石綿被害「反省点多い」 官房長官、国の態勢不備認める

 細田官房長官は21日午前の記者会見で、アスベスト石綿)による健康被害の拡大に関連し、「これまでの態勢は反省すべき点が多い。関係省庁は多くにまたがっており、協議して遺漏のないようにしたい」と述べた。旧労働省が76年の通達で周辺住民への危険性を指摘したのに国が対策をとらなかった点で、政府の態勢に不備があったとの認識を示したものだ。

 細田長官はまた、政府の対応の遅れについて「今となってみれば、いろいろな被害者がたくさん出ているので、もっときちっと対応できればよかったとは思う。早急に対応をとらなければならない」とも語った。

 政府は同日午後、厚生労働省経済産業省など関係省庁による対策会議を課長級から局長級に格上げして開催する。

 これに関連し、小泉首相は同日昼、記者団に「過去の問題も踏まえて関係省庁がしっかり連携しながら対応していかなければならない」と語った。

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肺がんの建設労働者、7割が石綿被害の症状 NPO調査
2005年07月23日23時43分 asahi.com

肺がんの建設労働者、7割が石綿被害の症状 NPO調査

 大工や配管工など建設労働者の肺がん患者の約7割に、アスベスト石綿)を吸ったとみられる症状が出ていることが23日、NPO法人「職業性疾患・疫学リサーチセンター」(東京都港区)の海老原勇医師の調査で分かった。東京土建一般労働組合など建設業関連の労組が開いた記者会見で、明らかにした。

 調査は、海老原医師が過去5年間にわたって、肺がんになった建設労働者110人をレントゲン検査やコンピューター断層撮影(CT)などで診断。その結果、67.2%にあたる74人について、石綿を吸うと特徴的に出る「胸膜肥厚斑」の症状や石綿肺が確認された。

 ほかに、何らかの労災で死亡した疑いがある建設労働者43人(平均年齢60.7歳)を解剖したところ、36人(83.7%)に胸膜肥厚斑を確認。また、うち31人はレントゲン検査では異状が分からず、解剖で初めて胸膜肥厚斑が見つかった。

 海老原医師は「石綿被害は呼吸器専門の医師でも見過ごしてしまうことがある。とくに肺がんは喫煙が原因と診断され、多くの石綿被害が埋もれていた可能性がある」と指摘している。

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与党合同で対策チーム 労災認定や住民の救済策など検討
2005年07月25日22時18分 asahi.com

与党合同で対策チーム 労災認定や住民の救済策など検討

 アスベスト石綿)の健康被害が広がっている問題で、自民、公明両党の与党政策責任者は25日、関係する厚生労働、環境、経済産業などの各部会関係者からなる「与党アスベスト対策プロジェクトチーム」を発足させることを決めた。労災認定のあり方や周辺住民の救済問題などについて、新たな議員立法の必要性の有無も含めて議論するという。

 一方、公明党アスベスト対策本部長の井上義久政調会長が同日、細田官房長官を訪れ、小泉首相を本部長とする「アスベスト対策本部」の設置や、健康被害の発生状況の徹底した調査など10項目の要望を申し入れた。細田氏は「政府としても高いレベルの対策会議をしっかり立ち上げてやりたい」と答え、政治主導で問題の解決に取り組む姿勢を示した


石綿使用の公共施設、対策不明50カ所 「書類なし」も
2005年07月25日06時02分 asahi.com

石綿使用の公共施設、対策不明50カ所 「書類なし」も

 アスベスト石綿)の使用が過去の調査で確認された全国の1700余の公共施設のうち、どのような対策が取られたのか分からない施設が兵庫、佐賀、沖縄の3県で計約50施設あり、「当面危険がない」として放置してきたのも全国で約60施設に上ることが、47都道府県と14政令指定市を対象にした朝日新聞の調査でわかった。当時の調査書類の所在がわからず公共施設での使用実態が把握できていない自治体も11県2市あった。

 再調査を検討または決定、既に行っているのは52の自治体に上り、改めて実態を把握しようとする動きも全国に広がっている。

 各自治体の環境や営繕分野の担当者から、それぞれが管理する庁舎、集会施設、図書館などの公共施設について聞いた。87年に文部省(当時)が一斉調査した学校は含まれていない。

 その結果、少なくとも25道府県11市の計1743施設でアスベストが使われていた。東京都は使用面積が約23万平方メートルとしているが、施設数は集約していない。

 このうち、兵庫県は87年ごろ、公共施設でのアスベストの使用状況を調査し、66施設での使用が判明した。表面がはがれ落ちやすくなっているなど早急な対応が必要と判断された約半数については対策が取られたが、残りは対策が取られたかどうか確認できていないという。

 佐賀県では91年の調査で、112施設での使用が判明。うち約20施設は対策の計画が立てられたかどうかも分からず、現状は不明という。沖縄県は88年に調査し、5施設で使用を確認。うち水産試験場と家畜衛生試験場の2カ所はどのような対策を取ったかの記録がないという。

 宮城、静岡、愛知の3県と仙台、千葉、静岡、神戸の4市は、計約60施設について、危険がないとの判断から放置していた。ほとんどが機械室やボイラー室などで「人があまり利用しない」(愛知県大気環境課)との理由が目立つ。

 ただ、ここにきて改善を図る動きもある。仙台市では最近になって機械室だった部屋が清掃員の控室に使われていることが分かり、物置に変える準備が進んでいる。

 一方、青森、福岡など11県と広島、福岡両市は調査書類がないため、実態が分からないとしている。ほとんどは、職員の記憶などから87年ごろに調査があったとしているが、書類がないため調査対象施設、アスベストの使用が判明した施設、どのような対策が取られたのかなどがわからないという。「当時は重大性の認識がなく廃棄した可能性が高いが、永久保存しておくべきだった」(福岡市技術計画課)との声も出ている。

 国土交通省建築指導課は「管理責任のある施設については自治体の責任で実態を把握してほしい」としている。

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< アスベスト被害 >
石綿被害、政府の対応検証へ 補償・支援も検討
2005年07月21日21時19分 asahi.com

石綿被害、政府の対応検証へ 補償・支援も検討

 細田官房長官は21日の記者会見で、アスベスト石綿)の健康被害の拡大に関連し、これまでの政府の対応を検証して、7月中に公表する考えを明らかにした。行政側の責任の所在を明確にする狙い。被害者に対する補償や支援が可能かどうかも検討する方針だ。

 細田長官は「過去の(政府の)規制の対応、実態として(石綿が)どう使われてきたかも含めてまとめたい」と、行政の対応を検証する考えを表明。そのうえで、政府の対応が「(被害の)原因であるのかないのかも含め、きちっと分析し、対応したい」と、被害拡大との因果関係を分析する考えを示した。

 「責任の所在を明確にするのか」との質問に対し、細田長官は「そういうことだ」と言明。行政の責任が確認された場合は、被害者個人への補償や支援についても「当然、検討の対象には含まれると思っている」と語った。

 この問題では、周辺住民らへの影響の可能性を旧労働省が76年に通達しており、実態を把握しながら政府の対応が遅れたとの批判が出ている。これについて西博義厚労副大臣は20日の衆院厚労委員会で「決定的な失敗だったのではないか」と答弁。一方、厚労省の戸苅利和事務次官が21日の会見で「失敗ということではないんじゃないか」と指摘するなど、政府部内で認識に食い違いが出ている。細田長官は「それぞれの思いで発言しているところがあり、きちっと統一する」と語った。

 ただ、戸苅次官は通達が出た当時の状況について「どこまで関係機関に徹底していたのか、もう少し事実関係を把握する必要がある」とも述べ、政府の対応の検証に取り組む姿勢も強調した。

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石綿の梁むき出し40年 JR新大阪駅、シートで覆う
2005年07月26日20時20分 asahi.com

石綿の梁むき出し40年 JR新大阪駅、シートで覆う

 JR新大阪駅大阪市淀川区)の天井の鉄骨梁(はり)に毒性の強いアスベストの青石綿が使われ、同駅が開業した64年以降、約40年間むき出しになっていたことがわかった。JR西日本は今年2月以降、天井をシートで覆う措置をとっていたが、早急に除去などの対策を講じるという。

 同社によると、むき出しになっていたのは、3階中央コンコースの中央切符売り場や中央待合室、中央入り口などの天井の梁で、耐火性を高めるため吹き付けたという。青石綿は毒性が強く、95年に使用禁止になったが、同社は今年2月にようやく天井の大部分をシートで覆った。その後も蛍光灯の周囲など一部はむき出しで残っていたが、25日夜に覆った。

 同社は92年から毎年、大気中の石綿繊維の濃度を測定しているが、1リットルあたり最大でも2本で、大気汚染防止法に基づく排出基準値(石綿を扱う工場の敷地境界で1リットル中10本以内)を下回っているという。

 一方、同じ3階の改札内の新幹線コンコースでも梁に青石綿が使われているが、管理するJR東海は「天井板で覆っており、問題はない」としている。

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< アスベスト被害 >
石綿建材、規制外の在庫品売却 厚労省、禁止決定
2005年07月26日08時46分 asahi.com

石綿建材、規制外の在庫品売却 厚労省、禁止決定

 がんなどを引き起こすアスベスト石綿)を含んだ製品の製造や売却などが禁止された昨年10月以降も、建材メーカーが規制対象外の在庫品を販売し続け、45万枚あったスレート板などの大半を売り切っていたことが25日、分かった。厚生労働省は同日、業界に対し行政指導で即刻売却を禁止にする方針を決めた。

 石綿を使った建材などは、労働安全衛生法施行令の改正で、昨年10月から新たに製造し販売することを禁止した。輸入や使用も禁じた。

 しかし在庫品は対象外だったため、厚労省は1年前から、業界団体に対し施行日までに在庫をなくすよう文書で要請していた。施行後も在庫売却が続いたため、今年6月、在庫の販売を補修用に限定し、来年3月で終了するよう改めて文書で要請した。

 石綿建材を製造していた大手「エーアンドエーマテリアル」(横浜市)など21社が加盟する「せんい強化セメント板協会」(東京)の在庫調査では、施行直前の昨年9月末でスレートやボードの在庫が14社で約44万6000枚あった。しかし今年6月には約3万枚になったという。

 同協会は「昨年の台風でスレートの注文が相次ぎ、在庫が大量に売れたため」と説明している。

 厚労省化学物質対策課は、石綿被害が問題になったため、在庫販売を即刻やめるよう業界団体に行政指導することを決めた。月内に政府がまとめる石綿対策に盛り込み、業界に通知する。

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