大漁、異漁。

十代をすぎても心を隠す私のような人間は、大人の形に見えるだけの羽化できないサナギのようなものなのかもしれない。    遠野りりこ『マンゴスチンの恋人』

17-10-5-木

[]〈ふいに‥‥リアルがかぶってきたり ウソくさくなったりで わけわかんね〉 12:14

シュガー 3

「私さ‥‥リンの言うなりだよね」「は? どっちかっつーと!! オレが千代の奴隷だべ!! 王様は千代様」

十代の恋愛だなあ。どちらも見誤っている。

新井英樹シュガー 3』。

したっけ したっけ したっけ その男同士二人がなんかイイわけ!! 別れ際 なんかっ ジワ──って!!

どうだろ それ!? オレ ヤバイ!?

振り返ればオレ 男とばっかり遊んでたべ!!

いややっ 別に構わないよ「リン」なんて男か女かわかんない名前だし

その道を行けばそれはそれだしわかんないけど

オレなんか適当に笑って過ごせりゃ満足!! ‥‥厳密にはわかんないけどね

したっけ わかんないけど やっぱりオレ女の子がいいんじゃないかな

断言!!

したっけ わかんないか 本当んトコは

でっ

男と比べて‥‥千代とかとだったら大丈夫かな‥‥なんて呼び出しました


東京に着く。新宿で、ボクシング。


「まだ?‥‥お茶」「あ? お茶?‥‥でスね」「緑の‥‥濃いの‥‥」


「矢野さん緑茶どれでしたっけ?」「えーと赤の筒」


「さっき打ったんだよ 4発目‥‥夢の中で」「さっ‥‥き」「俺な 打ってたよ 嫌いだったサンドバッグ なぜか髪だけ今風に黄色でな」

17-10-4-水

うちの子は、親をみつけそこねたのかもしれない。それを迷宮と呼ぶのかもしれない。

[]〈窮屈で怖くても檻から出ない 手は地につけない 転がらない〉 11:50

シュガー 2

新井英樹シュガー 2』。

「欣二さんも‥‥スゴかったスよ‥‥全盛期

欣二さんにはオレ勝てないっス

ヒーローだから オレが勝っちゃ 具合 悪いっしょ

欣二さんの拳にしたってね‥‥全盛期に比べたら見る影ないっスよ」

「ジブン勝てるゆうてんか?」

「う〜〜んん?

ん〜〜?

それでも‥‥負けるかな

欣二さんの喧嘩あざやかに刷り込まれてるから

オレ‥‥本人 目の前にしたらヘビに睨まれたカエルみたく‥‥」

17-10-3-火

[](大空と大地の中で  松山千春11:22

シュガー 1

友だちに心配されて生きている。といって年下の友だちに分配できる時間や金があるわけもなく、痩せ我慢のダンディズムがこちらとあちらをつないでいるから言葉で問うたり答えたりはしない。

ぽつり、ぽつりとマンガを薦めてくる。

新井英樹シュガー 1』。


電子書籍で1ページずつ読んでいるけど、横にして見ひらき、あるいは紙で読むリズムのマンガ。転調、区切りが大胆でおどろく。

物語るときに時間を省略するのはかんたんだ。その際失神したように、夢見ることなくねむったように時間を経過させてしまうのか。もっとテクニカルに登場人物の内面を飛躍させることも可能なのでは? それを、新井英樹はやってくれる。石川凛という主人公がそれをもとめる。

リン・・・あなたは

勘ぐりに長け 勘の鈍い いわゆる「無神経」タイプだわ 敵つくるわよ

石川凛は、父を早くに亡くした母子家庭だとおもいこんでいた。しかし、生きているらしい。それをさがす物語ではないけれど、その欠落がすでに凛を形成していて、だから金銭面でクズな火の玉欣二との悪縁もつづけてしまう。

欣二の同棲相手がニューハーフの元プロボクサー。欣二のキャラクターが、怖い。

17-10-2-月

[][][]劇的、とは皆に見せ場があるということ。 10:30

亜人』観る。いたいけな想像力で出来た物語。そこに乗っかってケレン味たっぷりに演じる綾野剛と、リアリズムで応ずる佐藤健。この対比は佳かった。

銃撃戦の凄さへと日本映画が進化していくのはマンガ原作が増えたためか。

深みのないキーワードリフレインする脚本が気になった。たぶんマンガとは関係なくて、日本映画のよわいところ。吉行和子の役に叡智や抱擁するちからをかんじることができなかった。

千葉雄大山田裕貴が俳優として健闘するもいまひとつ印象にのこらないのは、やはり脚本のせいだろう。

17-10-1-日

[]さいしょの発症には時間をかけて、場面転換すると被害が拡大しているという組み立てかた。 01:57

ソウル・ステーション パンデミック』観る。韓国アニメーションゾンビ映画。監督ヨン・サンホ

しがらみや、執着。人間関係をしっかり描くからただの追いかけっこにはならない。その関係も正しさを説くようなものではなくて、DVのヒモがヒロインをまるめこんでしまうといった、負の部分。あたまがわるくややエゴイスティックな登場人物たち。一過性の優しさが、裏目にでる。つよさはだれにもない。ヒロインにも単独行動できないよわさがある。

関係をきちんと掘りさげればおのずとローカルなものがあらわれでる。年齢や性別からくる立場のちがいなどは「ああ韓国だなあ」とおもう。クセがある。味がする。

ヒモのキウンにイ・ジュン。ヒロインのヘスンはシム・ウンギョン。ヒロインの行方を追っている父、リュ・スンリョン。

17-9-29-金

[][]〈この幸福の種子は 鳥・猫・犬 それに人などによって あちらこちら、はるか遠くの町までも連れてゆかれます。時には、高架線をくぐり、踏み切りを越え、夜の電車に乗り、よその町まで連れてゆかれます〉  三好銀「静かなおみやげ」 06:28

いるのにいない日曜日 (BEAM COMIX)

おばあちゃん女の子 絶対安全剃刀―高野文子作品集 野嵜好美と宇野祥平がでている横浜聡子の短編『おばあちゃん女の子』(2010)は気がかりなタイトルで、さいごに参考作品として高野文子田辺のつる」が挙げられれば成程すとんと腑に落ちる。

併せて挙げられるのが三好銀「夜の電車」。

「あのね…実はね、お別れです。

電車の窓からハンカチふるから望遠鏡で見ててね。」

「バカ言ってないで早く帰って来い!」


日曜日の夜中12時過ぎ…

私はいつだって

電車に乗る事ができる。

乗ろうと思えばいつだって。


     「夜の電車」

たいくつを壊す方法のひとつが家出だ。ひとをころすのといっしょで、実行されない家出はいくつもある。実行される家出もある。ひりひりと切実なものもあるだろうし、繰りかえされることがいやになったというのもあろう。

横浜聡子の映画は「夜の電車」と「田辺のつる」をつなぐことで、家出同様ままごともまた日常にヒビを入れる自立なのだと気づかせる。

三好銀いるのにいない日曜日 (BEAM COMIX)』。これは『三好さんとこの日曜日 (Spirits neko comics)』につづく猫とおんなとおとこの暮らし。初期の大友克洋吉田秋生のような、あるいは諸星大二郎のような、わずかな浮遊感。隣人は異界のひとかもしれぬという、じぶんもここをでていけるという、あやしいとびらの匂い。

17-9-28-木

『俳優 亀岡拓次』と『恋愛睡眠のすすめ』の異同をみつけるのがたのしい。

[]daydream 12:55

恋愛睡眠のすすめ(字幕版)

恋愛睡眠のすすめ [DVD] ミシェル・ゴンドリー監督『恋愛睡眠のすすめ』(2006)。ものをつくろうとする若いおとこの奇矯さ。それが天然だけにつらいが愛しい。

ものつくるにんげんにかぎらないのかもしれない。愛情に飢えたおとこの手に負えなさ。

ステファンガエル・ガルシア・ベルナル)とステファニーシャルロット・ゲンズブール)。隣人になる。夢と現実の区別がややつかないというか、現実世界で言うべきことを呑んでしまうタイプのステファン。呑んでしまったぶんだけ現実とのタイムラグが生まれてつかの間白日夢を視る。それはかれのつくった「1秒タイムマシン」に似ている。自作自演の1秒先や1秒前の反復は、あいてのことをかんがえていない。

夢のなかで「きみたちは、ぼくの脳内人物だ」と言えてしまう若さは目を覚ましても横暴だ。

キャスティングでがうまくいっている。アラン・シャバやサッシャ・ブルド。