冬戀

《冬戀》謝賢、蕭芳芳、王愛明、龍剛 
楚原:監督 1968年 粤語 モノクロ 無字幕 謝氏兄弟


1967年のクリスマスイブ、華やかなクリスマス飾りが映し出されていく。カメラはあるカフェの入り口を写すとそこに少し背をまるめた男の後ろ姿が現れる。男はためらい勝ちにカフェに入っていく。冬にも関わらず、コートも着ずマフラーもせず、くたびれた背広と端のほつれたシャツを着た男(謝賢)が現れると、給仕は「久しぶりですね」と声をかける。男は珈琲を注文し、4年前に思いを馳せる。
4年前の同じクリスマスイブ、小説家の男・其はカフェのテーブルでクリスマスカードを書き、給仕にある場所に届けて欲しいと頼む。そこに1人の女性(蕭芳芳)がコートも着ず飛び込んでくる。その後男は書き物をして、気がつくと午前3時すぎ。外へ出てタクシーを拾うとカフェにいた女性が追いかけて来て、車で送って欲しいと頼む。男は不審に思いながらも女を何文田まで送り届けるが、女はタクシーに口紅を忘れていった。
しばらくして男は再び女性に巡り会った。女性・[ロ米][ロ米]は先日送ってもらった礼がしたいといい男を自宅にさそった。女は裕福な家庭の娘だった。この日から2人は連れ立って、郊外に遊んだりして惹かれあっていった。
そしてある日其は、誘われてパーティーに出かけた。そこで見たのはくだんの女性だった。彼女は良家の子女などではなく、舞女(クラブの女性)だった・・・。


謝賢と彼の恩人と蕭芳芳の数奇な運命。蕭芳芳を襲う悲劇の数々、謝賢と蕭芳芳の悲恋、さらに謝賢の絶望感、全編これでもかと悲しい出来事が起こって行く。蕭芳芳が大きな瞳をウルウルさせながら自らの悲劇を語って行く。誰もが豊かさから貧困へ、幸福から不幸へと押し流されあらがえない。映画導入部分が上手いのは楚原映画の特徴で、この映画でも印象的。タイトルの《冬戀》は主役の小説家が、自らが出会った女性・[ロ米][ロ米]との恋愛を描いた小説のタイトルでもある。


劇中、パーティーの場面には、ツィギー風の髪型やファションの女性が登場して60年代の風俗がかいま見れる。主人公たちが出会うカフェになぜか日本の提灯が掛かっている(どこか実際の店でロケしたのだろうか?)。映画のほとんどはセットで撮影されているが、少しだけロケがあり、郊外(釣りをしたり、馬に乗ったり)、フェリー乗り場、サッカー場(?)などが映る。
2008.8.16@香港電影資料館「活色摩登 ─ 六十年代聲色」


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