプローチ)をすることで問題の解決を図ろうとする方法論のことです。(中略)

SSMのプロセスは7つのステージで構成されています。7つのステージは決められた順番どおりに進めるものではなく、各ステージを行ったり戻ったりしながら検討を進めていきます。

@IT:ソフトシステム方法論「SSM」とはなんだ(1)

システム思考にも硬直したのと柔軟なのと少くとも二通りあるらしいのにはびっくり。それはともかくこれは正しくリッパな方法論。

この状況は、「一般システム理論(思考)」の浸透と拡散と言っていいのかも知れない。《システム》という捉え方、《システム思考》という概念が漸く認知されてきたということか。逆にGSTというものの根っこが固まり、さらには硬直してきたということかも知れない。

google:システム思考

google:システムシンキング

まとまらないまとめ

ウェブを検索すると沢山見つかるような、方法論化したのでない、おおもとの、根っこになる、一般的なGSTには今でも大いに興味がある。様様なものごとを見る時の枠組のひとつになりそうに思う。手法やツールは便利なものだが、時として見方考え方を規定してしまう(無論ツールのいいところは見方考え方をガイドしてくれるところだ)。

本書のまとめもまだ終わっていない。たぶん何度も読み返しながらそのたびに違う発見を重ねてまとめ直す、ということになりそうだ。

今現在のまとめ。

  1. キーワードは「単純化」。武器はアナロジー、カテゴライズ(類型化)、一般化
  2. ブラックボックスとして観察し、ホワイトボックスとして記述する。
    • 観測に限界があることを忘れるな。
    • 観測者の存在がシステムに干渉することを忘れるな
  3. モデルを持て。できるなら、よいモデルを持て。モデルが適切でないと思ったら迷わず破棄せよ。
  4. 全体を見渡しながら、適度に捨象しながら、独立して取り扱える大きさに、観測結果を分解せよ。
  5. 意味づけは慎重に。

[] ラグビー日本選手権決勝 東芝対トヨタ自動車 (19-10)

今回の日本選手権は大学勢やクラブチームが出場する1回戦から見てきた。トップリーグ、来季トップリーグ昇格チーム、クラブ、大学生、はっきりレベルの違いが表れている。ラグビーはひょんなことから大差のつきやすい競技だけれど、トップレベルどうしの試合になるとこうした「内容の濃いロースコア」になって、こういうのは見応えがあっていい。

というわけで、もういい加減ノスタルジーから脱却して日本選手権は社会人チームだけにすべきではないか、と書こうと思ったが、サッカーの天皇杯みたいな形になったと思えばいいのか。

*1:そもそも現実には多様な現れ方をする《システム》に対して固定的な手法が常に通用するのかどうか、という根本的疑問もある。

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