「自己を確立する」という近代プロセスの欠落

「この何もできない中途半端な時間はいらない」とアキバで無差別殺傷した25歳は携帯サイトに書き込みしてるのだが、自己確立迄には昨今とても時間がかかるのに対して、社会のフォローやリカバリーは高度情報化に反比例してあまりにもお粗末。

女性が自立するために必要なこと

女性が自立するために年収600万円が必要という、その目標が遠いと思うんですよ。(注 勝間さんは著書;勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド』で、精神的・経済的に女性が自立するための条件として年収600万円以上を挙げている)まわりのお母さんを見てると300万が限界かな、と。

西原理恵子×勝間和代『最強ワーキングマザー対談』
http://mainichi.jp/life/kaasanchi/news/2008/06/50.html

300万円、そうだねぇ。せいぜい2〜30代女性の月給は正社員であっても手取り20万届かずじまいが殆ど。そんな生活は、id:hizzz:20080520#p3のバランスシートをながめれば、、、溜息につぐ溜息、自立にはほど遠い。年収600万円は、特別技能職か一部上場企業大卒総合職*1に限られるだろうな。西原理恵子は生きていく手段として兎に角「手に職」を主張する。会社丸がかえのWカラー仕事は、結局会社都合で無効となるだろうしね。>終身雇用の幻想id:hizzz:20080507#p1
最近、個別にクローズアップされる保育料滞納問題、給食費滞納問題、近々では高校の入学金未納問題か。これが殆ど保護者の怠慢として報道されているのだが、果たしてそれだけなのか。例えば、保育料は保護者の前年度世帯収入を基本に算出されるので、当年度収入が減った世帯などでは苦しくなる。特に収入不安定で元々ギリギリの家計を営む世帯では、耐えられなくなることは容易に予想される。<公的保育所は減免可能であるが、住民税減免措置と同じく自己申請制なのでこの制度をそもそも知らない人が多い。*2
2年前から、保護者が働いてなくとも入園できる幼稚園と保育所を一体化した「認定こども園」なる制度ができたが、これまでの保育・幼稚園教育水準を低いケースで均し各都道府県実情に応じた予算運営を強いられる保護形骸化が進んでいる模様。
低学歴→不安定就労→失業→家庭崩壊という親の労働問題が子供の貧困連鎖を引き起こすことは最近語られるようになってはきたが、戦後の社会保障・福祉政策の家族モデルが「男性=主たる稼ぎ手、女性=被扶養者+ケア提供者」という強固な男性稼ぎ主型モデルなまま、経済の低迷と労働市場の流動化で矛盾が顕著になっていったにもかかわらず補助的労働力として女性はワーキングプアとして認知されることから排除されている。ワープアの女神と迄いわれるらしい雨宮処凛が語る例は、独身男性ばかりに偏っているしね。浅井春夫『子どもの貧困―子ども時代のしあわせ平等のために』では、その貧困ループの中に、虐待のハイリスク要因としての貧困を婦人保護施設・児童相談所/*3児童養護施設/少年院/生活保護支援からとりあげて、生活と子育ての困難が貧困に起因することでありその生活全体を支える「社会的コスト」をかける重要性を指摘している。

*1:総合職・一般職という日本独自の「コース別雇用」は男女賃金格差の原因であると、国連やILOが「男女同一価値労働同一賃金」を定めた第100号条約に鑑みて、法改正を含む努力を今年3月に要請。

*2:但し、昨今どこも財政難の折、自治体によっては「国民健康保険」「生活保護」レベル並に減免基準が引き上げられ、薄給でも収入があるとみなされて減免にならない模様

*3:母と子の保護がこの2つにわかれている縦割り行政ならではのブラックホールがある

制度的になきものとされていた貧困

「子供の貧困率は先進国ワースト10」と、先月『東洋経済』が親の貧困が子供に受け継がれている現状レポを載せるなど、ポツポツではあるが「低所得家庭」問題が取り上げられるようにはなってきた。低学歴無業=低所得者貧困問題であるハズの「ニート」が、男性高学歴無業=中高所得者問題として世間的概念になってしまう疑問を、myはてダではシツコクシツコ〜ク取り上げてきたのであるが、ようやっとその一億総中流幻想も剥がれてきたということだろうか。
ワタクシもうかつであったが、なにしろ政府には貧困の定義もなければ当然その調査もない。定義がないから調査のしようがない→データのないものは対策もないという、お約束な卓上お役人の考えか。国民生活基礎調査での「低所得」ならぬ「低消費水準世帯」推計というのがかってあったのだが、それは65年までで打ち切り。「もはや戦後ではない」は56年経済白書だが、「もはや貧困ではない」っつーことか*1。以降は、「所得再分配調査」や「家計調査」から、年次差分を各自個別に推計してみるっきゃない始末。
貧困をイデオロギー問題として捉えた日本の不幸 辻広雅文
http://diamond.jp/series/tsujihiro/10004/

*1:当面の生活保護水準改善の方途:一般国民の平均消費水準に比較して低所得階層の消費水準の上昇が大きく、消費水準の階層別格差縮小の傾向が見られる現状を前提として最低生活保障水準としての生活保護水準の改善を考える限りにおいては、一般国民の平均的消費水準の動向を追うのみではその目的を達し得ないものであって、低所得階層の消費水準とくに生活保護階層に隣接する全都市勤労者世帯第I・10分位階級の消費水準の動向に着目した改善を行なうことがとくに必要である。<昭和39年12月16日 社会福祉審議会生活保護専門分科会中間報告

貧困には縁遠い教育

世の中に貧困問題があるということは認識していても、結局子供のころから同類項でつるむ「半径ワンクリック」な同調性志向な共同体だけで完結してしまう暮らしをしていると、自分達以外のライフスタイルがたとえ目の前で展開されてたとしても、見えないし分らない。80年代以降、生活そのものが細かくセグメントされた中で営む棲み分けが進んだ故の社会俯瞰のなさなのだろう。
例えば、高校進学率97%超なのであるが、それは決して100%になることがないという事実。大学進学率が半数になり高卒と同等の就職機会しか得られていないワープア同士として、大卒と高卒の間の壁を大卒側がことさらに無視し単純化ようとする傾向が、Blogなどでも目につく。自分が使う学費が幾らか、自己学歴に幾ら掛ったかすら知らない、気にしたこともない人は社会派高学歴者の中にも多い。文科省試算では、幼稚園から大学迄、公立なら818万円、私立なら1563万円だそーだ。今一度id:hizzz:20080520#p3のバランスシートをながめて欲しい。これから上記の金を20年以内に絞り出せというのだよ、政府わ。国も家庭も教育に金をかけないなら、残るは自己負担なのか?少なくとも「高卒」が最低限必要な学歴と社会的にみなされてるのにも関わらず、修学資金・奨学金は貸付があるのみ*1。しかも、大半の高等教育は10〜20代の内に取得しとかないといけない教育機関の仕組みで失敗は許されない、ときたもんだ。
サラリーマン養成機関のようなものだった学校がダメになりつつあると、佐々木賢『教育と格差社会』は端的に指摘する。昨今のメディアのとりあげ方も「大学出たのに日雇い」=なれて当然だったホワイトカラー・サラリーマン職につけなかった非正規雇用ブルーカラーという男性高学歴ワープア=中高産階級出自に偏向しているが、実際の日雇い者の学歴は、中卒〜高卒が大部分なのであり(&「日系」枠を含む外国人労働者)、高学歴ワープアというのは元々は大学院重点化等の教育政策問題なんで>岡本薫『日本を滅ぼす教育論議 』その玉突きがおしよせる労働市場で割りを食うのは、実は大部分が低学歴なんだという現状が隠れている。また「日系」枠で入国した人々の一部は、実際問題として文化・言葉の壁と貧困と国籍の狭間で「教育制度」からも取り残されたままで成人する者が出てきている。>未就学問題 http://www.kikokusha-center.or.jp/resource/ronbun/kakuron/36/36.htm

経済的な理由で平成19年度に私立高校を中退した生徒が少なくとも全国で407人(調査対象生徒数比0・21%)に上ることが、全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)の調査で分かった。10年度の調査開始以来、最悪を記録した。
調査は、全国の私立高校の約5分の1にあたる28都道府県234校、約19万5000人を対象に行われた。経済的な理由による中退率は、過去最悪だった16年度の0・19%(279人)に比べ0・02ポイント上昇、1校当たりでも1・74人と過去最悪だった。全国私教連は「他の理由により中退している生徒の中にも、家庭の経済的な事情が背景となっている者が潜んでいる」と、実際はもっと多いとみている。

私立高校中退率 経済的理由過去最悪に 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/life/education/080611/edc0806110820004-n1.htm

そんな低学歴と低所得と不利の関係をごまかしてはいけない。>労働運動

*1:奨学金返済の延滞率高い大学、公表へ…日本学生支援機構:2007年度に奨学金の返済を延滞した卒業生の割合が20%以上の大学は7校を数え、中には30%を超える学校もあり、学校も奨学金の返還を学生に促す責任があると判断した。3か月以上の延滞金は99年度末の1009億円から、07年度末には2253億円と2倍以上に増加するなど、毎年度、過去最高を更新し続けている。06年度の延滞者に対する調査で、ほかの借金返済を延滞の理由とした延滞者が約25%に上った。>http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080611-OYT1T00055.htm

貧困の再発見

05年のユニセフの調査で子供の貧困率(公的扶助基準と所得分布の中央値50%未満)は14.3%で、経済協力開発機構OECD加盟25カ国中10位。ひとり親世帯の子供の貧困率は57.3%で2位。>http://www.oecd.org/dataoecd/48/9/34483698.pdf 大阪府調査では生活保護世帯の7割が「低学歴」で保護の世代間継承が4割にのぼるという有様。ここで日本が特異な兆候を示しているのは、母子世帯の8割が働いているのである(ひとり親世帯の貧困率:日本57.9%、OECD平均19.9%)*1。にもかかわらず、OECD平均では、税控除・社会保障給付を含む「再分配所得」で格差調整されて総世帯所得は無論子供の貧困割合も大きく下がるのであるが、日本は逆に上昇してしまうという体たらく。>http://www.rengo-soken.or.jp/dio/no197/siten.htm
と、いうことは、税金や社会支出が子供の為にも使われてないということを如実に示している。

最も貧困率が高いのは無配偶女性であるが、このグループでは15.54%から19.75%と、5人に一人の無配偶女性は貧困状況にある。無配偶者の貧困率の上昇は、このグループの市場所得が大幅に悪化したためで、税・社会保障制度はそれを若干食い止めているものの、追いついていいない状態である。無配偶男性と無配偶女性は、人口構成比も大幅に上昇しており、このグループの人々の貧困に対する政策が早急に望まれる。

阿部 彩「1980∼2000年代の日本の貧困率の推移と要因分析」
http://wwwsoc.nii.ac.jp/sssp/112taikai/F7-2Abe.pdf

※08/06/13追加
内閣府が55〜74歳の男女4000人を対象に今年1〜2月に実施した調査(回収率62.6%)によると、1人暮らし女性の51.0%が年収180万円未満で、1人暮らし男性の33.4%を大きく上回った。また、離婚して1人暮らしとなった女性の12.5%は年収60万円未満にとどまり、より厳しい状況にあることが分かった。一般的に、女性は子育てなどで男性より就業年数が短く、年金受給額も低い傾向にあることなどが背景にあるとみられている。

半数が年収180万円未満=中高年の1人暮らし女性−内閣府調査 時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2008061300856

(平成20年版・男女共同参画)白書によると、管理職で女性が占める割合は係長クラスで12・5%、課長相当で6・5%、部長相当で4・1%となっている。民間事業所を通じた給与調査によれば、年収300万円以下の割合は男性21・6%に対し、女性は66・6%と半数を超えた。
15歳以上の就業者を対象にした労働力調査では、非正規雇用の割合が女性は53・4%に上っており、男性(18・2%)に比べ、女性が不安定な雇用状況にあることが、そのまま賃金水準にはね返っているとみられる。全国の事業所を対象にした1時間あたりの賃金水準調査でも、男性の一般労働者を100とした場合、女性は一般労働者は68・1にとどまった。

雇用環境の格差くっきり 「男女共同参画白書産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080613/plc0806130934005-n1.htm

財務省は4日、2008年1〜3月期の法人企業統計調査の結果を発表。経常利益は13兆7,548億円で前年同期比17.5%のマイナス。人件費は44兆3,287億円で前年同期と比べて1.3%増加した。このうち従業員(パート・臨時社員含む)の給与は前年同期比11.1%減の30兆781億円。役員給与は0.5%増の4兆3,880億円だった。従業員数は前年同期と比べ1万1,244人増えているが役員の数は314人減少。

従業員給与、前年同期比11.1%減少 財務省法人企業統計調査
http://www.mof.go.jp/ssc/h20.1-3.pdf

てなことで、年収200万円に満たない貧困層の増大の中身は、全体所得悪化の中でも温存された男女格差の玉突きのハテに位置する無配偶女性=独身女性の所得悪化の増大に起因する。
貧困対策より先に税・社会保障制度保全が先走り、後期高齢者医療制度ではビンボー老人は規定範囲医療でガマンして死んでけだし、一人前になるまで手がかかりすぎる文句たらたらな怠慢な連中なんかほかして、ガッツある働き盛りな移民1000万人「直輸入」して税金稼いでもらいますわと、、、なんだかまったく違う方向へ政府はいこうとしている。

政府の経済財政諮問会議で、福田総理は社会保障費の伸びを「毎年2200億円づつ圧縮する」と定めた歳出削減の方針を堅持する考えを明らかにしました。
 経済財政諮問会議の後会見した大田経済財政担当大臣によりますと、福田総理は「社会保障も聖域ではない。これまでの制度の非効率を徹底して削減する」と述べ、社会保障費の伸びを毎年2200億円づつ圧縮するとした骨太の方針2006を堅持する考えを明らかにしました。

『首相、社会保障費削減を堅持する考え』 毎日放送
http://www.mbs.jp/news/jnn_3873353_zen.shtml

※08/06/13追加
福田康夫首相は12日夜、社会保障費の伸びを毎年2200億円ずつ抑制する政府方針について、09年度予算でも堅持する方針を明らかにした。政府は、雇用保険に投入している国庫負担(08年度1600億円)の大幅な削減を軸に、2200億円のノルマを達成する方向で調整する。

福田首相社会保障費抑制「堅持」』 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080613k0000m010141000c.html

*1:児童扶養手当の08年度減額措置では、需給資格者やその子供等の障害・疾病等により就業が困難な事情がないにもかかわらず、就業意欲がみられない者については、支給額の1/2に減額。親の就業状況が子供の権利を阻害するという本末転倒な措置

追補:自立とホームレス

いよいよ日雇い派遣は禁止になりそうだが、そうなったとしてもそこに従事してた労働者が全員派遣先へ正社員や直接雇用(バイト)にスライド出来得る訳ではない。アキバ無差別殺人犯25歳の業種先でみても、例え前年度高収益を上げていたとてエネルギー問題も含んだ世界的産業構造転換の渦中にある自動車産業自体は斜陽にむかう業種。現に国内自動車登録保有台数が前年度割れをしてるし、本年度の収益見込みを各社軒並み下方修正している。25歳の職場でもそれを受けての派遣リストラの最中だったのである。法的に派遣禁止となれば、尚更それが促進されるだけであろう。業務は海外シフトに振り分けられる分と、派遣の上澄みの精鋭を直接雇用しあとは「外国人研修生及び技能実習生」に転換されるだけであろう。*1
では住み込み期間工で、職も住居も同時に喪失し預貯金はおろか失業補償なんかも当然ないといった、そこからはじきだされた人々はどうなるのか。残るは、昔ながらの寄せ場か野宿。
政府の「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」では、就労する意欲はあるが仕事がなく失業状態にある者/医療、福祉等の援護が必要な者/社会生活を拒否する者(社会的束縛を嫌う者、身元を明らかにしない者等)の3タイプにホームレスを分類する。
野宿者(ホームレス)研究をしている丸山里美に依れば、この3タイプの内、社会生活拒否者は、見捨てられるか、取り締まられるという*2。家族親類縁者は霧散し、労働市場からは対象外、寄らしむべし知らしむべしな公的福祉からもとりのこされ、社会的孤立が極まった老人や軽度障害者などの中には、皮肉なことに刑務所が最後の保護場所となっているケースもおこっている*3山本譲司累犯障害者http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10022205582.html
「自律/自立」を大前提にしてきた社会・世間ではあるからこそ、誰の世話にもならずになんとか「自立」しようとして野宿者となって生活を営もうとサバイバルすると、「勝手に生活をしてはならん」という始末。どうせいっちうねん。。。
特に男性へは「自立圧力」が高いからこそ野宿選択されるというが、そんな男性にひきずられる形などをとって女性野宿者は居ないわけではない。しかしその声は、ホームレス男性の声や「排除のイデオロギーに対抗」する主体を見たいと欲する研究者によって、その実態がかき消されていると丸山は指摘する。
まーそれはなにも、野宿者にかぎったハナシではないのだけどね。例のワープアを問題視する中で「特に男は低収入では結婚も出来ない」という理由が一番まかり通っているが、「金がなければ結婚できない」「男こそ家族を養わなければならない」という理屈、「男性=主たる稼ぎ手、女性=被扶養者+ケア提供者」まんま。何度か歴史でほじくって書いたが、主体=男性を立てる為に、女性を分断操作しまくるという手法は今もそこかしらで営々と。。。

デイペッシュ・チャクラバルティはサバルタンの歴史を指して、『必然的に断片化されていて挿話風である』(Chakrabarty1995=1996:100)と述べているが、女性野宿者たちの実践も、長期的な視野にたった一貫性をもたない、断片的でしかないようなものとしてあらわれていた。つまり、野宿者の<共同性>が存在し続けることを前提に野宿を続けていきたいと語るHAさん、女性である自分が生活保護を受給できると思わなかったが、日々生起していく<共同性>のなかで野宿を脱することになったKSさん、『いつも男の人に頼』った結果、野宿生活と野宿からの脱出とを繰り返すTNさんの実践は、限られた資源や暴力という制約のなかにおかれ、伝統的に女性に期待されてきた役割に添って行為を遂行しているために、一貫性や主体性のなさと見えるようなものとしてあらわれている。こうした断片的でしかないような生のあり方は、野宿者であり女性であるということで、二重に周縁的な場においやられている女性野宿者たちの置かれている状況をよく示すものである。しかしこれは、女性野宿者に本来的に固有なものでも、女性野宿者だけに見られるようなものでもない。むしろ、主体性や合理性の残余としてあるネガティブなものが伝統的に女性におしつけられてきたことの結果として、女性に顕著に見られるようなことがらとしてあらわれているのだろう。

丸山里美「野宿者の抵抗と主体性―女性野宿者の日常的実践から」『社会学評論』
http://www.minpaku.ac.jp/research/jr/04jr070_060217maruyama.pdf

この後丸山は「自律した主体であることを欲望する知のあり方を問いなおす手がかりとなるのではないだろうか。」というのだが、「知の問題」といった学術的なこと*4とは別にして、「自律した主体」の在り方とは、アイデンティティ問題と自立といったモダニティの構造変容になるんだろうな。そしてそれに国家・社会制度がまったく追いついていないで崩壊していることは、確か。

*1:外国人実習生:10年で8倍、過去最多の5万3999人>http://www.moj.go.jp/PRESS/080601-1.pdf

*2:西成署警察官の暴行に抗議する!釜パト活動日誌 http://kamapat.seesaa.net/article/100520737.html

*3:高齢者犯罪の今 http://www.kobe-np.co.jp/rensai/200612kourei/tokushu.html
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/yw/yw08030901.htm

*4:近代的主体の未成立=日本的近代の特殊性の問題を、西欧近代化の遅れが今日の近代化最先端をもたらしたといわんがばかりのポストモダン立ち位置論とか…